経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑

会計人材のキャリア名鑑

大手上場企業の内部監査部マネージャー

「リスク管理の最前線で現場を牽引し、企業価値向上に寄与する実務リーダー」

経営陣と社員の間に立ち、組織の透明性を確保する

リスクを未然に防ぎ、企業価値を高める戦略的視点

主な業務内容

  • 内部統制システムの評価・改善提案
  • 不正・リスクの発見と防止対策の策定
  • 経営陣へのリスク報告と改善提案

想定年収

700万円~1,200万円
※業績や評価によって変動

想定年齢

30歳~45歳

大手上場企業の内部監査部マネージャーは こんな仕事

「内部監査」は企業の健全な成長と発展を支える重要なポジションです。企業の「免疫システム」とも呼ばれるこの職種は、チェック機能にとどまらず、経営陣の右腕として企業価値向上に貢献する戦略的な役割を担っています。内部監査のプロフェッショナルとして活躍することは、企業の透明性と健全性を守りながら、自身のキャリアも大きく飛躍させることができる魅力的な選択肢です。

内部監査部マネージャーは、企業の「内なる目」としての役割を担い、組織全体を俯瞰しながら健全なビジネスの運営をサポートします。その中核的な業務は、企業活動における様々なリスクを識別し、それらを最小化するための仕組みづくりにあります。

たとえば、月曜の朝、監査チームを集めてミーティングを実施し、今週の監査計画を確認します。前週から続いている営業部門の監査では、取引承認プロセスに潜むリスクを評価し、その改善策を検討中です。営業担当者へのヒアリングや取引記録の分析を通じて、「なぜこのプロセスにリスクが潜んでいるのか」を丁寧に紐解いていきます。

また、海外子会社の監査プロジェクトも進行中かもしれません。現地のマネジメントとのオンライン会議では、グローバルなコンプライアンス基準をどのように実装するかについて議論を重ねます。時差を考慮しながら、アメリカやアジアの拠点とも連携して、グループ全体の内部統制の整合性を高める取り組みを推進するのです。

さらに、新規プロジェクトや新システム導入前には、予防的な観点からリスク評価を行います。「このビジネスモデルには、どのようなリスクが潜んでいるだろうか」「システム移行に伴うデータ整合性のリスクは十分にコントロールされているか」といった視点で分析し、プロジェクトが安全に進行するようアドバイスを提供します。

内部監査の仕事の醍醐味は、企業の様々な部門と関わりながら、ビジネスの全体像を把握できることです。経理・財務部門の会計処理の適切性を確認する日もあれば、IT部門のセキュリティ対策の有効性を評価する日もあります。製造現場に足を運び、品質管理プロセスのリスクを検証することもあるでしょう。

このように多岐にわたる業務を調整し、メンバーの育成も行いながら、最終的には経営陣に対して監査結果と改善提案をレポートします。問題点を指摘するだけでなく、「どうすれば企業価値を高められるか」という建設的な提案ができる点が、内部監査部マネージャーの大きな役割です。経営陣との定期的なミーティングでは、監査発見事項を報告するとともに、経営戦略に関するリスクと機会についても意見を述べる機会があります。

内部監査部マネージャーの役割は、「問題の発見者」ではなく、「解決策の提案者」「変革の推進者」としての側面も持ち合わせています。企業の健全な発展のために、時には厳しい指摘も必要ですが、常に組織をより良くするという前向きな姿勢で業務に取り組むことが求められるのです。

大手上場企業の内部監査部マネージャーという ポジションの魅力

内部監査部マネージャーという職種を目指す理由は、キャリアの幅広さと深さにあります。この職種では、企業のあらゆる部門・プロセスに関わるため、ビジネスの全体像を把握する絶好の機会となります。営業、製造、財務、IT、人事など、様々な部門の業務と課題を理解することで、ビジネスパーソンとしての視野が大きく広がるのです。

また、内部監査の仕事は、「チェック」の域を超え、企業価値の向上に直結します。例えば、監査チームが発見した在庫管理プロセスの問題点を改善することで、数千万円のコスト削減につながったとしたら、どれほど大きな達成感を得られるでしょうか。このように、自分の仕事が企業の健全性と業績向上に直接貢献する実感を持てることは、大きなやりがいとなります。

現代のビジネス環境では、コンプライアンスや内部統制の重要性がますます高まっています。粉飾決算や情報漏洩など、企業不祥事のニュースを目にすることも少なくありません。内部監査部マネージャーは、そうしたリスクから企業を守る「最後の砦」として、社会的にも重要な役割を担っています。自分の専門性が企業だけでなく、株主や顧客、従業員などステークホルダー全体の利益を守ることにつながるという社会的意義を実感できるのも、この職種の魅力です。

さらに、内部監査部マネージャーとしての経験は、将来のキャリアパスを大きく広げます。内部監査で培った分析力、問題解決能力、リスク感覚は、経営企画、財務、コンプライアンス部門など、様々な重要ポジションへのステップアップに活かせます。実際に、多くの企業では内部監査部門出身者が、経営幹部や専門部門の責任者として活躍しています。

グローバル企業では、内部監査マネージャーとして海外拠点の監査に携わる機会も数多くあります。米国や欧州、アジア各国の拠点を訪問し、現地スタッフとディスカッションしながら共に改善策を検討するといった経験は、国際感覚を養う絶好の機会となるでしょう。

内部監査部マネージャーの魅力は、「問題を指摘する側」でありながら、「解決策を一緒に考える」というバランス感覚にもあります。時には厳しい指摘も必要ですが、最終的には「より良い会社にするため」という共通の目標に向かって、経営陣や各部門と協力関係を築いていく。その過程で、高度な調整力やコミュニケーション能力を身につけられるのも大きな成長機会と言えるでしょう。

企業の健全性を守りながら、自身のスキルとキャリアも大きく成長させられる内部監査部マネージャーは、長期的なキャリア構築を考える方にとって、非常に魅力的な選択肢なのです。

大手上場企業の内部監査部マネージャーの 年間スケジュール例

内部監査部マネージャーは、企業のリスク管理、ガバナンス、内部統制の有効性を独立した立場から評価・改善する重要な役割を担っています。以下に、一般的な大手上場企業における内部監査部マネージャーの年間スケジュール例を月次で詳細に解説します。

4月(年度開始月)

重点活動

  • 監査計画の最終化と承認取得
    • 前年度に策定した監査計画の最終調整
    • 監査役等および経営会議での年間監査計画の承認
    • 監査チームへの年間計画の説明と役割分担の明確化
  • 期初キックオフ
    • 内部監査部全体会議の実施
    • 年間目標の共有と監査アプローチの確認
    • 新年度の重点監査項目の周知徹底
  • 第1四半期監査の準備
    • 第1四半期に予定されている監査対象部門への事前通知
    • 必要資料の洗い出しと提出依頼
    • 監査チームの編成と事前調査の開始

管理業務

  • 前年度の監査結果の総括レポートの作成
  • 内部監査部のKPI設定と評価基準の確認
  • 監査管理システムのメンテナンスと更新

5月

重点活動

  • 第1四半期監査の実施
    • 予定された部門・プロセスの監査実施
    • インタビュー、資料検証、テスト実施などの現場作業
    • 日々の発見事項の整理と証跡の収集
  • 監査フォローアップ
    • 前年度指摘事項の改善状況の確認
    • 未改善項目に関する担当部門との協議
    • フォローアップ結果の取りまとめ
  • J-SOX評価計画策定(日本企業の場合)
    • 金融商品取引法に基づく内部統制評価の年間計画策定
    • 評価対象プロセス・拠点の選定
    • 評価スケジュールと担当者の決定

管理業務

  • 監査調書のレビューと品質管理
  • 監査役等との定例会議
  • 内部監査部門の教育・研修計画の実行

6月

重点活動

  • 第1四半期監査の完了と報告書作成
    • 監査結果の取りまとめと評価
    • 発見事項の重要度分類と改善提案の具体化
    • 監査報告書の草案作成
  • 株主総会対応
    • 内部統制状況に関する株主総会資料の確認
    • 必要に応じて株主総会での質疑対応準備
    • コーポレートガバナンス報告書の内部監査関連記述の精査
  • J-SOX評価の開始
    • 全社的な内部統制の評価
    • 評価対象部門への説明会実施
    • 文書化状況の確認と更新依頼

管理業務

  • 第2四半期監査計画の詳細化
  • 監査部門の半期予算管理
  • 監査法人との連携会議

7月

重点活動

  • 第1四半期監査報告会の実施
    • 経営層向け監査結果報告会の開催
    • 監査対象部門への最終報告と改善計画の合意
    • 改善計画の実行支援と助言
  • 第2四半期監査の準備と開始
    • 監査対象部門への事前通知と準備要請
    • 監査チームの編成と監査手続きの確認
    • 予備調査とリスク評価の実施
  • グループ会社監査対応
    • 主要子会社の内部監査部門との連携会議
    • グループ監査情報の共有と統合
    • 海外子会社監査計画の調整

管理業務

  • 内部監査の中間評価の実施
  • 監査手法・ツールの改善検討
  • 監査役等への四半期報告

8月

重点活動

  • 第2四半期監査の本格実施
    • 予定された部門・プロセスの監査実施
    • 重点テーマに関する深掘り調査
    • 発見事項の整理と対象部門との協議
  • IT統制評価
    • ITガバナンスの評価
    • システム開発・運用プロセスの監査
    • サイバーセキュリティ対策の検証
  • J-SOX業務プロセス評価
    • 主要業務プロセスの統制評価
    • 統制の運用状況テスト
    • 不備事項の識別と是正支援

管理業務

  • 監査調書のレビューと品質管理
  • 内部監査部門の中間スキル評価
  • リスク評価手法の見直しと更新

9月

重点活動

  • 第2四半期監査の完了と報告書作成
    • 監査結果の取りまとめと分析
    • 重要な発見事項の整理と改善提案の検討
    • 監査報告書の作成とレビュー
  • 半期監査結果の総括
    • 上半期監査結果の傾向分析
    • リスク評価の更新と下半期計画への反映
    • 経営会議・監査委員会向け半期報告資料の作成
  • グローバル拠点監査(グローバル企業の場合)
    • 海外拠点の監査実施または現地監査チームとの連携
    • グローバル共通課題の識別
    • 地域特有のリスク対応状況の確認

管理業務

  • 下半期監査計画の見直しと調整
  • 内部監査の品質評価プログラムの実施
  • 監査法人との中間連携会議

10月

重点活動

  • 上半期監査結果報告会の実施
    • 経営層への上半期監査結果の報告
    • 監査役等への詳細報告
    • 全社的な課題と対応策の提言
  • 第3四半期監査の準備と開始
    • 監査対象部門への通知と事前説明
    • 監査手続の確認と必要に応じた見直し
    • 事前資料の収集と分析
  • コンプライアンス監査
    • 法令遵守状況の検証
    • 内部通報制度の有効性評価
    • 重点法令対応状況の確認

管理業務

  • 来年度の監査計画策定準備の開始
  • 監査マニュアル・手続きの更新
  • 監査部門のスキルギャップ分析と研修計画

11月

重点活動

  • 第3四半期監査の本格実施
    • 各部門・プロセスの監査実施
    • 重要な取引・プロジェクトの特別レビュー
    • 発見事項の協議と改善方針の検討
  • リスク評価の更新
    • 全社リスクマップの更新
    • 事業環境変化に伴うリスク再評価
    • 来年度監査計画へのインプット作成
  • 子会社監査結果のレビュー
    • 主要子会社の監査結果の統合分析
    • グループ全体の内部統制課題の識別
    • 親会社としての対応策の検討

管理業務

  • 監査調書のレビューと品質管理
  • 来年度の監査予算・リソース計画の検討
  • 監査役等との定例会議

12月

重点活動

  • 第3四半期監査の完了と報告書作成
    • 監査結果の分析と評価
    • 発見事項と改善提案の取りまとめ
    • 監査報告書の作成と承認
  • 来年度の監査計画策定
    • リスク評価に基づく監査対象の選定
    • 監査テーマと優先順位の決定
    • 監査リソースの配分計画
  • 年末特別点検の実施
    • 年末の資金管理状況の確認
    • 在庫管理・棚卸プロセスの監査
    • 決算準備状況の確認

管理業務

  • 第4四半期および来年度第1四半期監査の準備
  • 内部監査システム・ツールの評価と改善計画
  • 年末の監査部門内レビュー会議

1月

重点活動

  • 第4四半期監査の開始
    • 年度末に向けた重要プロセスの監査
    • 予算管理・執行状況の確認
    • 内部統制の年度末評価準備
  • 来年度監査計画の詳細化
    • 具体的な監査スケジュールの立案
    • 監査手続の見直しと効率化の検討
    • 特別テーマ監査の企画立案
  • J-SOX年度末評価準備
    • 統制不備の是正状況の確認
    • 年度末評価のための準備作業
    • 監査法人との連携強化

管理業務

  • 第3四半期の監査結果報告
  • 監査部門の年間評価準備
  • 外部の監査動向調査とベストプラクティス研究

2月

重点活動

  • 第4四半期監査の本格実施
    • 年度末決算関連プロセスの監査
    • 重要リスク領域の集中レビュー
    • 年間を通じた課題の最終確認
  • 来年度監査計画の承認手続き
    • 監査計画案の経営層への説明
    • 監査役等との協議
    • 計画の最終調整と承認準備
  • 内部統制の有効性評価
    • 年間を通じた内部統制の有効性評価
    • 重要な統制不備の最終確認
    • 内部統制報告書案の作成

管理業務

  • 監査調書のレビューと品質管理
  • 内部監査部門の目標達成状況の評価
  • 監査法人との年度末連携会議

3月(年度末月)

重点活動

  • 年度監査の完了
    • 第4四半期および年間監査の取りまとめ
    • 未解決事項の最終フォローアップ
    • 年間監査成果の総括
  • 年度内部統制評価の最終化
    • J-SOX評価結果の最終化
    • 内部統制報告書の内容確認
    • 経営者による内部統制評価への意見提出
  • 次年度監査準備の完了
    • 来年度監査計画の最終承認取得
    • 監査チーム編成と役割分担の決定
    • 第1四半期監査の事前準備作業

管理業務

  • 内部監査部門の年間評価の実施と次年度目標設定
  • 監査報告書・調書の最終整理と保管
  • 内部監査の品質向上計画の策定

監査サイクルを通じた継続的活動

月次定例活動

  • 監査進捗管理
    • 週次/月次の監査進捗会議
    • 監査スケジュールの調整と管理
    • リソース配分の最適化
  • 監査品質管理
    • 監査調書のレビューと品質確認
    • 監査手法の一貫性確保
    • 発見事項の妥当性検証
  • ステークホルダーとの連携
    • 監査役等との定例会議
    • 監査法人との情報共有
    • 経営層へのタイムリーな報告

四半期定例活動

  • 監査結果の分析と報告
    • 四半期監査結果の傾向分析
    • 共通課題の特定と全社展開の検討
    • 監査役等/取締役会への四半期報告
  • リスク評価の更新
    • 事業環境変化の監視とリスク評価の更新
    • 新たなリスク領域の特定
    • 監査計画の適時見直し
  • 改善フォローアップ
    • 過去の監査指摘事項の改善状況確認
    • 未改善項目の原因分析と対策提案
    • 改善活動の効果測定

大手上場企業の内部監査部マネージャーの 重要任務

大手上場企業の内部監査部マネージャーは、組織のガバナンス、リスク管理、内部統制の有効性を独立した立場から評価・改善する重要な役割を担っています。多岐にわたる責務の中でも、特に重要な3つの任務について詳細に解説します。

 

1.戦略的リスクベース監査計画の策定と実行管理

リスクベースの監査計画策定は、限られた監査リソースを最大限に活用し、組織にとって最も重要なリスク領域に焦点を当てるための基盤となります。この任務を適切に遂行することで、内部監査部門は「形式的な監査」ではなく「経営に真の価値を提供する監査」を実現できます。

リスク評価プロセスの構築と実施

  • 全社的リスク分析
    • 経営戦略、事業計画、過去の監査結果、インシデント履歴などの情報を収集
    • 事業部門・コーポレート部門へのインタビューと調査の実施
    • 外部環境分析(規制変更、業界動向、マクロ経済要因など)の実施
    • リスクの発生可能性と影響度に基づく評価マトリックスの作成
  • リスクの優先順位付け
    • 定量的・定性的手法を組み合わせたリスクスコアリングの実施
    • 経営層の関心事項や監査役等の期待を反映した重み付け
    • 過去の監査カバレッジと監査サイクルを考慮した調整
    • 新興リスク領域(サイバーセキュリティ、ESG、地政学的リスクなど)の特定と評価

年間監査計画の策定

  • 監査テーマの選定
    • 高リスク領域に対応する監査テーマの設計
    • 戦略的重要性に基づく特別監査テーマの設定
    • 法規制要件に基づく必須監査の組み込み
    • マネジメントリクエストの評価と計画への反映
  • リソース配分の最適化
    • 監査テーマごとの必要スキルと工数の見積り
    • チームメンバーのスキルマトリックスと監査テーマのマッチング
    • 外部専門家の活用計画(IT、法務、環境など専門分野)
    • 年間を通じた均衡のとれた監査スケジュールの設計

監査実行の管理

  • 監査プログレスのモニタリング
    • 週次/月次の進捗確認会議の開催
    • KPI(監査完了率、報告期限遵守率など)による管理
    • 課題・障害の早期発見と解決支援
    • リソース配分の動的調整

2.高品質な監査報告と価値ある改善提言の実現

内部監査の最終成果物である監査報告書は、発見した問題点の列挙ではなく、組織の目標達成を支援する洞察と改善提言を含む価値あるものでなければなりません。監査部マネージャーは、「問題点の指摘者」から「ビジネスパートナー」へと役割を進化させることが求められます。

監査報告書の品質管理

  • 報告書の構造化と標準化
    • 経営層の意思決定に資する簡潔で明確な報告形式の確立
    • エグゼクティブサマリーの効果的な作成指導
    • リスクベースの発見事項分類と優先順位付けの徹底
    • 客観的証拠に基づく指摘の確保
  • 重要性評価の精度向上
    • 発見事項の影響度評価の一貫性確保
    • 定量的・定性的影響の総合的評価
    • 発見事項間の関連性分析と根本原因の識別
    • ビジネスコンテキストを考慮した重要度評価

価値ある改善提言の策定

  • 実行可能な改善提案の作成
    • コスト対効果を考慮した現実的な改善案の策定
    • ベストプラクティスと業界標準の活用
    • 短期・中期・長期的アクションの段階的提案
    • 複数の選択肢の提示と比較分析
  • 根本原因分析の深化
    • 表面的な問題現象にとどまらない深層分析の実施
    • システミックな問題の特定と構造的改善の提案
    • プロセス全体を通した上流・下流への影響分析
    • 組織文化・行動様式に関する洞察の提供

ステークホルダーとの効果的なコミュニケーション

  • 報告会の戦略的実施
    • 監査結果の効果的なプレゼンテーション
    • 被監査部門との建設的対話の促進
    • 経営層への重要メッセージの明確な伝達
    • 反論・異議への適切な対応と合意形成
  • フォローアップ体制の確立
    • 改善計画の実効性レビューと支援
    • 改善進捗のモニタリング体制の構築
    • 長期的な改善効果の評価手法の確立
    • 未解決事項のエスカレーションプロセスの運用

3.内部監査機能の高度化と監査チームの能力開発

ビジネス環境やリスク環境の急速な変化に対応するために、内部監査機能自体を継続的に進化させることは、内部監査部マネージャーの重要な戦略的責務です。特に、監査チームの能力開発とテクノロジー活用による監査プロセスの高度化は、持続的な価値提供の基盤となります。

監査チームの能力開発

  • 人材育成戦略の策定と実行
    • 監査スキルマトリックスの整備と定期的評価
    • 職位別・役割別の必要スキル定義と育成計画
    • ローテーションプログラムによる経験の多様化
    • 専門資格取得支援(CIA、CISA、CFEなど)
  • 知識共有とナレッジマネジメント
    • 業界・テーマ別の専門知識グループの形成
    • 監査ナレッジデータベースの構築と活用促進
    • 事例研究セッションと内部勉強会の定期開催
    • 外部イベント・研修参加者による知見共有会
  • 次世代リーダーの育成
    • 将来のリーダー候補の早期識別と計画的育成
    • 重要監査案件のリードロールの機会提供
    • メンタリングとコーチングプログラムの実施
    • 経営層との対話機会の創出

監査プロセスの高度化

  • データアナリティクスの活用
    • 継続的モニタリングシステムの導入と運用
    • 全件分析による異常検知技術の活用
    • 予測分析を活用した先行指標の開発
    • ビジュアル分析ツールによる洞察の可視化
  • 監査手法の革新
    • アジャイル監査手法の導入と実践
    • リモート監査技術の確立とハイブリッド監査の実施
    • プロセスマイニングによる業務プロセス分析
    • 自動化ツールによる定型監査手続きの効率化
  • 品質保証・改善プログラム(QAIP)の運
    • 内部品質評価の定期的実施
    • 外部品質評価の計画的受審
    • 国際内部監査基準への準拠状況の継続的モニタリング
    • 同業他社とのベンチマーキングと先進事例研究

テクノロジー戦略の策定と実行

  • 監査管理システムの最適化
    • ワークフロー管理の効率化
    • 監査調書の電子化と検索性向上
    • リスク評価・監査計画立案の自動化支援
    • 報告書作成・追跡管理機能の強化
  • 最新テクノロジーの評価と導入
    • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用
    • AI・機械学習の監査プロセスへの統合
    • ブロックチェーン技術の監査アプローチ開発
    • クラウドツールとセキュリティ対策の最適化

これら3つの重要任務を効果的に遂行することで、内部監査部マネージャーは組織のガバナンス強化とリスク管理の成熟度向上に貢献するとともに、内部監査部門自体の価値と影響力を高めることができます。特に上場企業においては、資本市場からの信頼確保、コーポレートガバナンス・コードへの対応、ESGやサステナビリティなど新たな要請への対応も含め、これらの任務の重要性はますます高まっています。

大手上場企業の内部監査部マネージャーの 報酬水準

大手上場企業の内部監査部マネージャーの報酬水準は、企業規模、業界、個人の経験・スキルなどによって変動します。複数の情報源から得られたデータに基づき、現在の報酬水準について詳細に解説します。

年収の基本水準

大手上場企業における内部監査部マネージャーの平均年収は、概ね700万円〜1,000万円の範囲にあることが一般的です。特に経験豊富なマネージャークラスでは、800万円〜1,200万円程度の年収が一般的とされています。

具体的なデータとしては、以下の情報が参考になります。

  • 40代の内部監査担当者のオファー年収平均:869万円
  • マネージャークラスの内部監査担当者全体平均:約703万円

業界別の報酬水準

業界によっても内部監査マネージャーの報酬水準に差があります。

  • 金融機関:750万円〜890万円
  • 総合商社:662万円〜820万円
  • 医薬品・医療機器業界:500万円〜900万円
  • メーカー(マネージャークラス):800万円〜1,050万円

特に金融機関や総合商社では、法令順守や内部統制の重要性が高く、内部監査マネージャーに対する報酬も相対的に高水準となる傾向があります。

年齢・経験による違い

内部監査部門のマネージャーは、一般的に相応の経験を積んだ人材が就くポジションであり、年齢層によっても報酬に差があります。

  • 30代後半〜40代前半:700万円〜850万円
  • 40代後半〜50代:800万円〜1,000万円超

内部監査部門は平均年齢が比較的高い(平均47.4歳)傾向があり、その点も全体的な年収水準の高さに反映されています。

報酬構成の特徴

大手上場企業の内部監査部マネージャーの報酬構成は一般的に以下の要素で構成されています:

  • 基本給:総報酬の60〜70%程度
  • 賞与:年2回の支給で基本給の4〜5ヶ月分(業績による変動あり)
  • 各種手当:役職手当、資格手当など
  • 決算賞与・特別賞与:会社業績によって支給される場合あり

内部監査部門は業務の性質上、極端に高い評価や低い評価がつきにくい傾向があり、賞与の変動幅は他の営業部門などと比較すると小さい場合が多いです。

高報酬を得るための要素

内部監査部マネージャーとして高い報酬を獲得するためには、以下の要素が重要です。

  • 専門資格の保有
    • CIA(公認内部監査人)
    • CISA(公認情報システム監査人)
    • CPA(公認会計士)などの資格保有者は優遇される傾向にあります
  • 英語力・グローバル経験
    • 特に外資系企業や海外展開を行う日系企業では、英語力は報酬アップの重要要素
  • 専門性の高い監査経験
    • IT監査、不正調査、ESG監査など専門領域の経験
  • マネジメント経験と実績
    • 監査チームのマネジメント経験と具体的な成果

大手上場企業の内部監査部マネージャーの報酬水準は、一般的に700万円〜1,200万円の範囲にあり、企業規模や業界、個人のスキル・経験により変動します。専門資格の取得、特定分野での深い経験、英語力などによって、より高い報酬を獲得できる可能性があります。内部監査部門は、企業のガバナンス体制における重要な役割を担っており、その責任の大きさから、管理部門の中でも比較的高い報酬水準となっています。今後も法規制の強化やESG要請の高まりにより、有能な内部監査マネージャーの需要と報酬は維持または上昇していく可能性が高いと考えられます。

大手上場企業の内部監査部マネージャーに 向いている人は、どんな人?

■求められるマインド

内部監査部マネージャーは、組織のガバナンス・リスク管理・内部統制の有効性を評価し、改善に貢献する重要な役割を担っています。その職責を効果的に果たすためには、技術的スキルだけでなく、適切なマインドセットが不可欠です。以下に、特に大手上場企業の内部監査部マネージャーに求められる重要なマインドについて解説します。

1.独立性と客観性を守る番人としてのマインド

  • いかなる圧力にも屈せず、客観的事実と証拠に基づいて判断を下す
  • 組織内の人間関係や政治的力学に影響されない自律的思考の維持
  • 「本当にそうか?」という視点を常に持ち、表面的説明に満足しない姿勢

実践的行動

  • 被監査部門との過度な親密関係を避ける意識的な距離感の維持
  • 経営陣からの不適切な影響力行使に対する毅然とした対応
  • 自身のバイアスや先入観を認識し、意識的に排除する自己認識力

2.価値追加者としてのマインド

  • 問題点を指摘するだけでなく、実行可能な改善策を提案する姿勢
  • 組織目標の達成を支援するパートナーとしての自覚
  • すべての監査活動を「組織にどんな価値を提供できるか」という観点で考える

実践的行動

  • 被監査部門の業務目標や課題を深く理解する努力
  • 「何が間違っているか」だけでなく「どうすれば良くなるか」を常に考える思考習慣
  • コスト削減、効率化、リスク低減など、具体的な価値創出につながる提言の重視

3.バランス感覚を持つ調停者としてのマインド

  • 部分最適ではなく組織全体の利益を考える大局観
  • 過度に保守的でも過度に冒険的でもない適切なリスク判断
  • 理想と現実の間で適切な妥協点を見出す柔軟性

実践的行動

  • コンプライアンス遵守と業務効率のバランスを考慮した提言
  • 短期的課題と長期的課題の両方に目配りした優先順位付け
  • 被監査部門の現実的な制約条件(予算、人員、時間など)を考慮した改善提案

4.継続的学習者としてのマインド

  • 新しい知識や視点を積極的に取り入れる姿勢
  • 自分の知識や経験の限界を認識し、常に学び続ける姿勢
  • 新しいリスク領域や監査手法を先取りして学習する先進性

実践的行動

  • 業界動向、規制環境、テクノロジー進化など幅広い分野への関心維持
  • 自己啓発のための時間確保と専門団体・勉強会への積極参加
  • チーム内での知識共有文化の醸成と学習する組織づくり

5.高潔性と倫理的リーダーとしてのマインド

  • どんな状況でも誠実さと倫理観を貫く強い意志
  • 困難な状況でも正しいことを主張する勇気
  • 自ら高い倫理基準を体現することで組織文化に影響を与える自覚

実践的行動

  • 不正や不適切行為の兆候に対する敏感な察知と適切な対応
  • 倫理的ジレンマに直面した際の原則に基づいた判断
  • チームメンバーへの倫理的行動の指導と模範提示

6.戦略的思考者としてのマインド

  • 個別の業務プロセスを組織全体の戦略文脈で捉える能力
  • 現在の問題だけでなく将来の課題やリスクを予見する視点
  • 個別事象ではなく構造的・体系的に問題を捉える思考法

実践的行動

  • 経営戦略や中期経営計画への深い理解に基づいた監査アプローチの設計
  • 新規事業展開、M&A、市場変化など戦略的転換点におけるリスク分析
  • 短期的課題と長期的課題を関連付けた体系的改善提案

7.レジリエントなファシリテーターとしてのマインド

  • 困難な議論や不快な真実との対峙を厭わない精神力
  • 相手の立場や感情を理解し尊重する人間力
  • 批判や反対意見に直面しても前向きに対応できる精神的強靭さ

実践的行動

  • 異なる意見や対立する利害の間での建設的対話の促進
  • 批判的フィードバックを個人攻撃ではなく成長機会として受け止める姿勢
  • ストレス状況下でも冷静さと判断力を維持する自己管理

8.チェンジ・エージェントとしてのマインド

  • 組織変革の触媒としての役割認識
  • 従来の方法や慣習に囚われない革新的発想
  • 長期的な変化を実現するための持続的な取り組み姿勢

実践的行動

  • 「あるべき姿」と「現状」のギャップを明確にし、変革の必要性を説得的に説明
  • 変化への抵抗を理解し、適切に対応するチェンジマネジメント視点
  • 小さな成功事例を積み重ね、モメンタムを作り出す段階的アプローチ

大手上場企業の内部監査部マネージャーに求められるマインドは、「チェックリスト思考」や「問題発見思考」を超え、組織全体の価値創造に貢献する戦略的パートナーとしての姿勢です。独立性と客観性を保ちながらも、ビジネスの成功に貢献するという二重の使命を果たすためには、上記のような多面的なマインドセットを身につけ、日々の実践の中で磨き続けることが不可欠です。

このようなマインドは一朝一夕に身につくものではなく、意識的な自己啓発と経験の積み重ねを通じて徐々に形成されるものです。特に大手上場企業では、ガバナンスの複雑さや多様なステークホルダーの期待に応えるためにも、より高度なマインドセットが求められます。

■必要なスキル

大手上場企業の内部監査部マネージャーは、組織のガバナンス・リスク管理・内部統制の有効性を評価し、改善につなげる重要な役割を担っています。この役割を効果的に果たすためには、多岐にわたる専門的スキルが求められます。以下に、現代の内部監査部マネージャーに必要とされる主要スキルを体系的に解説します。

1.監査技術スキル

リスク評価・分析スキル

  • リスクベース監査手法の熟知: リスクの識別、評価、優先順位付けを行う体系的アプローチの理解と実践能力
  • エンタープライズリスクマネジメント(ERM)の理解: 組織全体のリスク管理フレームワークと連携した監査計画立案能力
  • リスクシナリオ分析能力: 複数のリスク要因の相互関連性を理解し、複合的影響を分析する能力

内部統制評価スキル

  • 内部統制フレームワークの実践的理解: COSO内部統制フレームワークなどの理論と実務への適用能力
  • 統制設計の適切性評価能力: 業務プロセスに組み込まれた統制の設計上の有効性を評価する能力
  • 統制運用の有効性テスト技術: サンプリング手法の適切な選択と実施、例外事項の分析能力

監査証拠収集・分析スキル

  • インタビュー技術: オープンエンド質問、プロービング質問の使い分けと心理的安全性を確保した対話能力
  • 観察・検証技術: 現場観察と文書検証を組み合わせた効果的な証拠収集能力
  • 文書レビュースキル: 膨大な文書から重要情報を効率的に抽出・分析する能力

監査報告書作成スキル

  • 簡潔明瞭な文書作成能力: 複雑な事象を明確に説明する文章構成力
  • 説得力のある論理構成力: 発見事項から結論、推奨事項までの一貫した論理展開能力
  • エグゼクティブサマリー作成能力: 経営層向けの簡潔で要点を押さえた概要作成能力

2.専門領域スキル

財務・会計知識

  • 財務諸表分析能力: 財務諸表の各要素の関連性理解と異常値検出能力
  • 会計基準の理解: IFRS、日本基準等の主要会計基準の理解と会計処理の妥当性評価能力
  • 財務プロセス理解: 予算編成から決算までの一連の財務サイクルの理解

IT監査スキル

  • ITガバナンス評価能力: ITガバナンスフレームワーク(COBIT等)に基づく評価能力
  • サイバーセキュリティリスク評価: 情報セキュリティ脅威と対策の理解、脆弱性評価能力
  • システム開発ライフサイクル理解: システム開発・導入プロジェクトの各段階のリスクと統制理解

法規制対応スキル

  • コンプライアンスフレームワーク理解: 法令遵守体制の構築・運用状況の評価能力
  • 業法規制知識: 業界特有の規制要件の理解と遵守状況評価能力
  • グローバル法規制理解: 域外適用法規(FCPA、UKBA、GDPR等)の要件と影響の理解

ESG監査スキル

  • サステナビリティリスク評価: 環境・社会・ガバナンス関連リスクの識別と評価能力
  • 非財務情報の検証手法: ESG情報開示の信頼性と妥当性の検証技術
  • SDGs・TCFDフレームワーク理解: サステナビリティ報告フレームワークの理解と適用能力

3.データ分析・テクノロジースキル

データアナリティクススキル

  • 大量データ分析技術: 膨大なデータセットから意味ある洞察を導く能力
  • 異常検知手法の活用: 統計的手法を用いた外れ値や異常パターンの検出能力
  • 予測分析の理解と活用: 過去データに基づく将来傾向の予測と監査への応用能力

監査ツール活用スキル

  • 監査管理システム活用能力: TeamMate、MetricStream等の監査管理システムの効果的活用
  • データ可視化ツール操作能力: Tableau、Power BIなどを使った効果的なデータ可視化
  • RPA活用能力: 定型監査作業の自動化設計と実装能力

プログラミング・クエリスキル

  • SQL基礎知識: データベースからの効率的な情報抽出能力
  • スクリプト言語理解: Python、Rなどによる基本的なデータ処理自動化能力
  • APIの理解: システム間連携の仕組みと監査アプローチの理解

サイバーセキュリティ理解

  • サイバー攻撃手法の基本理解: 主要な攻撃手法(フィッシング、マルウェア等)の理解
  • セキュリティコントロールの評価能力: 技術的・運用的・物理的セキュリティ対策の有効性評価
  • インシデント対応プロセス理解: セキュリティインシデント発生時の対応体制評価能力

4.リーダーシップ・マネジメントスキル

チームマネジメントスキル

  • 人材育成能力: チームメンバーの能力開発とキャリア支援能力
  • 業務割当最適化能力: チームメンバーの強みを活かした効果的な業務割当
  • パフォーマンス評価・フィードバック能力: 公正で建設的な評価とフィードバック提供能力

プロジェクトマネジメントスキル

  • 監査プロジェクト計画立案能力: 適切なスコープ設定とリソース配分計画策定能力
  • マイルストーン管理能力: 監査プロジェクトの進捗管理と課題対応能力
  • 複数プロジェクト並行管理能力: 同時進行する複数監査案件の効果的な調整と優先順位付け

品質管理スキル

  • 品質保証レビュー実施能力: 監査調書の品質と完全性の確保能力
  • 国際内部監査基準適合性確保: IIAの国際基準に準拠した監査実施能力
  • 継続的改善推進能力: 監査プロセスの効率と有効性の継続的改善能力

予算・リソース管理スキル

  • 監査予算策定能力: 年間監査計画に基づく適切な予算配分と管理
  • 外部リソース活用判断: コスト対効果を考慮した外部専門家の活用判断
  • リソース最適配分能力: 限られたリソースの中での優先順位付けと配分最適化

5.コミュニケーション・対人関係スキル

経営層コミュニケーションスキル

  • エグゼクティブブリーフィング能力: 経営層に対する簡潔で要点を押さえた報告能力
  • 取締役会・監査委員会対応能力: ガバナンス機関への効果的な情報提供と質疑対応能力
  • 経営視点でのリスクコミュニケーション: 経営戦略との関連付けによるリスク説明能力

被監査部門との関係構築スキル

  • 協力的関係構築能力: 監査の独立性を保ちながらの建設的関係構築能力
  • コンフリクト解決能力: 意見の相違や対立状況の効果的な解消能力
  • 積極的傾聴スキル: 被監査部門の懸念や見解を真摯に理解する姿勢と能力

プレゼンテーションスキル

  • 説得力のある発表能力: 監査結果の効果的な説明と説得能力
  • 視覚資料作成能力: 複雑な情報を視覚的に分かりやすく伝えるスライド作成能力
  • 質疑応答対応能力: 即興での的確な質問対応と追加説明能力

ファシリテーションスキル

  • 会議進行能力: 効果的かつ効率的な会議運営能力
  • 合意形成能力: 多様な意見の中から合意点を見出し、前進させる能力
  • ワークショップ設計・運営能力: リスク評価ワークショップなどの効果的な設計と実施能力

6.戦略的思考・ビジネス理解スキル

ビジネスモデル理解

  • 業界知識: 業界特有の事業構造、競争環境、成功要因の理解
  • バリューチェーン分析能力: 企業の価値創造プロセスと各機能の役割理解
  • 収益構造理解: 企業の収益源と収益性に影響を与える要因の理解

戦略リスク評価能力

  • 経営戦略理解: 中長期経営計画と戦略目標の理解
  • 新規事業リスク評価: 新事業展開、M&A、市場参入などの戦略的判断に伴うリスク評価
  • ディスラプションリスク分析: 技術革新や市場変化による事業中断リスクの評価

業績評価指標理解

  • KPI分析能力: 主要業績評価指標の妥当性と整合性の評価
  • 業績測定システム理解: バランススコアカードなど業績管理システムの理解
  • 非財務指標評価能力: 顧客満足度、従業員エンゲージメントなど非財務指標の理解と評価

グローバルビジネス理解

  • 異文化理解: 多様な文化的背景を持つ組織や人々との効果的な協働能力
  • 地政学的リスク理解: 国際情勢が事業に与える影響の理解と評価
  • グローバルサプライチェーン理解: 国際的な調達・生産・物流ネットワークの理解

7.倫理・職業的専門性スキル

倫理的判断力

  • 倫理的ジレンマ対応能力: 複雑な倫理的課題に対する原則に基づいた判断能力
  • 利益相反認識能力: 潜在的な利益相反状況の識別と適切な対応能力
  • 職業倫理規範遵守: IIAの倫理規範など専門職としての行動規範理解と実践

専門的懐疑心

  • 批判的思考能力: 情報や説明を鵜呑みにせず検証する姿勢と能力
  • 確証バイアス回避能力: 自らの予測や期待に合致する情報のみを重視する傾向の自制
  • 根本原因分析能力: 表面的な症状ではなく本質的な問題原因を掘り下げる能力

継続的自己開発

  • 自己啓発能力: 最新のリスク領域や監査手法についての継続的学習
  • 専門資格の取得・維持: CIA、CISA、CFEなどの専門資格取得と更新
  • 業界団体・専門コミュニティ参加: 監査専門家ネットワークへの積極的参加

守秘義務遵守

  • 機密情報管理能力: 高度な機密情報の適切な取扱いと管理能力
  • 情報共有の適切な判断: 「知る必要性」に基づいた情報共有の判断能力
  • 内部通報対応能力: 通報者保護と適切な調査プロセス管理能力

8.変革推進・イノベーションスキル

変革マネジメント

  • 変革推進能力: 監査結果に基づく組織変革の効果的な促進能力
  • 抵抗管理能力: 変革への抵抗を理解し、適切に対応する能力
  • ステークホルダーマネジメント: 多様な利害関係者の期待と懸念のバランス調整能力

継続的改善推進

  • プロセス改善手法理解: リーン、シックスシグマなどの改善手法の理解と応用
  • ベストプラクティス識別能力: 業界内外の先進事例の収集と適応能力
  • 改善効果測定能力: 改善施策の効果を定量的・定性的に評価

内部監査部マネージャーには、幅広い専門スキルが求められます。具体的には、リスク評価や内部統制評価などの監査技術スキル、財務・IT・法規制対応などの専門領域スキル、データ分析・テクノロジー活用能力が基盤となります。さらに、チームマネジメントやプロジェクト管理などのリーダーシップスキル、経営層とのコミュニケーションや被監査部門との関係構築能力も不可欠です。これらに加え、企業戦略の理解や倫理的判断力、変革を推進するイノベーション能力を備えることで、組織価値の向上に貢献できる真の監査プロフェッショナルとなります。

大手上場企業の内部監査部マネージャーまでの 道のり

内部監査部マネージャーというポジションに至るまでには、いくつかの道筋が考えられます。最もオーソドックスなキャリアパスを逆算して見ていきましょう。

  • 内部監査部の主任・シニアスタッフからの昇進

このポジションでは、複雑な監査プロジェクトをリードし、若手スタッフの指導も行いながら、高度な分析と改善提案ができる能力が求められます。通常5〜10年程度の監査経験を積んだ後、マネージャーへの昇進の機会が訪れるでしょう。

  • コンサルティングファームや監査法人の内部統制アドバイザリー部門からの転職

これらの専門家は、様々な企業の内部統制構築を支援してきた経験があり、その知見を活かして企業の内部監査部門のマネージャーとして採用されるケースが多く見られます。監査法人で3〜5年、さらに内部統制コンサルティングで数年の経験を積んだ後、企業の内部監査部門に転職するというパターンは珍しくありません。

さらに遡ると、内部監査部の主任・シニアスタッフになるまでには、通常3〜5年の内部監査実務経験が必要です。監査プロジェクトの計画立案から実施、報告書作成まで一連のプロセスを経験し、基本的な監査スキルを磨く時期です。

では、内部監査部門に入るためには、どのようなバックグラウンドが有利でしょうか。

  • 会計士や監査法人出身者

財務諸表監査の経験は、内部監査でも大いに活かされます。特に、内部統制監査(J-SOX監査など)の経験があれば、内部監査部門での即戦力となり得るでしょう。

  • 社内の他部門からの異動

財務・経理部門の経験者は会計知識を活かせるため内部監査との親和性が高いですが、IT、営業、生産管理など様々な部門からの異動も珍しくありません。むしろ、多様なバックグラウンドを持つメンバーがいることで、監査チーム全体としての視野が広がるメリットもあります。例えば、製造現場での経験があれば、工場の生産プロセスの監査において、細かい不具合やリスクを見抜くことができるでしょう。

新卒で直接内部監査部門に配属されるケースもありますが、まずは他部門で実務経験を積み、その後内部監査に異動するという道筋の方が一般的かもしれません。実際のビジネスプロセスを経験しておくことで、監査の視点もより実践的なものになります。

若手時代には、どのようなスキルを身につけておくべきでしょうか。まず、財務・会計の基礎知識は不可欠です。日商簿記2級以上の資格取得を目指すとよいでしょう。また、データ分析スキルも重要性を増しています。ExcelのVLOOKUPやピボットテーブルなどの基本機能はもちろん、可能であればSQL、Python、Power BIなどのデータ分析ツールの基礎を学んでおくと、将来的に大きなアドバンテージとなります。

英語力の向上も忘れてはなりません。グローバル企業では、海外拠点の監査や国際的な内部監査基準への対応など、英語を使う場面が増えています。TOEIC800点以上、できれば900点以上を目指すとよいでしょう。

また、特定の業界やビジネスプロセスについての深い理解も強みになります。例えば製造業であれば生産管理や品質管理、金融業であればリスク管理や規制対応など、自社の事業に関連する知識を積極的に習得していくことが大切です。

内部監査マネージャーを目指す過程では、徐々に監査の技術的側面だけでなく、チームマネジメントやステークホルダーとの関係構築など、より広い視点でのスキルも磨いていく必要があります。例えば、部下の育成やモチベーション管理、経営陣への効果的な報告方法などについても学んでいきましょう。

このように、内部監査部マネージャーへの道は一つではありません。自分の強みや興味を活かしながら、着実にスキルと経験を積み重ねていくことが大切です。特に若手のうちは、様々な監査プロジェクトに積極的に参加し、多様なビジネスプロセスとリスクに触れる経験を重ねることで、将来的に価値の高い内部監査のプロフェッショナルへと成長していくことができるでしょう。

大手上場企業の内部監査部マネージャーの キャリアパスの展望

内部監査部マネージャーとして働くことで、ビジネスパーソンとして極めて価値の高いスキルセットを身につけることができます。まず挙げられるのは「リスク感覚」です。様々な業務プロセスに潜むリスクを識別し評価する能力は、どのような職種でも価値を発揮します。プロジェクトの計画段階で潜在的な問題点を予見し、適切な対策を講じることができれば、ビジネスの成功確率は大きく高まります。

また、分析力と問題解決能力も飛躍的に向上します。監査では、膨大なデータや情報から本質的な問題点を抽出し、その根本原因を特定する必要があります。例えば売上が急増した部門があれば、その背景に不適切な販売手法が隠れていないかを見抜く洞察力が求められます。こうした分析的思考は、経営判断や戦略立案においても非常に重要なスキルとなるでしょう。

コミュニケーション能力の向上も見逃せません。内部監査部マネージャーは、監査対象部門からCEOまで、様々なレベルの相手と効果的にコミュニケーションを取る必要があります。時には難しい指摘を行う場面もありますが、相手の立場を理解し、建設的な対話を通じて解決策を見出していく経験は、ビジネスの様々な場面で活きてくるでしょう。

さらに、内部監査の経験を通じて、財務・会計、業務プロセス、IT、法規制など、ビジネスの多様な側面について幅広い知識を獲得できます。この「T字型」のスキルセット—特定分野での深い専門性と幅広い一般知識の組み合わせ—は、将来のキャリアにおいて大きな強みとなります。

内部監査部マネージャーとしてのキャリアは、様々な方向に発展する可能性を秘めています。

  • 内部監査部門内でのキャリアアップ

内部監査部長、最高監査責任者(CAE:Chief Audit Executive)へと昇進し、企業全体の監査戦略を指揮する立場を目指すことができます。

  • 経営企画、財務、コンプライアンス、リスク管理などの専門部門へ異動するケース

内部監査で培ったスキルと経験を活かして、例えば、財務経理部門のマネージャーとして、正確で透明性の高い財務報告体制の構築に貢献したり、コンプライアンス部門の責任者として、全社的なコンプライアンスプログラムを統括したりする道もあります。

  • CFO(最高財務責任者)や経営幹部へのキャリアパス

内部監査の経験者は、企業のリスクとコントロールに精通していることから、上級管理職への適性が高いと評価されることが多いのです。実際に、多くのCFOが内部監査の経験を持っており、その視点とスキルを経営に活かしています。

  • 海外拠点の責任者として赴任するケース(グローバル企業)

内部監査を通じて培った全社的な視点とリスク管理能力は、海外子会社のマネジメントにおいても大いに役立つでしょう。

  • コンサルタントとしての独立や監査法人のアドバイザリー部門への転身

内部監査の専門知識を活かして、様々な企業の内部統制構築や改善を支援するキャリアも魅力的な選択肢と言えるでしょう。

このように、内部監査部マネージャーの経験は、将来のキャリアに幅広い可能性をもたらします。企業のガバナンスと透明性への関心が高まる現代において、内部監査で培ったスキルと経験は、ますます価値を増していくことでしょう。

まとめ

役割と責任

  • 大手上場企業の内部監査部マネージャーは、企業のリスク管理、ガバナンス、内部統制の有効性を独立した立場から評価・改善する重要な役割を担う
  • 年間を通じた体系的な監査活動の計画・実行・評価を通じて、組織の健全な発展と持続的な価値創造に貢献していくことが求められる

求められるマインドやスキル

  • 「チェックリスト思考」や「問題発見思考」を超え、組織全体の価値創造に貢献する戦略的パートナーとして、独立性と客観性を保ちながらも、ビジネスの成功に貢献するマインド
  • リスク評価や内部統制評価などの監査技術スキル、財務・IT・法規制対応などの専門領域スキル、データ分析・テクノロジー活用能力が基盤
  • チームマネジメントやプロジェクト管理などのリーダーシップスキル、経営層とのコミュニケーションや被監査部門との関係構築能力も不可欠

重要な職務

  • 戦略的リスクベース監査計画の策定と実行管理
  • 高品質な監査報告と価値ある改善提言の実現
  • 内部監査機能の高度化と監査チームの能力開発

キャリアパス

  • 事業部門での担当者としての実務経験・内部監査部スタッフ⇒内部監査部主任・シニアスタッフ⇒内部監査部マネージャー
  • コンサルティングファームや監査法人での監査や内部統制のアドバイザリー経験をからの内部監査部への転職も多い
  • 内部監査部長への昇進や、他企業での監査役、コンサルティング会社の起業など多様なキャリアパス