経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑

会計人材のキャリア名鑑

スタートアップ企業の経理部マネージャー

「急速に成長する企業の経理運営を行う現場マネージャー」

財務の健全性を確保し、成長に向けた戦略的な経理運営を行う

経営陣と現場をつなぐ経理のキーパーソン

主な業務内容

  • 経理チームのマネジメントと業務最適化
  • 月次・四半期・年次決算の統括
  • 経営陣への財務分析と戦略的提言
  • 資金調達・税務戦略の立案と実行
  • 経理システムの選定と導入推進

想定年収

600万円~900万円
※業績や評価によって変動

想定年齢

28歳~35歳

スタートアップ企業の経理部マネージャーは こんな仕事

スタートアップ企業の経理部マネージャーは、会計処理を超えた高度な役割を担います。財務の健全性を確保し、成長に向けた戦略的な財務運営を行う上で欠かせない存在です。スタートアップの環境では、規模拡大やビジネスモデルの変化が日常的に起こるため、経理業務は動きの速いダイナミックなものになります。

例えば、資金調達が主要な業務となるケースも珍しくありません。投資家との交渉や財務諸表の精緻化は事業の成功につながる重要な要素です。また、資金繰りやキャッシュフロー管理においては、企業の存続を確保する使命があります。このような業務が一つひとつ成功するたびに、経営陣や全社員の期待に応えるという達成感を得ることができます。

加えて、スタートアップでは経理部が会社の基盤そのものを形作る役割を果たすことが少なくありません。経営者との距離が近いため、戦略にも深く関わることができる点は大きな魅力です。数値データを分析して意思決定をサポートし、時にはリスク管理やビジネスプロセスの効率化を提案するなど、会社全体にインパクトを与える仕事です。

スタートアップの経理部マネージャーというポジションには、柔軟性や高度な問題解決能力が求められる一方、この役割をこなしていく中で培う経験は、将来のキャリアでも大きな財産となります。経営と密接に関わり、日本だけでなくグローバル展開を視野に入れる企業もあり、多様な挑戦を楽しむことができるポジションです。

自らの力で企業を躍進させていく楽しさを味わうとともに、財務のプロフェッショナルとして成長することができる、ワクワク感と責任が交錯する環境と言えるでしょう。

スタートアップ企業の経理部マネージャーという ポジションの魅力

スタートアップ企業の経理部マネージャーは、業務の幅広さとダイナミックな環境の中で自己成長を実現できる職種です。特に資金調達をはじめ、経営者との近さが特徴で、経営陣と直接コミュニケーションを取りながら企業の成長を支えるやりがいがあります。

通常の経理業務に加え、スタートアップの環境では企業の戦略に深く食い込む機会が多く存在します。例えば、新規市場への参入、製品開発に伴う予算編成、さらにグローバル展開が視野に入る場合の財務整備などでは、高度な経済的判断が求められます。これらを通じて、経理業務が経営戦略や事業成長を直に支えることを体感できるのは、非常に刺激的です。

また、スタートアップ特有のスピード感と変化への対応能力を鍛えることができる点も、経理部マネージャーの魅力です。大手企業に比べ組織がコンパクトだからこそ、意思決定も迅速となり、財務面だけではなく会社全体の運営に関わる機会も多いです。例えば、新たなビジネスモデルの実現や目指すべきミッションを達成するため、マネージャーが他部門と連携して解決策を模索する場面も日常的に発生します。

さらに、業務を遂行する中で得られるスキルは汎用性が高く、今後のキャリア展望においても有利です。例えば500万円〜1000万円規模の資金調達をサポートする経験や、財務管理の高度化が求められる場面に対応することで、次世代のCFOや経営幹部を目指す道が開けてきます。このポジションは、経営視点を持つ財務のプロとして突き抜けたスキルを身につける絶好の場と言えるでしょう。

スタートアップ企業の経理部マネージャーの 年間スケジュール例

スタートアップ企業の経理部マネージャーの年間スケジュールは、3月決算の会社を前提に、資金調達フェーズにあるスタートアップ企業を想定しています。経理部マネージャーは数字の処理に加えて、経営判断に関わる財務情報の提供や、成長に合わせた経理体制の構築まで幅広い業務をこなします。

4月

  • 新年度財務戦略の経営会議での発表
  • 経理チームの年間目標設定と個人KPI設定面談
  • 前期決算の最終チェックと監査法人対応の統括
  • 資金調達計画の策定と投資家候補リストアップ

5月

  • 株主総会準備の統括(招集通知作成、議事録案の準備)
  • 法人税・消費税申告書の最終レビューと確定申告
  • 年次有価証券報告書の作成統括(上場準備企業の場合)
  • 経理システム改善プロジェクトのキックオフ

6月

  • 第1四半期の中間集計と経営陣への速報値報告
  • VC(ベンチャーキャピタル)向けピッチ資料の財務部分作成
  • 内部統制評価とプロセス改善の計画策定
  • 社会保険算定基礎届の確認と提出

7月

  • 第1四半期決算の締めと分析レポート作成
  • 資金調達に向けたデューデリジェンス準備
  • 賞与計算と支給に関わる税務処理の統括
  • 経理チーム中間評価と1on1ミーティング

8月

  • 投資家向け四半期報告会の実施
  • 資金繰り予測モデルの更新と下期計画見直し
  • 経費精算システムの導入プロジェクト推進
  • 経理スタッフの採用面接と選考

9月

  • 上半期業績の予測と経営陣への報告
  • 予算実績差異分析と下期対策の立案
  • 税理士・会計士との年末調整準備ミーティング
  • 海外子会社設立に伴う会計処理方針の検討

10月

  • 第2四半期決算の締めと経営会議での報告
  • シリーズA資金調達の最終交渉と契約書レビュー
  • 来期予算策定プロセスの設計と各部門へのガイドライン提示
  • 法人税中間申告書の確認と納付手続き

11月

  • 資金調達クロージング後の資金管理計画策定
  • 各部門予算ヒアリングの実施と調整
  • 年末調整業務の統括と最適化
  • 固定資産管理体制の見直しと棚卸計画

12月

  • 年末の資金繰り確保と年越し準備
  • 来期予算案の経営会議への提出と承認取得
  • 年末調整の最終確認と給与計算

1月

  • 第3四半期決算の締めと分析報告
  • 確定申告に向けた準備開始と税務戦略の検討
  • 新経理システムの本格運用開始
  • 経理チームの業務分担見直しと効率化計画

2月

  • 期末決算に向けた事前準備と各種引当金の計算方針決定
  • 来期の経理部門の組織体制と採用計画の策定
  • IPO準備の検討開始(該当する場合)
  • 投資家向け事業計画の財務部分作成

3月

  • 年度末決算に向けた最終調整と締め作業の指揮
  • 実地棚卸の立会いと在庫評価の最終確認
  • 新年度の経理部門目標と重点施策の策定
  • 経理チームの年間評価と昇給・昇格案の検討

定例業務

  • 日次:キャッシュポジション確認、経営陣への重要事項報告
  • 週次:経理チームミーティング主催、資金繰り表の更新
  • 月次:月次決算の統括、経営会議用財務資料の作成と報告
  • 四半期:四半期決算の統括、取締役会・投資家向け報告資料作成

臨時に発生する業務

  • 資金調達ラウンドに伴うデューデリジェンス対応
  • M&A検討時の財務DD実施と統合計画策定
  • 新規事業立ち上げに伴う財務モデル構築
  • 海外展開に伴う経理体制の国際化対応
  • 税務調査対応
  • 経理システムの刷新プロジェクト
  • 組織再編に伴う会計・税務スキーム検討
  • 監査法人の選定と監査契約の交渉

スタートアップ企業の経理部マネージャーの 重要任務

スタートアップ企業の経理部マネージャーには、組織の成長を支えるピラー(柱)的な役割があります。特に以下の3つの任務は、この職種を担う上で極めて重要です。

1.資金管理と資金繰りの調整

資金管理は会社のライフラインであり、特にスタートアップでは資金の流れを正確かつ効率的に管理する重要性が高いです。マネージャーは、キャッシュフローを常に把握し、資金の適切な分配を行い資金不足のリスクを回避する責務があります。例えば、資金調達のタイミングに応じた短期融資の手配や、コスト削減プランの立案などを通じて、企業の財務健全性を保ちます。

2.財務諸表の作成・分析

スタートアップでは精度の高い財務諸表の作成が不可欠です。それにより、企業の健全性を投資家や取引先に可視化するとともに、資金調達の成功にも繋がります。また、分析結果を経営陣に提供し、事業戦略に役立てることも重要な役割です。例えば、売上予測とコスト分析を基にした意思決定のサポートなどが挙げられます。

3.法令遵守および監査対応

法令遵守は経理業務の要であり、監査対応も頻繁に発生します。特にIPOを目指すスタートアップでは、監査法人や出資者への定期報告が求められます。この過程での適正な会計処理と信頼性確保に加え、プロセス改善を常に検討することで企業の成長に寄与します。

これらの3つは会社の生命線に関わる業務であると同時に、本人のキャリアアップにも大きく影響します。高い責任感と専門知識を発揮し、会社の未来を具体的に形作るこの役割は、挑戦意欲をかき立てるポジションと言えるでしょう。

スタートアップ企業の経理部マネージャーの 報酬水準

経理部マネージャーはスタートアップ企業において、中核的な役割を担うポジションですが、報酬は企業の規模や資金調達状況に大きく影響されます。以下では、スタートアップに特有の報酬水準や構成要素について具体的に解説します。

報酬水準の概要

スタートアップ企業の経理部マネージャーの年収は、一般的に600万円〜900万円程度とされています。しかし、これは企業の成長段階や資金調達状況、業界の特性によって変動します。初期段階のスタートアップでは報酬が抑えられることもありますが、シリーズAやシリーズB以降の資金調達を経て、業界のトッププレーヤーとして急成長を遂げている企業では、その報酬額が大幅に上昇するケースも少なくありません。

また、裁量権や責任の重さが大きいため、年収だけでなくストックオプションが付与される場合もあります。これは、従業員が企業の成長に直接的な利益を享受する仕組みであり、IPO時に大きなリターンをもたらす可能性があります。

報酬の構成要素

報酬は以下のような要素で構成されています。

  • 基本給与:企業規模や資金調達状況によりますが、600万円〜900万円の範囲が基本的な年収となることが一般的です。
  • 業績連動型ボーナス:個人の成果や会社全体の成績に応じて変動する報酬であり、成長フェーズが加速している企業では年収構成の重要な部分になります。
  • ストックオプション:スタートアップ企業特有の報酬体系で、特にIPOを目指している場合には、将来的な報酬額が大きく膨らむ可能性があります。
  • 退職金や福利厚生:一般的な企業に比べると簡素なケースが多いですが、かなり柔軟な制度を採用している企業も少しずつ増えてきています。

報酬の変動要因

スタートアップ企業の経理部マネージャーの報酬水準を左右する主な要因は以下の通りです。

  • 企業の資金調達状況:資金調達の段階が進むにつれ、社員へ還元する報酬額も増加する傾向があります。シリーズBやシリーズCクラスの企業では予算がより豊富であるため、マネージャー職の年収も相応に上昇します。
  • 業界:業界による差も顕著です。特にフィンテックやヘルステック、AI領域など、高単価の事業を展開するスタートアップは、報酬水準が比較的高い傾向にあります。
  • 個人のスキル・経験:経理職としての専門知識や経験年数が報酬額に与える影響は大きいです。IPO経験がある場合や多国籍企業での財務マネジメント経験者には、さらに高額な報酬が提示されることもあります。

報酬のトレンド

スタートアップ業界全体では、報酬の透明性や柔軟性が求められる流れになりつつあります。従業員のモチベーションを高めるために、基本給与だけでなく、ストックオプション制度や業績連動型ボーナスの導入が進んでいます。また、福利厚生においても社員の満足度を高める施策が広がり、多様性のある働き方への対応がなされている企業も増加傾向にあります。

経理部マネージャーとして成長フェーズのスタートアップに参画することで、変動報酬の一環であるストックオプションを活用し、多大なキャリアリターンを実現する可能性が広がります。大胆にチャレンジする心構えで、将来的な報酬と経験を追求できるポジションです。

スタートアップ企業の経理部マネージャーに 向いている人は、どんな人?

スタートアップ企業の経理部マネージャーは、スピード感あふれる環境で主体的に動く能力が求められる職種です。以下では「求められるマインド」と「必要なスキル」に分けて、このポジションに向いている人材の特性を詳しく解説します。

■求められるマインド

1.柔軟性

スタートアップは変化が激しい環境です。財務状況や経営方針も頻繁に更新されるため、環境に柔軟に適応し、状況に応じた対応ができるマインドが必要です。例えば、資金調達が急遽必要になった時に冷静に対応できる適応力が求められます。

2.挑戦意欲

新しいビジネスモデルや財務管理方法に挑む意欲が強い人材はスタートアップで成功しやすいです。たとえば、新規の資金調達スキームや最新の経理ツールを導入する際に、積極的に行動できる姿勢が不可欠です。

3.責任感

会社の財務を司るポジションであるため、責任感の強い人材が求められます。法令遵守や正確な財務データの管理において、一つひとつの判断が会社の信頼を左右することを認識する必要があります。

4.コミュニケーション力

経営陣や他部門との連携が非常に重要です。経理部という専門職から会社の全体戦略や他部門のニーズを把握し、適切な調整を行う能力は欠かせません。

5.長期視点

スタートアップは即効性が重要ですが、それと同時に長期的な財務戦略を見据える視点も必要です。将来の成長を見越した資本構成や財務計画を策定できる人材が活躍します。

 

■必要なスキル

1.財務管理スキル

キャッシュフロー管理や資金調達計画を立てるための実践的な知識が必要です。スタートアップでは短期資金運用の巧妙さが企業の存続に直結します。

2.会計知識

日々の経理業務からIPO準備まで、幅広い会計知識が求められます。例えば、多額の資金調達が行われた際に、その会計処理が適切に行える技術力を持つ必要があります。

3.法律の理解

税務対応や監査対応には会社法や税法の基礎的理解が欠かせません。監査法人や税理士と連携する際に、法的観点からの指摘に適切に対応できるスキルが必要です。

4.データ分析力

スタートアップの財務管理には、予測指標や経営戦略とリンクしたデータ分析が欠かせません。例えば、売上予測やコスト削減効果を数値化することで、経営陣の意思決定を支援します。

5.プロジェクトマネジメント能力

経理部門の効率化やプロセス改善プロジェクトを推進するスキルが必要です。このスキルがあることで、財務業務全体を最適化し、会社成長への貢献度を高められます。

スタートアップ企業の経理部マネージャーには、高度な専門スキルと柔軟な判断力、そして挑戦を楽しめるマインドが必要です。そのスキルと心構えを備えた人物は、変化の激しい環境で輝き、企業を成長に導く重要な存在となるでしょう。

スタートアップ企業の経理部マネージャーまでの 道のり

スタートアップ企業の経理部マネージャーになるためには、段階的なキャリアステップを踏むことが鍵となります。ここでは、逆順かつ複線的にたどり着ける道のりを示します。

経理部マネージャーの直前のポジション

まず、スタートアップ企業の経理部マネージャーの直前には以下の役職が考えられます。

  • 経理主任または経理チームリーダー:チームの運営・管理経験を積み、報告書作成や財務分析を担う役割。
  • 財務担当者:特に資金調達経験がキャリアの鍵となります。
  • 監査法人やコンサルティング会社の経験者:企業の会計業務全般を監査した経験が転職に有利になります。

そのさらに手前に想定されるポジション

以下のようなポジションが、経理部マネージャーへの道を開く経験となります。

  • 経理スタッフ:日次業務や支払い管理などの基礎的業務を経験する。
  • 税務担当:税法に基づく計算や申告書作成を学び、法務知識を深める。
  • 経営企画スタッフ:財務の視点で事業計画立案に関与する。

若手時代のキャリア経験

若手時代には、以下の業務経験が将来的にマネージャーへの道を拓く基盤となります。

  • 簿記2級以上の資格取得を目指し、正確な仕訳業務を経験する。
  • 会計ソフトやERPシステムを活用したデータ処理スキルを磨く。
  • 各部門との折衝を通じてコミュニケーション能力を向上させる。

これらのキャリアパスを踏むことで、スタートアップ企業の経理部マネージャーというポジションが現実の目標として見えてきます。若手でも挑戦次第で、このポジションに到達することは十分可能です。

スタートアップ企業の経理部マネージャーの キャリアパスの展望

スタートアップの経理部マネージャーを務めることで得られるスキルや経験は、将来のキャリア展望を大きく広げます。このセクションでは、そのスキルがどのように重要で、どのようなキャリアにつながるかを説明します。

まず、スタートアップ特有のスピード感と多様な業務経験を通じて、財務全般に対する深い理解が身につきます。このポジションでは資金繰り、財務分析、税務対応、監査対応など、幅広い業務を担うため、財務スキルの多様性とハイレベルな問題解決能力を習得できます。

さらに、資金調達やIPO準備など、スタートアップならではの特別な経験を積むことで、将来的にCFO(最高財務責任者)や経営幹部への道も開けます。また、グローバル展開を視野に入れた企業で働く場合、国際的な財務管理やコミュニケーションスキルが磨かれます。これらのスキルは、他業界や多国籍企業への転職でも活用できます。

また、スタートアップ企業の経理部マネージャー経験をきっかけに、財務コンサルタントやフリーランスの経理専門家として独立する道を選択する人もいます。この職種が提供するスリリングで実践的な経験は、未来を切り拓くための大きな財産となるでしょう。

まとめ

役割と責任

  • 会社の経理業務を統括し、財務健全性を確保
  • 資金管理、財務諸表の作成・分析、法令遵守を遂行

求められるマインドやスキル

  • 柔軟性、挑戦意欲、責任感などがマインド
  • 財務管理スキルや会計知識、データ分析能力などの専門スキル

重要な職務

  • 資金管理と資金繰りの調整
  • 財務諸表の作成・分析
  • 法令遵守および監査対応

キャリアパス

  • 社内でのキャリアアップ:経理部スタッフ⇒リーダー⇒マネージャー⇒部長⇒CFOへと通じる経理のエキスパートとしてのキャリアアップ
  • 資金調達やIPO準備などスタートアップ企業ならではの特別な経験から、他のスタートアップ企業のCFOや大手上場企業の経営企画部等のキャリアパス
  • 他社の財務部門・経営企画部門へのキャリアチェンジや、財務コンサルタント等でのフリーランス職などの多様なキャリアパス