経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
上場企業の会計基準に則りながら、非上場企業の自由度を発揮した経営管理
経営層に近いところで、現場実務やマネジメントも行うポジション
800万円~1,500万円
※業績や評価によって変動
35歳~50歳
非上場子会社の経理部長は、企業グループの経営現場の計数管理・正確なレポーティングを担い、全社方針の現場実装をリードする存在です。上場企業の子会社であれば、親会社の厳格な会計基準やガバナンス方針に則る一方で、自社現場特有の課題・機動性を加味した管理が求められます。会計・財務・内部統制の実務リーダーであり、月次・年次決算だけでなく、資金繰りや経営計画、監査対応など、会社運営のすべてに深く関わる重要なポジションです。
たとえば毎月の締め処理では経費や債権の漏れを発見し、現場担当者と対策を講じます。年度決算では親会社や監査法人との折衝が頻繁に発生し、決算スケジュールの遅延や誤謬ゼロの対応が必須です。特に親会社への決算報告は、期限が非常にタイトになっています。経理部門の運営体制から改善の旗振り役も担い、部下育成や財務体質強化のPDCAを絶えず回しています。
さらに、経理部長の守りの職務はガバナンスの強化にも直結しています。不正発見やリスク兆候への敏感なアンテナを張りつつ、同時に日々の資金繰りや取引先与信管理といった攻めの財務にも対応しなくてはなりません。例えば現場で急な与信事故や多額の未収リスクが発見された場合は、他部門や経営層に迅速なエスカレーションと対策を実行します。
また、経理部長は経理実務だけではなく、DX推進やERP(基幹システム)刷新、新規事業への会計基盤整備などの会社変革の推進者としても期待される存在です。日常業務でも業務フロー改善やルーティンワークの自動化推進をはじめ、親会社の方針変化に即応し、現場の声を拾い上げるバランサーとして多様なリスク管理を行います。
こうした多面的な役割を担う非上場子会社の経理部長は、企業経営と現場の両方をつなぐ実務の司令塔と呼ぶにふさわしい、やりがいのある役職です。自身のスキルと経験が会社の安全・成長を支え、グループ全体の健全性や透明性を守る最前線のポジションと言えるでしょう。
非上場子会社の経理部長というポジションは企業の屋台骨を支える現場責任者です。決算や資金繰りといった企業活動の最重要インフラの責任者であり、一つひとつの数字が経営判断やグループ全体の意思決定に直接影響を与えます。
最大の魅力は、経営層に極めて近いポジションでありながら、実際の現場実務やマネジメントも直接担い、全社の数字をコントロールできる両輪の仕事であることです。本社経理では得られない経営・事業への深い関与、改善活動や部下育成を自分の手でドライブできるやりがいは、現場を動かす実感に溢れています。
また、非上場子会社であるがゆえに、上場基準の厳しい内部統制やIFRS・J-SOXといった最先端の会計基準の導入経験を積みながらも、自社現場の工夫やDX・IT活用推進など、幅広い改善アイデアを自分主導で試せる裁量があります。親会社経理へのレポーティング機能を軸としつつ、自社独自の財務戦略にも提言できる立場は、大手企業グループに身を置きながら最先端の経理人材へ成長できる最高の舞台と言えるでしょう。
他職種と比べて、数字から現場を変える力や経営課題にダイレクトに貢献できる喜びが大きく、経理スキルだけでなく経営感覚・法規対応・人材マネジメント・ガバナンスなど多様なスキルが身につきます。そのため、将来のCFO候補や本社幹部へステップアップするための最適なキャリアポイントとしても活用可能です。
ここでは3月決算を想定した非上場子会社(中堅製造業グループ子会社など)における経理部長の年間スケジュール例と、その主要ポイントを紹介します。
決算・予算といった山場だけでなく、平時の業務や突発的案件まで幅広く紹介します。
経理部長として最も重要な任務は、毎月の正確な月次/年次決算作業と、その迅速かつ信頼性の高いレポーティングです。親会社グループの締めスケジュールや厳格な会計基準に沿い、現場状況に応じてエラーを抽出、修正します。メンバーとの連携強化や業務フロー見直しを率先して実施し、高品質な数字を安定して供給します。予算管理や予実分析、経営会議資料作成まで担い、経営層の意思決定を下支えしています。
ガバナンスや法令遵守の対策強化も、経理部長の責任のひとつです。J-SOX対応、監査法人・本社監査への準備と受入れ、ルール逸脱や不正兆候の事前検知、不適切処理の未然防止など、多様なリスクをコントロールします。特に不正・情報漏洩・与信事故などは組織全体に大きな悪影響を及ぼすため、資金管理や証憑チェック、部門連携の徹底を日常的に指導し、健全な組織風土づくりを推進します。
正確性の維持だけでなく、チームの生産性向上や業務プロセス変革、新しいツールやデータ分析基盤の導入を積極的に仕掛けます。特にRPAやクラウド型会計の導入、親会社のDX戦略へのフィードバック、新規事業や会計制度変更時の現場展開まで、全社規模の変革を現場からリードします。部下のスキル開発やキャリア相談にも熱心に関わり、将来のCFOや経営企画人材を輩出する役割を担う点も特色のひとつです。
この3つの任務をバランス良く遂行することで、「数字を武器にして、現場を変革し、企業グループ全体に貢献する」真のプロフェッショナルとして経理部長は高く評価されます。
非上場子会社の経理部長クラスの年収は、一般的に800万円〜1,200万円が目安です。グループ全体で戦略的に重要な子会社の場合や、対外経営管理リスクを負うケースの場合には1,300万円〜1,500万円に達する例もあります。全体としては大手上場企業の経理部課長と同等、親会社の経理リーダー層と並ぶ水準といえます。
非上場子会社の経理部長報酬は、近年DX化・ガバナンス強化の流れを受けて待遇が向上傾向です。IT/グローバル子会社では、特別プロジェクト手当やインセンティブの導入も見受けられます。
社内外の信頼獲得には、小さなミスを許さず常に高い精度を目指す姿勢が欠かせません。日常の損益管理や決算書類作成、監査対応の場で活きます。
既存フローの課題や非効率を見抜き、自分から働きかけ改善案を出し続ける姿勢が求められます。業務標準化やDXプロジェクトで発揮されます。
現場や経営陣、親会社に説明・報告する場面が多く、相手を納得させる説明力や説明責任への覚悟が重要です。
自部門だけでなく全社横断の視点で最適化やリスク低減に配慮できる広い視野が大切です。原価低減や他部門との連携で必要になります。
会計基準やシステムの変更、グループ方針転換などの変化をスピード感を持って吸収し、現場に実装できる柔軟性が必要です。
これらのマインドが揃っている方は、経理の質を根底から引き上げ、組織全体への貢献度も格段に向上します。変化を恐れず行動できる人が、真の経理リーダーになれます。
月次・年次決算や税務申告、資金繰りまで幅広い専門性が必要です。不明点には専門家を活用する調整力も含まれます。
基幹システム・会計ソフトを使いこなし、トラブル対応やマスター管理も求められます。IT部門との連携も多発します。
若手育成、目標設定、評価・フィードバックなど、多様な部下と信頼関係を築ける力が不可欠です。
経理以外の現場部門や経営層、監査法人など多様な相手と円滑に意思疎通できる対話力が活きます。
J-SOXや会社法、各種規定・内部統制の知識を実務で使いこなし、リスクを管理・改善できる力です。
突発的なトラブルや不正、難しい案件も冷静に分析・対応策を講じる頭脳的スキルが問われます。
専門知識とITリテラシー、人材マネジメント力がそろえば、経理部長として困難な局面でも必ず成果を出せます。経理のプロから現場変革の旗振り役へ、スキル習得の幅を広げていきましょう。
経理部長になるまでの道のりは複線的で、様々な経験が活かされます。直前のポジションは経理課長・主任、本社経理部の係長や会計監査チームリーダー、あるいは親会社からCFO部門へ出向した管理職など、多様なルートがあります。
さらにその手前には、経理・財務担当者として月次、連結決算や原価計算、税務申告、資金繰り実務を数年経験した後、システム導入プロジェクト参画や業務改善リーダーとしての成果を積んでいるケースが一般的です。経理以外にも、経営企画部や他部門での予算管理・原価管理・プロジェクトマネジメント経験を経て経理部へ転籍し、マネージャーに抜擢される例も見られます。
若手時代に現場の日常業務で正確性、納期厳守、コミュニケーション力を磨きつつ、本社や親会社・監査法人との接点で説明力・調整力を養うことがステップアップのカギです。常にスキルアップに前向きな姿勢、社内外の事情に敏感なアンテナを持ち続ければ、出身分野にとらわれず経理部長を目指すことができます。
非上場子会社の経理部長経験は、そのままCFOや本社経理部長への昇格、本社管理部門や経営企画への異動など、多彩なキャリアパスにつながります。経理部長ポストでマネジメント・ガバナンス・業務改革実績を重ねれば、グループ全体の財務幹部候補として将来の幹部登用が狙えます。
また、急速な事業環境の変化やDX推進が進む現代において、経理部長の経験は、スタートアップや外資系企業でも高く評価される汎用的キャリアです。支店長や子会社CFO、経営コンサルタントへ転身する道が開けるだけでなく、将来はグループ以外の事業会社の経理・財務幹部や社外監査役等、多様な領域で自分の力を発揮できます。
現場で数字・人・ガバナンスを動かした経験が、ビジネスパーソンとしての価値を一段と高めてくれるでしょう。