経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
世界を動かす戦略立案の頂点へ
クライアント企業の未来を創る最高意思決定者
知と洞察を武器に、ビジネス変革の指揮を執る
3,000万円~1億円以上
※業績や評価によって変動
35歳~60歳
戦略系コンサルティングファームのパートナーという職業は、ビジネスの世界における最も影響力のあるポジションの一つです。グローバル企業のCEOや政府高官と対等に渡り合い、時に未来を左右する戦略を提言する──そんな知的興奮と社会的インパクトを日常的に体験できる稀有な仕事です。高度な専門知識と洞察力、卓越したリーダーシップを武器に、クライアント企業の経営陣と二人三脚で困難な課題に挑み、組織を変革へと導く。そして、その対価として得られる社会的ステータスと経済的報酬も群を抜いています。挑戦を恐れず、知的好奇心に溢れ、人々を巻き込む力を持っていれば、戦略系コンサルのパートナーの道は、自らの可能性を最大限に引き出せる魅力的なキャリアとなるでしょう。
戦略系コンサルティングファームのパートナーは、ビジネスの舞台裏で世界を動かす存在です。クライアント企業のCEOや役員と対等に向き合い、その企業の未来を左右する戦略を共に描き、実行に移す──この仕事ほど、知的挑戦と社会的影響力を兼ね備えた職業は多くありません。
パートナーの一日は、多くの場合、クライアント企業の会議室から始まります。朝8時、世界的な製造企業のCEOと向かい合い、グローバル展開戦略についてディスカッションを行う場面を想像してみてください。数百億円規模の投資判断や、数千人の雇用に影響を与える決断を、分析と提言が大きく左右するのです。
「アジア市場での競争力を高めるために、次の5年間でどこに投資すべきか」。こうした問いに対し、パートナーは自社の分析チームを率いて、市場調査、競合分析、財務モデリングなど多角的なアプローチでソリューションを導き出します。しかし、求められているのはただ分析するだけではありません。その真価は、複雑な情報を咀嚼し、クライアントが納得して行動に移せる明確な戦略へと昇華させる能力にあります。
午後には別のクライアント、例えば金融機関の経営陣と、デジタル変革プロジェクトの進捗を確認するミーティングを行うこともあります。ここでパートナーは、プロジェクトの全体像を把握しつつ、チームのコンサルタントたちが直面している課題を素早く理解し、的確な助言を与えます。時には、クライアント側の抵抗勢力を説得するためのコミュニケーション戦略を練ることもあるでしょう。
「このプロジェクトの本質的な価値は何か」「なぜ従来のやり方では不十分なのか」──こうした根本的な問いかけをする力こそ、パートナーに求められる重要な資質です。表面的な解決策ではなく、クライアントのビジネスモデルそのものを再考するような、本質的な変革を促すことができるのです。
夕方以降は、新規クライアントとの商談や、自社のコンサルタントの育成、あるいは業界の知見を深めるための調査研究に時間を割くこともあります。例えば、人工知能がもたらす産業構造の変化について独自の見解をまとめ、それを基にした新しいサービス開発を主導する──そんな未来を見据えた取り組みも、パートナーの重要な役割です。
特に近年は、戦略策定だけでなく、その実行までを支援するケースが増えています。「PowerPointのスライドを作成するだけでなく、実際に手を動かして成果を出す」というスタイルへの移行です。中には、クライアント企業に数か月〜数年単位で常駐し、CEOの右腕として変革を牽引するパートナーもいます。
戦略系コンサルのパートナーのもう一つの重要な役割は、ファーム自体の経営です。売上や利益の責任を負い、優秀な人材の獲得・育成を行い、自らの専門性を武器に新たなサービス領域を開拓していくことが求められます。つまり、コンサルタントであると同時に、経営者としての役割も担うのです。
この職業の醍醐味は、世界の最先端ビジネス課題に日常的に触れられること、そして自らの知見とリーダーシップで実際に大きな変化を生み出せることでしょう。一つのプロジェクトで生み出す価値が数十億円、時には数百億円に及ぶこともあり、その分析と判断は常に高い緊張感を伴います。しかし、その分だけ達成感も大きく、社会に与えるインパクトも計り知れません。
戦略系コンサルのパートナーという職業を目指す理由は、他のどんなキャリアとも比較にならない独自の魅力にあります。それは高収入やステータスを超えた、知的プロフェッショナルとしての究極の挑戦であり、社会に対する影響力の行使でもあります。
まず第一に、この職業がもたらす「知的興奮」の連続は他に類を見ません。世界を代表する企業や政府機関が直面する最も複雑な課題に挑み、答えのない問いに対して自らの分析力と創造性で解決策を生み出していく──このプロセスは、知的好奇心の強い人にとって何物にも代えがたい喜びとなります。一般的な企業役員が一つの業界や組織の中で思考するのに対し、戦略系コンサルのパートナーは多様な業界、多様な企業文化、多様なビジネスモデルに触れることで、比類のない広い視野と洞察力を養うことができます。
「同じ業界の中だけでは気づけない発想や解決策を持ち込める」という強みは、どれほど優秀な企業内人材でも容易には獲得できない価値です。例えば、自動車業界の知見をヘルスケア領域に応用したり、テクノロジー企業の経営手法を伝統的な製造業に導入したりといった「クロスインダストリー」の視点を武器にできるのです。
第二に、戦略系コンサルのパートナーが持つ社会的影響力の大きさは圧倒的です。提言や判断が、数万人の雇用や、数千億円の資本配分、さらには業界全体の未来を左右することも珍しくありません。たとえば、ある製造業大手のグローバル戦略を立案することで、複数の国々にわたる工場の配置や数千人規模の雇用創出に貢献する。あるいは、政府機関の政策立案を支援し、数百万人の市民生活に影響を与える制度設計に携わる。こうした大きな舞台で自分の能力を発揮できることは、強い使命感と社会貢献意識を持つ人にとって、この上ない魅力となるでしょう。
第三に、戦略系コンサルのパートナーは「キャリアの自由度」という点でも優れています。パートナーとしての経験と実績は、その後のキャリアにおいて無限の可能性を開きます。クライアント企業のCEOや役員として転身する道、独立して自らの経営コンサルティングファームを立ち上げる道、あるいは投資家としてベンチャーキャピタルやプライベートエクイティの世界に進む道など、選択肢は多岐にわたります。実際、多くの元パートナーが、各業界のトップリーダーとして活躍しています。
また、「生涯学習者」としての成長を重視する人にとって、この職業ほど学びの機会に恵まれた環境はないでしょう。常に最先端のビジネストピックに触れ、世界の頭脳と呼ばれる人々と対等に議論し、自らの知見を日々更新していく──この知的刺激の連続が、多くのパートナーを惹きつけています。
もちろん、経済的な報酬の魅力も計り知れないほど大きなものです。トップファームのパートナーともなれば、年収は数千万円から億単位に達し、企業のエグゼクティブと遜色ないレベルとなります。しかし、多くのパートナーが口を揃えて言うのは、「お金以上に、仕事そのものの面白さと社会的意義が自分を突き動かしている」ということです。
戦略系コンサルのパートナーを目指す道は決して容易ではありません。しかし、その険しい道のりを乗り越えた先にある世界は、知的刺激、社会的影響力、経済的報酬が三位一体となった、稀有なキャリアの頂点と言えるでしょう。そして何より、「自分の頭脳と判断力で世界を少しでも良い方向に変えていく」という使命感を持って働ける喜びは、他の追随を許さないものなのです。
戦略系コンサルティング会社のパートナーは、年間を通じて多様な役割と責任を担っています。以下に年間スケジュール例を四半期ごとに整理しました。
1月:年始戦略策定
2月:人材評価と開発
3月:ビジネス開発強化
4月:プロジェクト管理
5月:市場開拓
6月:組織強化
7月:知識開発
8月:休息と振り返り
9月:市場拡大
10月:クライアント計画更新
11月:業績最終調整
12月:総括と戦略計画
ビジネス開発(約30〜40%)
クライアントサービス(約20〜30%)
人材開発(約15〜20%)
知的資本開発(約10〜15%)
ファーム運営(約10〜15%)
このスケジュールは、パートナーのシニオリティ、専門領域、所属するコンサルティングファームの文化や規模によって異なる場合があります。また、近年ではリモートワークの普及により、地理的な移動が減少し、オンラインでのクライアント対応やチーム管理が増加している傾向もあります。戦略系コンサルティングのパートナーは、ビジネス開発者、プロジェクトリーダー、メンター、思想的リーダー、そして経営者という多面的な役割を担っており、これらのバランスを取りながら年間を通して活動しています。
戦略系コンサルのパートナーの最も根本的な責任は、ファームに安定的な収益をもたらすことです。
売上目標の達成
クライアントポートフォリオ管理
案件創出活動
営業プロセスリード
戦略系コンサルのパートナーは専門知識の権威であり、成果物の最終責任者でもあります。
専門性と思想的リーダーシップ
プロジェクトの品質保証
クライアント戦略アドバイス
差別化された付加価値提供
コンサルティングファームの最も重要な資産は人材であり、パートナーはその育成と組織文化の形成に決定的な役割を持ちます。
次世代リーダー育成
チーム構築と文化形成
評価と報酬決定
組織変革への貢献
戦略系コンサルティングのパートナーは、これら3つの重要任務のバランスを取りながら活動します。特に優れたパートナーは、収益責任を果たしながらも、長期的な視点で知的資本の構築と次世代リーダーの育成に投資することで、持続可能な成功を実現しています。これらの役割は互いに密接に関連しており、例えば独自の知的資本や方法論の開発が新たなビジネス機会を生み出し、優秀な人材の育成が高品質なサービス提供を可能にするという好循環を生み出します。そのため、バランスの取れたアプローチが求められます。人間関係構築力、ビジネス感覚、分析的思考力、リーダーシップといった要素が、これらの任務を成功させるための基盤となっています。
戦略系コンサルティング会社のパートナーの報酬は、ファームの種類、規模、個人の実績によって大きく異なりますが、一般的に非常に高水準であることが特徴です。以下に、現在の市場データに基づいた戦略系コンサルのパートナーの報酬水準をご紹介します。
基本的な報酬レンジ
報酬構成要素
個人のパフォーマンス要因
ファーム内でのポジション
地域差
伝統的な報酬形態
純粋な業績連動モデル
ハイブリッドモデル(最も一般的)
戦略系コンサルのパートナーの報酬は、一般的な企業の役員クラスと同等かそれ以上の水準にあり、特に売上貢献の大きなパートナーは年間1億円を超える報酬を得ています。この高水準の報酬は、クライアント企業のCEOレベルとの対等な関係構築、高度な専門性の維持、そして厳しい競争環境の中での優秀な人材確保のために必要とされています。ただし、こうした高報酬の背景には、膨大な労働時間、常に結果を出し続けるプレッシャー、厳格なパフォーマンス評価があることも忘れてはなりません。パートナーになるまでの道のりは非常に厳しく、多くのコンサルタントがその過程でキャリアチェンジしていきます。
戦略系コンサルティング業界には様々な特色を持つファームが存在しますが、特に世界的に高い評価と影響力を持つ代表的な5社を紹介します。
概要
特徴
概要
特徴
概要
特徴
概要
特徴
概要
特徴
マッキンゼー、BCG、ベインの3社は、戦略系コンサルティング業界では「MBB」と総称され、最も権威あるトップティアのファームとして知られています。これら3社は以下を共通の特徴としています。
これら5社はそれぞれ独自の強みと文化を持ちながら、グローバルビジネスの変革と成長に大きな影響を与え続けています。近年はデジタル化、サステナビリティ、レジリエンスなどの新しい領域へも積極的に事業拡大しています。
戦略系コンサルティングファームのパートナーは、高度な分析スキルや業界知識を持つだけでは不十分です。真にインパクトのあるパートナーには、特有のマインドセットや思考様式が備わっています。以下に、トップクラスの戦略系コンサルのパートナーに共通して見られる核心的なマインドを解説します。
本質的な価値創造への熱量
真のパートナーシップ志向
結果へのコミットメント
常に一歩先を行く探究心
構造化思考と本質把握
高次元の統合力
CEOレベルの戦略的対話力
影響力の発揮
チーム育成と組織構築
リスクテイクの姿勢
イノベーション志向
ビジネス開発の感性
高ストレス環境での平常心
謙虚さと学習姿勢
強固な倫理観と価値観
真に優れた戦略系コンサルのパートナーは、これらのマインドセットを複合的に体現しています。特に重要なのは、これらが表面的な行動様式ではなく、本人の価値観や思考の根幹に根差していることです。こうしたマインドセットは一朝一夕に身につくものではなく、長年にわたる経験、内省、そして意識的な自己開発を通じて培われます。また、これらのマインドセットを実践することで、パートナー自身だけでなく、所属するファーム全体、そしてクライアント企業にも持続的な価値をもたらすことができるのです。
戦略系コンサルティングファームのパートナーには、クライアント企業の最高経営層と対等に渡り合い、複雑な経営課題を解決に導くための幅広いスキルセットが求められます。分析能力を超えた多面的なスキルが、真に価値あるパートナーの条件となります。
ビジネス洞察力
分析・構造化スキル
戦略構築スキル
経営層との対話力
プレゼンテーション・説得力
関係性マネジメント
プロジェクトリーダーシップ
タレントマネジメント
組織内リーダーシップ
ビジネス開発力
サービス開発力
収益マネジメント
産業・機能領域の専門性
先端領域への習熟
学習・知識更新力
実装・実行力
組織変革推進力
成果保証力
高い倫理観・判断力
リスクマネジメント
クライアント教育力
これらのスキルは互いに補完し合い、総合的な戦略系コンサルのパートナーとしての実力を形成します。特に重要なのは、分析的スキルと対人的スキルのバランス、そして短期的成果と長期的関係構築の両立です。最高レベルのパートナーは、これらのスキルを保有するだけでなく、状況に応じて適切に使い分け、組み合わせる統合的な能力を持っています。また、自らのスキルを絶えず進化させながら、次世代のコンサルタントにも伝承していくことで、組織全体の能力向上にも貢献しています。
戦略系コンサルのパートナーに至るキャリアパスは、一般的に考えられているよりも多様です。伝統的なコンサルティングファーム内での昇進ルートだけでなく、様々なバックグラウンドからパートナーの座に到達する道があります。ここでは、パートナーになるための複数のルートを逆算して紹介します。
まず、トップ戦略系コンサルティングファームのパートナーの直前のポジションとしては、「プリンシパル」(あるいは「シニアマネージャー」「アソシエイトパートナー」などファームによって呼称は異なります)が挙げられます。このレベルでは、すでにプロジェクトの全体責任を負い、クライアントの上級幹部との関係構築や、ビジネス開発にも関与します。「優秀なコンサルタント」から「ビジネスを創出・拡大できる人材」へと期待が変わるポジションです。
プリンシパルに至る前は、通常「マネージャー」(または「プロジェクトリーダー」)のポジションを経験します。ここではチームマネジメントの責任を持ち、複数のワークストリームを統括します。分析の正確さだけでなく、チームメンバーの育成やクライアントとの関係構築能力も問われるようになるのです。
さらにその前は「コンサルタント」(または「アソシエイト」)として、基本的なコンサルティングスキルを磨く段階があります。データ分析、インタビュー実施、報告書作成など、コンサルティングの基本的な実務を担当します。多くの場合、この段階で業界知識や特定の機能領域に関する専門性の基盤を築き始めます。
そして最初のエントリーポイントとしては、多くの場合「アナリスト」や「ビジネスアナリスト」として入社します。特に欧米系のファームでは、学部卒で入社した場合はこのポジションからスタートするケースが多いでしょう。
ただし、これは「最短ルート」の一例に過ぎません。実際には、以下のような複数の経路があります。
多くのトップファームでは、MBAホルダーを経験者として採用し、アソシエイトやコンサルタントのポジションからスタートさせます。このルートは特に、学部卒業後に別の業界で数年の実務経験を積んだ後、MBAを取得してコンサルティングに転向するケースが多く見られます。数年間の実務経験とMBAでの学びが、コンサルタントとしての視野を広げる上で役立つとされています。
特定業界での深い経験や専門知識を持つ人材を、「エキスパート」や「スペシャリスト」として中途採用するケースも増えています。例えば、製薬企業の研究開発責任者がヘルスケア部門のシニアポジションでファームに参画したり、テクノロジー企業の幹部がデジタル変革プラクティスに加わったりするケースです。業界の動向や実践的知識を持つ人材への需要は高まっています。
博士号を持つ研究者や大学教授が、その専門領域を活かして特定のプラクティスのリーダーとしてファームに招かれるケースもあります。特に経済学、統計学、人工知能など、理論的基盤が重要な領域では、アカデミックなバックグラウンドが強みとなります。通常、標準的な昇進ルートとは異なる「特別枠」として迎えられることが多いでしょう。
CEOやCレベルエグゼクティブとしての経験を持つ人材が、その経験を活かしてシニアパートナーやプラクティスリーダーとしてコンサルティングファームに参画するケースもあります。実戦経験と人脈は、ファームにとって大きな資産となります。
ここで特筆すべきは、これらのルートはますます「複線化」していることです。かつての「アナリストから入社し、一直線にパートナーを目指す」というモデルは、今ではむしろ少数派かもしれません。多くのパートナーは、コンサルティング経験と企業での実務経験を交互に積みながら、最終的にパートナーに至るという複雑な経路をたどっています。
パートナーへの道のりで重要なのは、「年数」だけでなく「質の高い経験の蓄積」です。例えば、グローバルな大規模変革プロジェクトをリードした経験、新しいサービスラインを立ち上げた実績、学術論文や著書を通じた知的貢献など、目に見える形で価値を証明できることが重要です。
若手の時代に身につけておくべき能力としては、まず何よりも「分析力と論理的思考力」が挙げられます。複雑な問題を構造化し、データに基づいて仮説を検証する力は、コンサルタントの基礎体力とも言えるスキルです。これに加えて、「効果的なコミュニケーション能力」「チームワーク」「時間管理能力」なども、早い段階から意識して磨いておきたい要素です。
また、「専門性の萌芽」も若いうちから意識しておくと良いでしょう。全てのトピックに浅く通じているよりも、特定の業界や機能領域において深い知見を持つコンサルタントの方が、長期的には価値が高くなる傾向があります。例えば、デジタルマーケティング、サプライチェーン最適化、組織変革など、自分が情熱を持てる領域を見つけ、その分野での専門性を徐々に築いていくことが大切です。
パートナーまでの道のりで直面する大きな壁の一つは、「個人プレイヤーからチームリーダーへの転換」です。優秀なアナリストやコンサルタントの多くは、自分自身の分析力や問題解決能力で評価されてきた人たちです。しかし、マネージャーやプリンシパルのレベルでは、チームの成果を最大化するリーダーシップや、クライアント企業を巻き込む影響力がより重要になります。この転換をスムーズに行えるかどうかが、パートナーへの道を左右する大きな分岐点となるでしょう。
さらに、パートナーに近づくにつれて重要性を増すのが「ビジネス開発能力」です。どれだけ優れた分析や提案ができても、新しいクライアントを獲得したり、既存プロジェクトを拡大したりできなければ、パートナーとしての価値は限定的です。クライアントとの信頼関係構築や、潜在ニーズの掘り起こし、価値提案の作成など、「ビジネスを創出する」スキルセットが求められるようになります。
ここで重要なのは、これらの能力は意識的な努力と経験の積み重ねによって磨かれるということです。「生まれながらのコンサルタント」というものは存在せず、地道な努力と成長への意欲が、最終的にパートナーへの道を切り拓きます。
若手の段階では、様々なプロジェクトを経験し、異なる業界や問題に触れることで視野を広げることが大切です。一方で、キャリアが進むにつれて「特定の領域での専門性」と「ビジネス開発能力」のバランスを意識的に磨いていくことが、パートナーへの近道となるでしょう。
最後に付け加えるならば、パートナーを目指す道のりは「出世競争」ではなく、自分自身の専門家としての成長過程でもあります。ステップアップのたびに直面する新たな挑戦を楽しみ、クライアントや同僚から学び続ける姿勢こそが、結果的に最も確実にパートナーの座へと導いてくれるのではないでしょうか。
戦略系コンサルのパートナーという地位に至るまでの道のりで身につくスキルと、そこから広がるキャリア展望は、ビジネス界における他の追随を許さない広がりと深さを持っています。この職種で培われる能力は、コンサルティングの世界だけでなく、あらゆるビジネスリーダーシップの場面で価値を発揮します。
まず、戦略系コンサルのパートナーが磨き上げる「構造化された思考力」は、どんな複雑な問題も本質的な要素に分解し、論理的に解決策を導き出す能力です。例えば、「なぜこの企業の収益性が低下しているのか」という問いに対して、市場環境、競合状況、内部オペレーション、組織文化など、多角的な視点から原因を特定し、それぞれに対する解決策を体系的に組み立てていく──この思考プロセスは、どんなビジネスシーンでも応用可能な普遍的なスキルです。
次に、「高度なコミュニケーション力」もパートナーの必須条件です。これは流暢に話すという意味ではなく、複雑な分析結果をクライアントが理解し、行動に移せるような形でわかりやすく伝える能力を指します。例えば、データ分析から導き出された難解な戦略的示唆を、CEOや役員会が短時間で理解し、納得できるようなストーリーテリングに変換する力です。このスキルは、経営者や政策立案者など、高いポジションでの意思決定に不可欠です。
さらに、「リーダーシップと影響力」も磨かれます。パートナーは自社のコンサルタントチームを率いるだけでなく、クライアント企業の多様なステークホルダーを説得し、時には組織の反対勢力を乗り越えて変革を推進する必要があります。「なぜ変化が必要なのか」「その変化がもたらす価値は何か」を明確に示し、人々の行動を変えていくような影響力は、どんな組織のリーダーにとっても必須の能力です。
「戦略的視点と実行力の両立」も特筆すべきスキルです。ビジョンを描くだけでなく、それを現実の行動計画に落とし込み、実行を支援するまでをカバーする能力は、近年のコンサルティング業界で特に重視されています。「絵に描いた餅」ではなく、実際の成果につながる戦略を立案・実行できる人材は、どの業界でも引く手あまたです。
また、「ネットワーク構築力」も見逃せません。パートナーは多様な業界のCクラスエグゼクティブとの人脈を自然と築き上げていきます。こうした関係性は、人脈以上の価値を持ち、将来のキャリアにおける無形の資産となるでしょう。時に複数の業界をまたぐ大規模プロジェクトをコーディネートする経験は、エコシステム全体を俯瞰して動かす力を養います。
パートナーレベルともなれば、「業界・機能特化型の専門知識」も卓越したレベルに達します。例えば、製薬業界のM&A戦略、自動車業界のデジタル変革、金融機関のリスク管理など、特定分野における深い専門性を持つことで、その領域における第一人者としての地位を確立します。この専門性は、その後のキャリアにおいても揺るぎない競争優位性となります。
これらのスキルを身につけたパートナーの前には、どのようなキャリアパスが広がっているのでしょうか。
最も一般的なのは、「企業のCレベルエグゼクティブ」への転身です。多くの元コンサルパートナーがCEO、COO、CFO、CDOなどのポジションで活躍しています。コンサルタントとして様々な企業の経営課題に触れてきた経験は、実際の経営の現場でも強みとなります。特に、変革期にある企業や、国際展開を図る企業において、その価値は最大化されるでしょう。
あるいは「スタートアップ創業者・経営者」としての道も魅力的です。ビジネスモデル構築、資金調達、チーム組成、市場分析など、スタートアップに必要なスキルセットは、コンサルティングでの経験と高い親和性を持ちます。実際、多くの元コンサルパートナーが革新的なスタートアップを立ち上げ、大きな成功を収めています。
「投資の世界」に進むケースも増えています。プライベートエクイティやベンチャーキャピタルのパートナーとして、投資判断や投資先企業の価値向上に携わるキャリアです。企業価値の本質を見抜く目と、その価値を高めるための戦略立案能力は、投資家としても大きな武器となります。
また、「独立系アドバイザー・エキスパート」として、特定領域の専門コンサルタントや企業の社外取締役、アドバイザリーボードメンバーとして活躍する道もあります。パートナー時代に培った専門性とネットワークを活かしながら、より自由度の高い働き方を実現できるポジションです。
さらに、政府機関や国際機関のリーダーシップポジション、学術・教育機関での要職など、社会的影響力の大きい分野でのキャリアも視野に入ります。コンサルティングで培った問題解決能力とコミュニケーション力は、公共政策や教育の場でも高く評価されます。
重要なのは、戦略系コンサルのパートナーというポジションは「ゴール」ではなく、さらなるキャリアの広がりへの「ゲートウェイ」でもあるということです。そこで身につけたスキルと経験、そして構築したネットワークは、次に何を選択するにしても、無二の価値を持ち続けるでしょう。一度パートナーの座に至れば、その後のキャリア選択における自由度は大きく広がり、影響力も格段に増していくのです。