経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上の「戦略的設計者」かつ「変革の推進者」
トップマネジメントとして組織の未来を創造する
2,000万円~1億円以上
※業績や評価によって変動
50歳~60歳
大手上場企業の経営企画担当取締役とは、企業の羅針盤を握る戦略家であり、組織全体の進むべき道を示す最高レベルの戦略立案者です。この職種は、企業のビジョンを実現可能な計画へと変換し、会社の成長と価値創造を主導する重要な役割を担っています。市場を読み解く洞察力と数字を使いこなす分析力、そして組織全体を動かすリーダーシップが求められるポジションです。報酬面でも経営陣の一角を占めるにふさわしい待遇が用意されており、キャリアの集大成として目指すことのできる、企業経営の中核を担う魅力的な職種です。
経営企画担当取締役の仕事は、企業の「頭脳」として機能し、企業にとって最も重要な「次の一手」を決めるチェスプレイヤーのような役割なのです。
具体的には、全社的な経営戦略の策定と実行の監督が主要な任務となります。市場環境や競合他社の分析、自社の強みと弱みの評価を通じて、3年、5年、時には10年先を見据えた中長期経営計画を立案します。この過程では、各事業部門や子会社からの情報を統合し、全体最適の視点で会社の進むべき方向性を示すことが求められます。
例えば、ある大手製造業の経営企画担当取締役は、「5年後までに炭素排出量実質ゼロ」という目標を達成するための全社戦略を立案し、各事業部門の投資計画や事業ポートフォリオの見直しを主導します。また、業界再編の波を見据えたM&A戦略を立案し、経営陣に対して複数の有望な買収候補先を提示することもあります。
日常業務としては、社長や会長、CEOと緊密に連携し、取締役会に提出する重要な経営課題に関する報告書やプレゼンテーションの準備を行います。「この投資は行うべきか」「この事業は売却すべきか」「海外展開のタイミングはいつか」—こうした経営上の重大な意思決定に必要な情報と分析を提供するのです。
また、定期的に開催される取締役会やIR(投資家向け広報)活動の準備と実施にも深く関与します。投資家に対して会社の戦略や展望を説明し、株主価値を高めるための活動も重要な役割です。大型の資金調達や設備投資の意思決定においても中心的な役割を果たし、時には数百億円規模のプロジェクトの是非を判断する責任を担うこともあります。
さらに、経営企画担当取締役は組織横断的なプロジェクトを主導する立場でもあります。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進やサステナビリティ戦略の統括など、従来の部門の枠を超えた全社的な変革を牽引することが期待されています。
このように、経営企画担当取締役は計画立案者としての役割に加え、企業の未来を形作る戦略家であり、時には変革の旗手として全社を導く存在なのです。その決断と行動が、数万人の従業員の働き方や、数兆円の企業価値に直結する—そんなダイナミックかつ責任重大な職種だと言えるでしょう。
経営企画担当取締役という職種を目指す最大の理由は、企業の未来を創造する醍醐味を味わえることでしょう。描いた戦略と青写真が、数万人の従業員と数千億円以上の企業活動を動かし、社会に大きなインパクトを与える—こうした経験は、将来CEOを目指す上でも、あるいは社外取締役や経営コンサルタントとして活躍する上でも他のキャリアでは得難いものです。
経営企画担当取締役は、企業の戦略に対する舵取りを担う「頭脳」であると同時に「実行者」でもあります。CEOや社長が描く大きなビジョンを、緻密な戦略と実行計画に落とし込み、全社を巻き込んで実現に導くのです。
例えば、ある自動車メーカーの経営企画担当取締役は、「5年後までに全車種の電動化を実現する」という壮大なビジョンを、各事業部門や工場、研究所が実行可能な具体的な計画へと変換し、会社全体の変革を推進しました。
また、経営企画担当取締役は企業の「知の結節点」としての役割も担っています。営業、製造、研究開発、財務、人事など、あらゆる部門から情報が集まり、異なる視点や知見が交差する場に身を置くことで、企業のビジネスの全体像を俯瞰する能力が養われます。この職種で得られる経験は、将来CEOを目指す上でも、あるいは社外取締役や経営コンサルタントとして活躍する上でも、かけがえのない財産となるでしょう。
さらに、経営企画担当取締役は、企業が直面する最も重要な経営課題に取り組む機会に恵まれます。デジタル革命への対応、サステナビリティへの取り組み、グローバル競争の激化—こうした時代の大きな変化に対して、企業はどう舵を切るべきか。その答えを探し、実行する役割を担えることは、知的好奇心の強い人にとって大きな魅力です。
報酬面においても、経営企画担当取締役は企業のトップマネジメントの一角を占める立場として、高い水準の報酬が期待できます。基本報酬に加えて業績連動報酬やストックオプションなどのインセンティブ制度も適用され、企業価値向上に直接貢献することで自らの経済的価値も高めることができます。
何より、経営企画担当取締役は「企業の未来を描く」という創造的な仕事に従事できることが最大の魅力です。市場の変化を読み解き、競合の動向を分析し、自社の強みを活かした独自のストーリーを紡ぎだす—その知的挑戦は、ビジネスの醍醐味を極限まで味わえるものと言えるでしょう。
他のキャリアと異なり、経営企画担当取締役は企業の中枢で意思決定に関わる特権的な立場にあります。その決断と実行力が企業の未来を左右する—そんなやりがいと責任を求める方にとって、この上ない選択肢となるはずです。
大手上場企業の経営企画担当取締役は、企業の戦略立案から実行監視、投資家対応まで多岐にわたる役割を担っています。以下では、3月決算企業の年間スケジュール例を月別に整理します。
新年度スタート準備
前年度振り返り
ガバナンス関連
決算関連業務
株主総会準備
中期経営計画関連
株主総会対応
統合報告書・サステナビリティ報告
第1四半期モニタリング
第1四半期決算
事業戦略レビュー
組織・人材関連
全社横断施策の推進
次年度計画に向けた準備
夏季集中討議
半期振り返り・修正
中長期投資検討
リスク管理
第2四半期決算
次年度計画策定準備
取締役会関連
次年度予算編成
第3四半期モニタリング
株主・投資家関連
第3四半期決算準備
次年度経営計画の具体化
年末総括
年度末対応準備
次年度計画の最終調整
中期経営計画の見直し
第3四半期決算対応
次年度計画の確定
株主総会準備開始
年度締め関連
組織人事関連
次年度準備の総仕上げ
定例会議体の運営
投資家・アナリスト対応
戦略的プロジェクト推進
対外関係・社外活動
危機管理・緊急対応
経営企画担当取締役は、企業の「戦略的羅針盤」として、絶えず変化する環境の中で企業の持続的成長と価値向上に貢献する重要な役割を担っています。その年間スケジュールは計画的でありながらも、常に変化に対応できる柔軟性を備えたものであることが求められます。
経営企画担当取締役の最も本質的かつ重要な任務は、企業の「行き先」と「道筋」を示す中長期経営戦略の策定をリードし、その実行を確実にモニタリングすることです。
重要性の根拠
上場企業として、企業価値を正しく理解・評価してもらうための投資家・アナリストとの戦略的対話を主導し、企業と資本市場の間の「翻訳者」としての役割を果たすことが求められます。
重要性の根拠
激変する事業環境に適応し続けるため、企業の競争力と持続可能性を高める全社的な変革プログラムを構想・推進することが、経営企画担当取締役の重要な任務です。
重要性の根拠
これら3つの任務の相互関係
これら3つの重要任務は相互に密接に関連しています。
経営企画担当取締役は、これら3つの重要な任務を通じて、企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上の「戦略的設計者」かつ「変革の推進者」としての役割を果たしています。
大手上場企業の経営企画担当取締役の報酬水準について、公開情報から得られる一般的な傾向をご説明します。なお、個々の企業の規模、業種、収益性、そして役員の経験・実績によって報酬は大きく異なります。
典型的な取締役報酬は、以下の3つの要素で構成されています。
報酬水準の目安
大手上場企業(日経225クラス)の経営企画担当取締役の年間報酬総額の一般的な範囲は以下の通りです。
報酬総額の目安
HRガバナンス・リーダーズ株式会社の「日経225社(2024年6月末時点)役員報酬調査」によると、日経225社の取締役の報酬構成比率は平均して以下のようになっています。
つまり、変動報酬(STIとLTIの合計)が総報酬の54%を占めており、業績連動型の報酬構成が強まっていることがわかります。
業績連動部分(STI+LTI)が報酬の50%以上を占める場合、業績の良し悪しによって報酬総額が大きく変動します。
特に中長期インセンティブは株価連動型の場合が多く、株価の変動によって実質的な報酬額が大きく変わることがあります。
HRガバナンス・リーダーズ株式会社の調査によると、最近の役員報酬に関する傾向として以下のような特徴が見られます。
大手上場企業の経営企画担当取締役の年間報酬総額は、企業規模や業績によって異なりますが、総じて約5,000万円〜1億5,000万円の範囲にあることが多いようです。報酬の構成は固定報酬46%、短期インセンティブ29%、中長期インセンティブ26%が平均的な姿となっています。
企業の持続的成長と中長期的な企業価値向上に直結する経営企画担当取締役の役割の重要性から、今後も業績連動型報酬の比率拡大や、戦略目標の達成度を評価する指標の精緻化が進むと予想されます。
経営企画担当取締役は企業の戦略的羅針盤として機能する重要なポジションです。この役割を効果的に果たすためには、スキルや経験だけでなく、特有のマインドセットが不可欠です。以下、大手上場企業の経営企画担当取締役に求められるマインドについて解説します。
部分最適ではなく全体最適を追求する姿勢
長期的視座の保持
利害調整者としての公平性
変化への感度と洞察力
仮説思考と検証マインド
常識への挑戦
現状への健全な危機感
高い当事者意識
抵抗を乗り越える決意
計画修正を厭わない姿勢
失敗から学ぶ謙虚さ
多様な選択肢を持つ発想
傾聴と共感の姿勢
明確なビジョン共有
信頼構築への献身
資本市場の論理理解
株主との建設的対話姿勢
透明性へのコミットメント
社会的責任の内在化
次世代への責任感
レガシーへの意識
上記7つのマインドは個別に存在するものではなく、経営企画担当取締役の思考と行動の中で有機的に統合されるべきものです。これらのマインドは相互に補完し合い、時には緊張関係を持ちながら、バランスの取れた経営判断を支えます。
経営企画担当取締役は、自社の「現在地」と「あるべき姿」を常に明確に認識し、その間のギャップを埋めるための戦略的道筋を描く役割を担っています。その役割を全うするためには、専門的知識やスキルに加えて、ここで述べた多面的なマインドセットを絶えず磨き続けることが求められます。
こうした統合的マインドを持つ経営企画担当取締役こそが、激動する事業環境の中で企業の持続的成長と企業価値向上を導く真の「戦略的羅針盤」となり得るのです。
経営企画担当取締役は企業の戦略立案と実行の中核を担うポジションであり、多様なスキルが求められます。以下、この役割に必要とされる主要なスキルセットを体系的に整理します。
環境分析力
戦略構想力
価値創造思考
財務分析力
資本効率向上スキル
資金調達・配分スキル
定量分析スキル
定性分析スキル
意思決定スキル
変革マネジメントスキル
プロジェクトマネジメントスキル
パフォーマンス向上スキル
戦略的コミュニケーション力
信頼構築・関係性スキル
交渉・調整スキル
グローバル視点・経験
多様性活用スキル
コーポレートガバナンス理解
法務・コンプライアンス理解
倫理的リーダーシップ
デジタルリテラシー
デジタルトランスフォーメーション
ESG戦略立案
ステークホルダーエンゲージメント
新たな価値創造
イノベーション戦略構築
新規事業開発
M&A・アライアンス戦略
危機予測・準備
危機対応・回復
組織レジリエンス構築
戦略的人材マネジメント
組織・企業文化形成
働き方改革・生産性向上
継続的学習能力
適応力・変革力
メンタルレジリエンス
経営企画担当取締役には、上記13の領域にわたる高度なスキルが求められますが、全てを一人で完璧に備えることは現実的ではありません。むしろ重要なのは、これらのスキル領域の相互関連性を理解し、自らの強みを活かしながら、弱み領域を補完するチーム構築や専門家活用を行う能力です。
また、経営環境の変化に応じて、重点的に強化すべきスキル領域も変化します。例えば、デジタルトランスフォーメーションが急務となればデジタルスキルの強化が、サステナビリティ対応が重要課題となればESG関連スキルの強化が求められます。
経営企画担当取締役に最も求められるのは、これらの多様なスキル要素を状況に応じて適切に組み合わせ、複雑な経営課題に対して統合的なソリューションを導き出す「メタスキル」と言えるでしょう。常に学び続け、環境変化に適応しながら自己と組織を進化させていく姿勢こそが、この役割を長期的に全うするための基盤となります。
経営企画担当取締役というトップマネジメントのポジションにたどり着くまでのキャリアパスは一様ではありませんが、いくつかの典型的なルートが存在します。まずはそれらを逆算して見ていきましょう。
経営企画担当取締役に直接つながるポジションとしては、経営企画部長や執行役員(経営企画担当)が挙げられます。これらの役職では、すでに全社戦略の策定や重要な経営判断に深く関与しており、取締役会との連携も密に行っています。こうした立場で実績を上げ、経営陣からの信頼を勝ち取ることが、取締役への昇格の前提条件となります。
その手前には、経営企画部の次長やグループマネージャー、あるいは特定の戦略プロジェクトのリーダーとしての経験があることが一般的です。この段階では、全社戦略の一部を担当したり、重要プロジェクトの責任者として実行力を示したりする機会が与えられます。例えば、「新規事業開発チーム」や「中期経営計画策定タスクフォース」のリーダーとして成果を上げることで、経営層の目に留まりやすくなります。
さらにその前には、経営企画部の中堅メンバーとして、様々な戦略立案や分析業務に携わる経験をします。この段階では、M&A案件の評価や新規事業計画の策定、競合分析などの基礎的な業務を通じて、戦略的思考力や分析能力を磨くことが重要です。
ではこうした経営企画部のキャリアに入る前は、どのようなバックグラウンドが考えられるでしょうか。大きく分けて以下の複数のルートがあります。
若手時代に身につけておくべき経験としては、以下のようなものが挙げられます。
経営企画担当取締役を目指す上で特に重要なのは、「T型人材」を目指すことです。つまり、特定の専門分野で深い知見を持ちながら(縦棒)、幅広い領域に関する理解も持ち合わせている(横棒)人材像です。一つの分野で圧倒的な成果を上げつつも、常に全体最適の視点を持ち、他部門とも協力できる柔軟性を示すことが、経営企画部へのキャリアパスを切り開く鍵となるでしょう。
最後に、経営企画担当取締役という高いポジションを目指すには、日々の業務の中で「経営者視点」を意識的に養うことが大切です。どんな小さな判断も「もし自分が経営者なら、会社全体のためにどう判断するか」という観点から考える習慣をつけることで、将来のトップマネジメントに必要な思考回路が自然と身についていきます。
経営企画担当取締役というポジションで身につくスキルは、ビジネスリーダーとして最高レベルの総合力と言えるでしょう。この職種では、戦略立案能力、決断力、リーダーシップ、財務分析力、交渉力など、経営者に求められるほぼすべての能力が必要とされます。
特に強化されるのは「全体最適」の思考と「実行力」の組み合わせです。部分最適ではなく、企業全体の価値を最大化するための判断基準を持ち、それを実現するための行動力と影響力を発揮できる人材は、ビジネス界のあらゆる場面で重宝されます。例えば、ある経営企画担当取締役経験者は、「個別の事業や機能の論理だけでは見えてこない、企業全体としての『勝ちパターン』を設計する力が身についた」と語っています。
また、高度な分析力と洞察力も養われます。膨大なデータや情報から本質を見抜き、複雑な状況下でも最適な判断を下す能力は、あらゆるビジネスシーンで応用可能です。M&A案件の評価、新規事業の立ち上げ、組織再編の意思決定など、不確実性の高い局面で冷静に状況を分析し、リスクとリターンのバランスを見極める経験を積むことができます。
さらに、経営企画担当取締役として様々なステークホルダーと関わることで、高度なコミュニケーション能力と対人関係構築力も身につきます。株主や投資家、取締役会メンバー、各事業部門の責任者、社外パートナーなど、立場や視点の異なる関係者と効果的にコミュニケーションを取り、共感と信頼を得る能力は、どのようなポジションでも強力な武器となります。
キャリア展望としては、経営企画担当取締役の経験を積んだ後、社長やCEOへのステップアップを目指すことが一つの王道です。多くの企業において、経営企画部門はCEOの登竜門と位置づけられており、企業全体を俯瞰できる視点と戦略的思考を持った人材が次世代のトップリーダーとして選ばれる傾向があります。
また、グループ企業のトップとして送り出されるケースも少なくありません。子会社や関連会社の社長・CEOとしての経験を積み、将来的に親会社の経営トップを目指すというキャリアパスです。
さらに、経営企画担当取締役としての経験と人脈を活かして、社外取締役や経営コンサルタント、投資ファンドのパートナーなど、企業の枠を超えた活躍の場を選ぶ道も広がっています。複数の企業の社外取締役を務めたり、スタートアップ企業の戦略顧問として若い経営者をサポートしたりするなど、自身の経験を社会に還元する形で第二のキャリアを築く選択肢もあります。
経営企画担当取締役という職種は、キャリアの集大成として目指すべき高みであると同時に、そこから更なる飛躍へのスプリングボードにもなる、希少価値の高いポジションなのです。