経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
経営と財務の架け橋として企業の未来を守る
数十兆円規模の資金を操る権力者
2,000万円~1億円以上
※業績や評価によって変動
50歳~60歳
大手上場企業の財務担当取締役とは、企業の資金という血液を全身に巡らせ、投資という酸素を取り込み、無駄という毒素を排出する、まさに企業の心臓部を担う存在です。数百億、時には数兆円規模の資金を動かす決断を日々行い、その一つひとつの判断が何千人もの従業員の生活や、数万人の株主の資産に直結しています。資本市場と向き合い、時に厳しい投資家からの問いかけに筋の通った回答で企業価値を守り高める—それが財務担当取締役という、経営の最高峰の一角を占める職種なのです。この記事では、企業経営の中枢で静かに、しかし絶大な影響力を持って活躍する財務担当取締役の世界をご紹介します。
財務担当取締役の仕事は、企業の”生命線”である資金の流れを最適化し、企業価値を高める最高責任者であることです。財務担当役員として、CFO(最高財務責任者)を兼任していることも多く、株主や市場に対して会社の財務状況を説明する「顔」となります。
例えば、朝一番で目を通すのは、世界中の金融市場の動きです。円ドル為替や金利動向が自社の財務にどう影響するかを瞬時に分析します。「今朝の円高進行を受けて、来年の利益計画は20億円ほど下振れリスクが出てきました」—こうした判断を、直感と経験で瞬時に行えることが求められます。
その後は執行役員会議。「北米事業への3,000億円の投資案件の資金調達について」というアジェンダで、複数の調達手段を提案します。社債発行?銀行借入?自己資金?それぞれのコストと効果をシミュレーションした資料をもとに議論が展開されます。「金利上昇トレンドを考えると、今後5年は変動金利での調達リスクが高い。固定金利でのハイブリッド債を検討すべきではないか」—その一言で、数十億円のコスト削減につながる可能性があります。
午後には大手機関投資家との面談。彼らは冷静に「御社の投資計画は資本コストを上回るリターンを本当に生み出せるのか」と鋭い質問を投げかけてきます。ここで、中長期的な企業価値向上のストーリーを語る必要があります。企業の収益性、安全性、成長性を結びつけた説得力ある説明が求められるのです。
さらに、為替変動リスクに対しては、先物予約を活用した適切なヘッジ戦略を策定します。「今期の欧州輸出取引の70%について、現在のレートで為替予約を行うことで、為替変動による利益変動を5%以内に抑える計画です」といった具体的な数値目標を示し、経営の安定性を確保します。
深夜、帰宅前の最後の仕事として、格付け機関からの質問状への回答を確認。「当社の有利子負債比率が昨年比2%上昇した理由と、今後の削減計画」について的確に答える必要があります。格付けが一段階下がれば、年間数億円の追加金利負担につながるためです。
このように、財務担当取締役の仕事は、日々の資金繰りから中長期的な財務戦略、そして市場とのコミュニケーションまで、幅広く、かつ経営の根幹に関わる重要な判断の連続なのです。それは、数字を通して企業の未来を描き、実現する創造的な仕事と言えるでしょう。
財務担当取締役を目指す最大の理由は、経営の中枢で企業の命運を左右する意思決定に参画できる醍醐味にあります。一般的な財務部スタッフが会計処理や資金管理という「オペレーション」を担当するのに対し、財務担当取締役は「企業はどこに投資し、どこから資金を調達し、どのようにリスクを管理するか」という戦略的判断を行います。それは企業の未来を形作る創造的な仕事なのです。
例えば、判断一つで、数千億円規模のM&Aが実現することもあります。「この買収は我々の資本コストを上回るシナジーを生み出せるか」「買収資金の調達方法は株主価値を毀損しないか」—こうした高度な経営判断を通じて、企業を成長させる喜びは何物にも代えがたいものです。
また、財務担当取締役は企業の「守護者」としての側面も持ちます。2008年のリーマンショックのような金融危機時、多くの優良企業が資金繰りに窮して倒産しました。しかし、先見性を持った財務担当取締役がいた企業では、十分な手元流動性を確保し、危機を乗り越えるだけでなく、弱った競合を買収するなどの攻めの経営も可能にしました。危機に際して従業員の雇用と企業の未来を守る—これほど社会的意義の大きい仕事はないでしょう。
さらに、財務担当取締役は社内で最も「市場」に近い存在です。毎四半期の決算発表や投資家との対話を通じて、企業価値を正しく伝え、適正な評価を獲得する役割を担います。時に厳しい質問を投げかける投資家との知的格闘は、自分自身の成長にも大きく寄与します。
他のキャリアとの大きな違いは、財務の視点から企業全体を俯瞰できる点にあります。営業部門役員が売上拡大、製造部門役員が品質向上と効率化という部分最適に専念するのに対し、財務担当取締役は「全体最適」の視点で意思決定を行います。例えば、ある事業への投資判断において、利益率だけでなく、資本効率、リスク、株主還元のバランスを考慮した上で決断を下すのです。
また、事業部門の取締役が自部門の利益を主張することが多い中、財務担当取締役は株主の視点に立って、時に「投資を抑制し、配当や自社株買いで株主還元すべき」という判断を示すこともあります。このように、多様な利害関係者のバランスを取りながら、企業価値の最大化を図るという高度なミッションは、財務担当取締役ならではのやりがいなのです。
大手上場企業の財務担当取締役は、企業の財務戦略立案から資金調達、IR活動、決算業務の監督まで幅広い責務を担っています。以下に、多くの日本の大手上場企業における財務担当取締役の年間スケジュール例を月別に示します。なお、3月決算企業を例として記載しています。
決算関連
経営・計画関連
IR・開示関連
その他
決算関連
税務関連
IR・開示関連
その他
株主総会関連
決算関連
資金調達関連
その他
決算関連
IR・開示関連
経営管理関連
その他
決算関連
IR・開示関連
資金調達関連
経営管理関連
決算関連
経営・計画関連
税務関連
その他
決算関連
IR・開示関連
経営管理関連
その他
決算関連
IR・開示関連
経営・計画関連
資金調達関連
決算関連
経営・計画関連
税務関連
その他
決算関連
IR・開示関連
経営・計画関連
その他
決算関連
経営・計画関連
IR・開示関連
その他
決算関連
経営・計画関連
資金調達関連
その他
週次・月次
四半期ごと
半期ごと
大手上場企業の財務担当取締役は、決算関連業務、予算管理、資金調達、IR活動、税務戦略など多岐にわたる責務を担っています。特に四半期ごとの決算発表を中心としたサイクルと、年度予算策定から実行、評価までの年間サイクルが主要な業務スケジュールとなります。
近年では、従来の財務管理に加え、ESG/サステナビリティ関連の財務情報開示や、デジタルトランスフォーメーションにおける投資判断など、財務担当取締役の役割はさらに拡大・複雑化しています。また、株主・投資家との対話やエンゲージメント活動の重要性も高まり、IR活動に費やす時間も増加傾向にあります。
これらの複合的な責務をバランスよく遂行するために、財務担当取締役には高度な専門知識と経営センス、さらにはタイムマネジメント能力が求められています。
財務担当取締役の最も根幹的な任務は、企業の中長期的な成長と安定を実現するための財務戦略を策定し、実行することです。これは資金調達計画ではなく、企業の事業戦略全体を支える資本政策の設計といえます。
財務戦略は企業の持続的成長のエンジンとなります。適切な財務戦略がなければ、優れた事業戦略も資金不足や財務リスクによって頓挫する可能性があります。特に近年は低金利環境の変化やグローバルな資本市場の変動性増大により、財務戦略の巧拙が企業価値に直結するようになっています。
財務担当取締役はCEOのパートナーとして、「どの事業にどれだけの資源を配分するか」という経営の根幹に関わる意思決定に深く関与し、財務的視点から企業の舵取りを担います。
企業が直面する多様なリスクを財務的視点から包括的に管理し、健全なコーポレートガバナンスを支えることは、財務担当取締役の重要任務です。特に上場企業では、株主・投資家からの信頼確保のために、透明性の高い財務リスク管理体制の構築が求められます。
東芝やオリンパスの不正会計事件、カルロス・ゴーン元日産会長の報酬問題など、財務ガバナンスの失敗は企業価値を一夜にして毀損する可能性があります。また、近年のコーポレートガバナンス・コード改訂やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)対応など、財務・非財務両面でのリスク管理と開示要請は強まる一方です。
財務担当取締役は「守りの要」として、企業の持続可能性を財務面から担保する最終責任者であり、その役割の重要性は年々高まっています。
上場企業の財務担当取締役は、株主・投資家をはじめとする資本市場参加者との対話の最前線に立ち、企業価値を適正に評価してもらうための戦略的なコミュニケーションを主導します。これはIR活動にとどまらず、企業の中長期的価値創造ストーリーを伝える包括的な役割です。
日本企業の株価PBR(株価純資産倍率)の低迷が長期課題となる中、企業価値を適切に評価してもらうためのコミュニケーション能力は、財務担当取締役の重要なスキルセットになっています。また、2022年のプライム市場移行後、対話の質向上への期待はさらに高まっています。
株式持ち合いの解消や海外投資家比率の上昇により、日本企業も資本市場の厳しい評価にさらされるようになりました。財務担当取締役は企業の「顔」として投資家と向き合い、企業価値の適正評価を獲得するための戦略的コミュニケーションを担います。近年ではCFOがIR責任者を兼務するケースも増加しており、この任務の重要性は高まる一方です。
上記3つの任務は相互に関連しながら、企業の持続的な価値創造を支える基盤となります。例えば、優れた財務戦略も投資家に適切に伝わらなければ株価に反映されませんし、リスク管理の取り組みも戦略的に開示されて初めて企業価値向上に寄与します。現代の財務担当取締役には、財務の専門知識だけでなく、広範な経営視点と優れたコミュニケーション能力が求められています。
大手上場企業の財務担当取締役の報酬水準については、業種、企業規模、業績、個人の経験・スキルなどによって大きく変動します。日本企業の役員報酬に関する最新のデータに基づいて、現在の一般的な報酬水準の概要をお伝えします。
日本の大手上場企業(日経225社など)における取締役報酬は、主に以下の3要素で構成されています
日本の大手上場企業(時価総額1兆円以上)のCFOの年間報酬総額は、一般的に以下の範囲に分布しています
ただし、これはあくまで一般的な範囲であり、外資系企業や特定の業界(金融、IT、製薬など)では、これを大きく上回る報酬水準が設定されているケースもあります。
企業規模によっても報酬水準は大きく異なります
業績連動報酬の拡大
日本企業では近年、ガバナンス改革の一環として業績連動報酬の比率が高まる傾向にあります
ESG関連指標の導入
最新のトレンドとして、役員報酬の業績評価指標にESG(環境・社会・ガバナンス)関連の指標を導入する企業が増加しています
財務・経理の専門性の高さや、以下のような特別なスキル・経験を持つ財務担当取締役は、より高い報酬水準となる傾向があります
近年、日本企業における財務担当取締役の役割と責任範囲は拡大し、それに応じて報酬水準も徐々に上昇しています。今後も、グローバル競争力強化の観点から、業績に連動した変動報酬の拡大と報酬水準の向上が進むと予想されます。
大手上場企業の財務担当取締役には、高度な専門知識やスキルだけでなく、経営幹部として組織を導き、企業価値を創造していくための特有のマインドセットが求められます。以下に、現代の優れたCFOが持つべき核心的なマインドを体系的に整理します。
経営者目線での思考
CEOの真のパートナーとしての自覚
戦略的洞察力
先見性と変化への感度
イノベーションの推進者としての意識
成長マインドセット
守りと攻めのバランス
短期と長期の視点統合
数値と人間の融合的理解
揺るぎない倫理的コンパス
透明性への強いコミットメント
説明責任の全うへの覚悟
危機下での平常心
粘り強さと回復力
不確実性の受容
組織内外での信頼構築
共感的コミュニケーション
巻き込み力と説得力
知の限界の自覚
フィードバックへの開放性
終わりなき成長への意欲
次世代への責任感
社会的インパクトへの関心
多様性と包摂性の尊重
現代の大手上場企業の財務担当取締役には、上記の多様なマインドを状況に応じて使い分け、統合する能力が求められます。
「守護者兼建築家」のマインド
「翻訳者兼物語作家」のマインド
「探検家兼航海士」のマインド
これらの統合的マインドセットを持つ財務担当取締役は、財務数値を管理するだけではなく、企業の持続的成長と社会的価値創造に本質的な貢献をすることができます。そして、こうしたマインドは日々の選択と行動を通じて培われ、組織文化として根付いていくものです。
大手上場企業の財務担当取締役には、複雑化するビジネス環境と拡大する責任範囲に対応するため、多岐にわたる専門スキルと経営能力が求められます。以下に、現代の財務担当取締役に不可欠なスキルを体系的に整理します。
高度な会計知識
財務分析・管理
資金調達・財務戦略
戦略的思考力
投資評価・意思決定
M&A・事業再編
財務リスク管理
全社的リスク管理
内部統制・コンプライアンス
デジタルトランスフォーメーション
データ分析・活用
テクノロジー戦略
組織統率力
人材開発・育成
変革マネジメント
取締役会・経営会議での影響力
IR・投資家対応
社内コミュニケーション
ESG財務統合
非財務情報管理
持続可能なビジネスモデル構築
グローバル財務統括
国際税務戦略
クロスボーダー取引管理
戦略的洞察力
経営判断力
危機対応力
倫理的リーダーシップ
説明責任遂行
ガバナンス構築
現代の大手上場企業の財務担当取締役には、上記の専門スキルを統合し、以下のような総合的な能力を発揮することが求められています。
これらの能力を備えた財務担当取締役は、企業の持続的成長と社会的価値創造の中核を担う戦略的リーダーとして機能します。近年のビジネス環境の複雑化に伴い、財務担当取締役の役割と求められるスキルは今後も進化し続けるでしょう。
財務担当取締役という企業経営の頂点に立つポジションに至るまでのキャリアパスは、一本道ではなく複数の経路が存在します。この旅路を逆算して見ていきましょう。
まず、財務担当取締役の直前のポジションとしては、経理本部長や財務本部長があります。多くの企業では、執行役員として財務・経理部門を統括する立場で実績を積んだ後、取締役会メンバーに選任されるというステップを踏みます。また、経営企画部門のトップから財務担当取締役になるケースもあります。経営企画は全社戦略と予算管理を担当するため、財務との親和性が高いからです。※財務担当取締役とCFOについて、役割が一部重複している場合や、明確に分けられている場合、両者が1つのポジションになっている場合など各企業において様々です。
その手前には、財務部長や経理部長といった部門長のポジションが考えられます。一般的には40代でこれらの役職に就き、部門マネジメントの経験を積みます。ここでは、専門知識だけでなく、部門を率いるリーダーシップやボードメンバーとの円滑なコミュニケーション能力が問われます。
さらにその前段階としては、資金調達、IR、財務戦略、経理などの各セクションのマネージャークラスがあります。30代半ばから後半にかけて、これらの専門分野でチームリーダーを務め、高度な専門性と管理能力を示すことが重要です。例えば、国内外での資金調達プロジェクトをリードしたり、M&A案件の財務DDを担当したりする経験が評価されます。
20代後半から30代前半は、財務・経理部門の中堅社員として、決算業務、資金管理、予算策定、税務などの実務経験を積む時期です。この段階で、会計知識や財務分析のスキルを着実に身につけ、上司や関連部署からの信頼を獲得することが大切です。
そして、キャリアのスタート地点である20代前半は、財務・経理部門の若手社員として基礎を学ぶ時期です。会計処理の基本ルールや社内システムの理解、基礎的な財務分析手法などを習得します。
しかし、財務担当取締役に至るキャリアは社内一直線とは限りません。実際には、複数の企業を経験するキャリアパスも珍しくありません。例えば、監査法人で公認会計士として経験を積んだ後、事業会社の経理部門に転職し、その後CFOや財務担当取締役に登用されるケースは少なくありません。監査経験により培われた会計の専門知識と厳格な姿勢が評価されるからです。
また、コンサルティングファームや投資銀行でM&Aや企業再生の実績を積み、クライアント企業に請われて財務責任者として転職するケースもあります。外部の知見を取り入れたい企業にとって、こうした経験者は貴重な人材となります。
さらに、事業会社でのキャリアにおいても、財務部門一筋ではなく、事業部門や海外子会社、経営企画など様々な部門を経験した「多機能型人材」が財務担当取締役に選ばれることも増えています。財務の専門性だけでなく、事業の現場感覚や全体最適の視点を持つことが評価されるのです。
若手時代に財務担当取締役を目指すなら、以下の経験を意識的に積むことをお勧めします。
まず、会計・財務の専門知識を体系的に習得することです。公認会計士や税理士の資格取得、または会計大学院やMBAでの学習が有効です。特に、国際会計基準やグローバル税務など、国際的な知識を身につけることが将来の差別化要因になります。
次に、経営感覚を養うために財務数字の分析だけでなく、その背景にある事業の実態や市場環境の理解を深めることです。財務部門内でも、単純な経理処理より戦略的な業務(事業評価やM&A)に関わる機会を求めましょう。
さらに、語学力とグローバルな視野を養うことも重要です。海外駐在や国際プロジェクトへの参画は、将来のグローバル経営に不可欠な素養を培います。
最後に、人的ネットワークの構築も欠かせません。社内の事業部門や他部門との良好な関係は、財務部門が「数字だけを見る部署」ではなく「ビジネスパートナー」として機能するために不可欠です。
これらの経験を積み重ね、専門性と広い視野を兼ね備えることで、財務担当取締役という経営の頂点に到達する道が開けるでしょう。一見遠い目標に思えるかもしれませんが、一歩一歩着実に積み上げていくことで、必ず到達できる道なのです。
財務担当取締役のポジションに就くことで、ビジネスパーソンとして最高峰のスキルセットを獲得することができます。これらのスキルは、その後のキャリアにおいても極めて価値の高い武器となります。
まず第一に、「数字で経営を語る力」が磨かれます。財務担当取締役は、複雑な会計数値の背後にある事業の実態を瞬時に把握し、将来への示唆を引き出す能力を持っています。例えば、セグメント別の資本効率や顧客単価の変化から、事業モデルの持続可能性を分析する力は、どんな経営判断においても不可欠なスキルです。
次に、「リスクマネジメント能力」が極限まで鍛えられます。為替や金利の変動から地政学リスク、サプライチェーンの途絶リスクまで、企業を取り巻く様々な不確実性を定量化し、対策を講じる能力は、ますます不確実性が高まる現代ビジネスにおいて最も重要なスキルの一つです。
また、「資本市場との対話力」も特筆すべきスキルです。投資家や証券アナリストとの建設的な対話を通じて、企業の成長ストーリーを説得力をもって伝え、資本市場からの信頼を勝ち取る力は、どんなコミュニケーションの場でも強みとなります。IRとして行う四半期ごとの決算説明会や、アナリストとの個別面談などは、プレゼンテーション能力と質疑応答力を鍛える最高の機会です。
さらに、「グローバルな財務マネジメント」の経験も貴重です。国際的な資金調達や海外M&A、グローバル税務戦略など、国境を越えた財務活動を指揮することで、ビジネスのグローバル化に不可欠な知見とネットワークを構築できます。
キャリア展望としては、財務担当取締役はまさに経営者としてのキャリアの絶頂期を迎えている立場であり、その先には複数のキャリアパスが開けています。
実際、世界的に見ても、CFOからCEOに昇進する例は増加傾向にあります。数字に強く、リスク感覚に優れた経営者の価値が高まっているからです。
他社からヘッドハンティングされて、より大きな企業のCFOや社長に就任するケースも珍しくありません。財務の専門性と経営者としての実績を兼ね備えた人材は、どの企業にとっても貴重だからです。
経営者としての実践経験と財務の専門性を活かして、複数の企業の価値向上に貢献する道も開かれています。
他社の社外取締役や監査役として招かれることも多く、複数の上場企業のガバナンスに参画することで、さらに視野を広げ、社会貢献することも可能です。
このように、財務担当取締役というポジションで培ったスキルと経験は、その後のキャリアにおいても極めて価値が高く、様々な選択肢を生み出す源泉となるのです。