経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
データと直感を武器に、未来を創造する戦略プロフェッショナル
会社の未来図を描く、経営と現場をつなぐ要
800万円~1,500万円
※業績や評価によって変動
30歳~45歳
大手上場企業の経営企画部マネージャーは、企業の未来を左右する重要な戦略立案と実行を担う、経営の中核を支えるポジションです。CEOや役員の判断に沿って、全社を俯瞰する視点から事業戦略を描き、各部門と連携しながら会社全体の成長をリードします。数字とロジックを武器に、時に大胆な判断を下し、時に繊細な調整力を発揮する—そんな知的興奮に満ちた職種です。年収は800万円から1,500万円程度と高水準であり、将来的にはCFOや経営企画部長、さらには執行役員や取締役へのキャリアパスも開かれています。企業の経営戦略を支える活躍をしたい方にとって、この上ないやりがいと成長機会が待っているポジションです。
経営企画部マネージャーは、企業の経営戦略を様々なデータを用いて中長期経営計画を作成し、それが会社全体の進むべき道を示す重要な指針となります。この仕事の醍醐味は、数字合わせではなく、市場分析や競合調査、自社の強み・弱みの評価を通じて、「この会社はどこに向かうべきか」という本質的な問いに答えを出していくプロセスにあります。
ある一日は、朝の事業部門との打ち合わせから始まります。前四半期の業績を分析し、計画と実績のギャップについて議論します。「なぜ計画を達成できなかったのか」「どうすれば軌道修正できるか」—こうした課題に対して、現場の声を聞きながらも、常に全社的な視点を持って解決策を導き出していきます。
午後には、新規事業投資の検討会議が始まります。投資案件の事業計画を精査し、ROIやリスクの分析を行います。「この投資は本当に会社の成長に寄与するのか」「リソースの配分は適切か」といった観点から、鋭い質問を投げかけることが重要です。
また、M&A案件の検討も重要な業務です。候補企業の財務分析はもちろん、シナジー効果の試算、PMI(買収後の統合)計画の策定まで携わります。数百億円規模の判断に関わることもあり、その責任の重さとやりがいは計り知れません。
経営会議や取締役会の事務的な業務も担います。議題の選定から資料作成、議事録の取りまとめまで、会社の意思決定プロセスの中心に位置するのです。「この案件は今決めるべきか」「役員に何を判断してもらいたいのか」を常に意識して、効果的な会議運営をサポートします。
大手上場企業の役職ならではの醍醐味として、IR(投資家向け広報)活動への関与も挙げられます。四半期ごとの決算説明会資料の作成や、投資家からの質問への回答準備など、資本市場とのコミュニケーションも重要な責務です。企業価値を適切に伝え、株価に反映させる—その影響力は非常に大きなものです
経営企画部マネージャーの仕事は、数字だけを追うのではなく、その背後にあるストーリーと戦略を描くことです。業績が思わしくない事業部門には、「もっと頑張れ」と言うのではなく、何が課題なのかを一緒に考え、解決策を見出していく。このような建設的な対話ができるポジションは、他にはないでしょう。
経営企画部という部署は、全社を俯瞰できる特権的な立ち位置にあります。日々の業務を通じて会社全体の動きを把握し、各部門の課題や成功事例に触れることで、ビジネスの本質を学べる場所なのです。この経験は、キャリア形成において計り知れない財産となるでしょう。
経営企画部マネージャーを目指す最大の魅力は、企業経営の中核に身を置き、会社の未来を形作る重要な意思決定に直接関われることでしょう。これはただ会社の一員として関わるのではなく、自身が主体的に戦略を立案し、その実現に向けて全社を動かしていく機会を得られるということです。
このポジションでは、CEOをはじめとする経営トップと近い距離で仕事をする機会に恵まれます。経営陣の思考プロセスや判断基準を間近で学べることは、どんなビジネススクールでも得られない貴重な経験となるでしょう。「なぜこの判断に至ったのか」「どのような価値観や哲学が根底にあるのか」—そういった経営者の思考を肌で感じ取れることは、自身が将来経営者を目指す上で、何物にも代えがたい財産となります。
また、経営企画部は全社横断的な業務に携わるため、自社のビジネスモデルを俯瞰的に理解できます。営業、製造、研究開発、人事、財務など、あらゆる部門と関わりながら仕事を進めることで、会社の全体像を把握し、各部門の相互関係や依存関係を理解できるようになります。この経験は、将来的に経営企画部長やCFOのポジションを目指す上で、極めて重要な礎となるでしょう。
さらに、経営企画部マネージャーの魅力は、その業務の多様性にもあります。朝は新規事業の立案会議、昼は業績分析、午後はM&A検討、夕方は海外子会社とのオンライン会議…という具合に、日々異なる課題に取り組むことができます。この多様性は、問題解決能力や適応力を大きく向上させる機会となるでしょう。
そして何より、経営企画部マネージャーは「変革の推進者」としての役割を担います。新たな経営戦略の立案から実行まで、会社の変革プロセス全体に関わることができるのです。既存事業の再編や、新規事業の立ち上げ、海外展開の推進など、会社の成長ポイントとなる重要なプロジェクトのリーダーとなる機会も多くあります。
大手上場企業の経営企画部で働くことのもう一つの大きな魅力は、その社会的影響力です。マネージャーが関わる意思決定は、数千人、時には数万人の従業員の働き方や、無数の顧客、取引先、地域社会に影響を与えます。「より良い社会づくりに貢献したい」という想いを持つ方にとって、経営企画部マネージャーは理想的なポジションといえるでしょう。
同時に、このポジションは高いプレッシャーと責任を伴います。しかし、そのプレッシャーを乗り越えた先には大きな成長と達成感があります。自分の立案した戦略が実を結び、会社の業績向上や企業価値の増大につながったとき、その喜びはひとしおです。チャレンジングな環境で自分の限界を超えたいという方にとって、経営企画部マネージャーは最適な選択となるでしょう。
経営企画部マネージャーは企業の「頭脳」とも言える部門で、経営陣の意思決定支援から全社戦略の策定・実行管理まで、多岐にわたる業務を担当します。3月決算の大手上場企業を前提とした、経営企画部マネージャーの年間スケジュール例を月別に解説します。
年度始め始動期(第1四半期開始)
株主総会準備・第1四半期モニタリング期
株主総会実施・第1四半期総括期
中期経営計画ローリング準備・第2四半期始動期
中期経営計画検討・夏季戦略議論期
中間総括・下期計画調整期(第2四半期終了)
次年度計画・予算策定準備期(第3四半期開始)
次年度計画立案・中計確定期
年度計画調整・年末総括期
新年始動・第4四半期対策期
年度総括準備・次年度準備期
年度総括・新年度最終準備期
月次定例業務
不定期・随時業務
経営企画部マネージャーの年間を通じた繁忙期は主に以下のタイミングです。
また、四半期決算発表の前後(5月、8月、11月、2月)も報告資料作成や戦略面での説明準備のため繁忙となります。
スケジュールはあくまでも手段であり、目的は企業の持続的成長と価値創造への貢献です。その目的を常に念頭に置きながら、時に予定を柔軟に調整し、真に重要な課題に集中できる判断力を養うことが、経営企画部マネージャーとしての真価を発揮することにつながるでしょう。
経営企画部マネージャーの最も本質的かつ重要な任務は、企業の将来の方向性を示す経営戦略の策定とその推進プロセスをリードすることです。
年度経営計画の策定・管理
経営戦略は企業の進むべき方向を定める羅針盤であり、全ての企業活動の基盤となります。適切な戦略がなければ、どれだけ優れた実行力があっても企業価値の最大化は困難です。経営企画部マネージャーは、この羅針盤を設計・維持し、全社を正しい方向へ導く重責を担っています。
近年のVUCA時代においては、外部環境の変化を素早く察知し、戦略を柔軟に調整する能力がより一層求められています。経営企画部マネージャーはこの戦略的機敏性の中核を担う存在なのです。
経営企画部マネージャーは、CEOをはじめとする経営層の意思決定を支える参謀としての役割と、経営会議や取締役会などの重要会議体の運営を担う事務局長としての役割を果たします。
経営意思決定支援
重要会議体の運営
企業価値を左右する重要な経営判断の質は、その意思決定プロセスの質に大きく依存します。経営企画部マネージャーは、このプロセスの設計者であると同時に管理者でもあり、時に重要な提言者にもなりえます。
また、コーポレートガバナンス・コードの厳格化や投資家の期待の高まりにより、取締役会をはじめとする経営意思決定の透明性・論理性・スピードがより一層求められています。経営企画部マネージャーはこの要請に応え、企業統治の質を高める重要な役割を担っています。
経営企画部マネージャーは、事業部門や機能部門の垣根を越えた全社横断的な変革プロジェクトの推進役として、企業変革の触媒としての役割を担います。
変革プロジェクトの企画・推進
変革管理(チェンジマネジメント)
現代のビジネス環境における不確実性の高まりと変化の加速により、企業は常に自らを変革し続けることを求められています。しかし、組織の慣性や部門間の壁、短期的利益と長期的変革のジレンマなど、変革の実現には多くの障壁が存在します。
経営企画部マネージャーは、経営トップの変革意思を受け、全社視点で変革の方向性を明確化し、部門の壁を越えた実行体制を構築することで、これらの障壁を乗り越える推進力を生み出す役割を担っています。特に近年のDXやサステナビリティ経営への転換など、従来の事業領域や組織構造を超えた変革においては、この役割がより一層重要になっています。
これら3つの重要任務は相互に密接に関連しています。経営戦略の策定で定めた方向性を、意思決定支援と会議体運営を通じて具体化し、全社変革プロジェクトとして実行に移していくという流れです。
経営企画部マネージャーの3大重要任務—「経営戦略の策定と推進」「経営意思決定の支援と会議体運営」「全社横断プロジェクトの推進と変革管理」—は、企業の持続的成長と変革を支える中核的な機能です。
これらの任務は、計画立案や会議運営の技術にとどまらず、企業全体を俯瞰する視点、経営層との信頼関係、多様なステークホルダーとの協働、そして何より変化を恐れず先導する勇気と実行力を必要とします。
大手上場企業の経営企画部マネージャーは、まさに「企業の未来を描き、その実現に向けて組織を動かす」という重責を担うポジションであり、その力量が企業の命運を左右すると言っても過言ではないでしょう。
大手上場企業の経営企画部マネージャー(課長クラス)の報酬水準は、以下のような要素によって変動します。
日本の大手上場企業における経営企画部マネージャー(課長級)の平均的な年収は以下になります。
報酬は以下の要因によって大きく変動します。
一般的な報酬構成は、以下になります。
大手企業では退職金制度や企業年金も充実している場合が多く、総報酬パッケージの一部として考慮されます。
※これらの数値は平均的な目安であり、個別企業の報酬体系や評価制度によって大きく異なります。
経営と現場をつなぐ重要なポジションである経営企画部マネージャーにとって、スキルセットを超えた核心的な価値観として以下が求められます。
SWOT、3C、ファイブフォース等の活用能力
経営企画部マネージャーには、市場・競合分析から中長期戦略策定までを担う戦略構築力と、P/L・B/S・C/Fを深く理解した財務分析力が不可欠です。全社的な視点で部門間の利害調整を行う組織横断力に加えて、複雑な課題を構造化して役員層に簡潔に提案できる高度なコミュニケーション能力も求められます。さらに、全社プロジェクトを推進する実行力、データを活用した意思決定支援能力、変化を先読みするリスク感知力、そしてグローバル環境での戦略立案能力も重要です。これらのスキルを総合的に発揮し、企業価値向上に直結する施策を推進できることが、経営企画部マネージャーに必要なスキルといえます。
経営企画部マネージャーというポジションに至るまでのキャリアパスは一様ではありません。複数の道筋が存在し、それぞれに特徴があります。
まず、経営企画部マネージャーの手前に位置するのは、経営企画部の課長や主任クラスのポジションです。経営企画部内で実績を積み、信頼を獲得していくことで、マネージャーへの昇進が見えてきます。このルートでは、全社戦略の立案や実行管理、投資案件の検討など、経営企画の中核業務を経験しながら、徐々に責任範囲を広げていくことが一般的です。
しかし、実は多くの経営企画部マネージャーは、他部門からの異動組であることも注目すべき点です。特に財務・経理部門からの異動は最も一般的なルートの一つです。財務部門で培った数字を扱う能力や全社的な視点は、経営企画業務と高い親和性を持ちます。予算管理や投資評価の経験が、そのまま経営企画業務に活かせるからです。
営業や事業部門のマネージャーからの異動も珍しくありません。事業の最前線で培った市場感覚や顧客ニーズの理解、現場の実情に関する知見は、実効性のある戦略立案において非常に貴重です。特に「営業で優秀だが、次のステップとしてより広い視野を持った仕事に挑戦させたい」という人材が、経営企画部に異動するケースが見られます。
さらに、コンサルティングファームからの転職組も増えています。戦略コンサルタントとして複数の企業の経営課題に取り組んできた経験は、経営企画業務においても大きな武器となります。フレームワークを用いた分析手法やロジカルな思考プロセスは、経営企画部で高く評価されるスキルです。
公認会計士や銀行出身者も、そのファイナンスと数字に関するスキルを買われて、経営企画部マネージャーとして重宝されます。M&Aや資金調達など、高度な財務戦略が求められる場面では、こうした専門的バックグラウンドが大きな強みとなります。
これらの複線的なキャリアパスを踏まえると、経営企画部マネージャーを目指すための若手時代の理想的なキャリアとしては、以下のようなパターンが考えられます。
これらの会計色の強い部門は、数字に強くなり、全社的な視点を養うには最適な環境です。予算編成や決算業務、資金管理などの実務経験を積むことで、経営の基盤となる財務知識を身につけられます。
顧客やマーケットと直接向き合い、売上や利益に責任を持つ経験は、経営の最前線を理解する上で非常に貴重です。特に新規事業の立ち上げや海外展開などの挑戦的なプロジェクトに関わることができれば、なおさら経営企画部での仕事に活きてくるでしょう。
複数の企業や業界の課題に取り組む中で、分析手法や問題解決アプローチを体系的に学べます。大企業が直面する経営課題に若いうちから触れられることも大きな利点です。
いずれのルートを選ぶにしても、若手のうちに「数字に強くなること」「戦略的思考力を磨くこと」「全体を俯瞰する視点を養うこと」を意識してキャリアを歩むことが重要です。日々の業務でも、与えられた仕事をこなすだけでなく、「なぜこの仕事があるのか」「会社全体にどう貢献しているのか」という視点を持つことで、経営企画マインドを養うことができるでしょう。
経営企画部マネージャーとして働くことで、ビジネスパーソンとして極めて価値の高いスキルセットを身につけることができます。それは知識にとどまらず、実践を通じて磨かれる本物の実力です。
まず、戦略的思考力が大きく向上します。市場分析、競合調査、自社のケイパビリティ評価など、さまざまな要素を総合的に判断して最適な戦略を導き出す能力は、どんな業界・職種でも通用する普遍的なスキルです。特に不確実性の高い現代のビジネス環境において、「先を読む力」の価値は計り知れません。
次に、高度な分析力が身につきます。財務諸表の読み解き方はもちろん、「この数字が意味するビジネス上の含意は何か」を理解する能力、さらには「どのようなアクションを取れば数字が改善するか」という実行力までを身につけられます。エクセルやBIツールを駆使したデータ分析スキルもブラッシュアップされるでしょう。
企画立案から実行までを一貫して担当することで、プロジェクトマネジメントスキルも大きく向上します。限られたリソースの中で、どのように優先順位をつけ、タイムラインを設定し、ステークホルダーを巻き込んでいくか—この実践的なスキルはどんな場面でも役立ちます。
さらに、コミュニケーション能力も飛躍的に高まります。経営陣に対しては複雑な内容を簡潔に伝え、各事業部に対しては戦略の意図を明確に説明し、時には困難な状況でも関係者をひとつの方向に導くための説得力と調整力が求められます。高度なプレゼンテーション技術や文書作成能力も、日々の業務を通じて自然と身につくでしょう。
大手上場企業の経営企画部マネージャーを経験した後のキャリアパスは実に多様です。
経営企画部長、さらには執行役員や取締役として、より高いレベルで経営に携わる道が開けています。特に近年は、経営企画部出身のCEOも珍しくありません。
また、CFOへのキャリアパスも注目されています。経営企画業務を通じて養われた財務感覚と全社的な視点は、CFOに求められる資質と高い親和性があります。経営企画から財務部門へ異動し、財務・経理のスキルを補完した上でCFOを目指すケースも多いでしょう。
経営企画で培った戦略的思考力と全社的な視点を活かし、事業部長やカンパニー社長として実際の事業経営を担うというキャリアパスです。「戦略を立てるだけでなく、自ら実行する側にまわりたい」という方には魅力的な選択肢となるでしょう。
経営企画での実務経験は、戦略コンサルタントとしての説得力を大きく高めます。「理論だけでなく実践を知っている」コンサルタントとして、より高い価値を提供できるでしょう。
大企業で培った戦略立案能力や制度構築のノウハウは、成長段階のベンチャー企業にとって貴重な資産となります。