経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
誰かが見ていないと組織は暴走する
透明性こそが企業価値を高める
問題を未然に防ぐ、その使命感が会社を守る
800万円~1,500万円
※業績や評価によって変動
30歳~50歳
新興上場企業の内部監査部長―それは企業の「最後の砦」として組織を守り、透明性と信頼性を担保する重要なポジションです。上場したばかりの成長企業において、この役職は「監視役」ではなく、健全な企業成長を支える「戦略的パートナー」としての側面も持ち合わせています。不正や法令違反を未然に防ぎながら、ビジネスの効率性や有効性も高める―その両立を実現するプロフェッショナルとして、組織の中核で活躍するチャンスがここにあります。変化の激しい新興企業で培われるスキルと経験は、キャリアに確固たる基盤を築くことでしょう。
新興上場企業の内部監査部長として、企業の「健全性」と「成長性」を両立させる重要な役割を担います。まさに企業統治の要として、経営陣と現場の橋渡し役を果たしながら、組織全体を俯瞰する視点が求められるのです。
例えば、朝は経営会議に出席し、企業が直面するリスクについて経営陣と議論することから始まり、「このビジネス戦略にはどのようなリスクが潜んでいるか」「新規事業の内部統制はどう設計すべきか」など、経営判断に内部統制の視点を提供します。
午後からは内部監査チーム内でのミーティングで、各部門の監査計画や進捗状況を確認します。急成長している営業部門では売上計上の適切性、IT部門ではシステムセキュリティ、経理部門では財務報告の正確性など、各部門特有のリスクに焦点を当てた監査アプローチを指導します。
新興上場企業では特に、急成長に伴うガバナンス体制の整備が追いつかないという課題が常にあります。「売上至上主義に走り過ぎていないか」「急拡大する人員に対して教育は行き届いているか」といった点を冷静に評価し、時には経営陣に「待った」をかける勇気も必要です。
またJ-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)への対応も重要な任務です。監査法人との連携を図りながら、財務報告の信頼性を担保する内部統制を評価・報告する責任を負います。「この管理体制で本当に不正は防げるのか」「効率性を損なわずにどうリスクを低減できるか」という視点で、常に最適解を探求します。
内部監査部長の醍醐味は、チェック機能を超えて、企業価値向上のための提言ができることにあります。内部監査で発見した事象を指摘するだけでなく、「このプロセスはこう変えれば効率的になる」「こういった管理体制を整えることでリスクが低減される」など、ビジネスパートナーとして建設的な改善提案を行うのです。
特に成長スピードの速い新興企業では、海外進出やM&Aなど、ダイナミックな経営判断が次々と行われます。そんな中で「このスピード感を損なわずに、どう適切な管理体制を構築するか」という難題に取り組むことは、内部監査のプロフェッショナルとしての腕の見せどころとなるでしょう。
このポジションの魅力は、経営トップと近い距離で仕事をしながら、会社全体を把握できる数少ないポジションであることです。CEOやCFOとの直接的なコミュニケーションを通じて、企業の戦略や課題を深く理解し、時には「自社の成長のためには、この部分の管理体制強化が不可欠です」と進言する機会も得られます。
なぜ新興上場企業の内部監査部長という道を選ぶのか。その理由は、企業の成長と健全性の両方に直接的に貢献できる、稀有なポジションだからです。
まず挙げられるのは、「企業防衛の最前線」としての使命感です。上場したばかりの企業は、その成長スピードゆえに思わぬ落とし穴に陥りやすいものです。売上至上主義に陥って不適切な会計処理を行ったり、急拡大する組織で不正が見過ごされたりするリスクが常に存在します。そんな中で「この会社を守るのは自分しかいない」という責任感と使命感を持って働けることは、他の職種では得難い充実感をもたらします。
次に「企業の未来を形作る」という醍醐味があります。新興上場企業では、ガバナンス体制そのものがまだ発展途上であることが多く、白紙から理想的な内部統制システムを構築することができます。「こういう会社にしたい」という理想を形にしていく喜びは、長年システムが固定化された大企業では味わえないものです。
また、新興企業特有の「変化への即応力」を身につけられることも大きな魅力です。事業環境や組織が目まぐるしく変わる中で、常に最適な内部統制のあり方を模索し続ける経験は、変化適応力という普遍的な能力を磨くことにつながります。この能力は、どんな業界・職種でも通用する「一生モノのスキル」となるでしょう。
他のキャリアと比較しても、内部監査部長の特徴的な点は「全社を俯瞰できる視座」を得られることです。営業部門のマネージャーは営業の専門家として深い知見を持ちますが、視野は営業活動に限定されがちです。一方、内部監査部長は営業、財務、IT、人事など全部門と関わり、それぞれの機能と課題を横断的に理解することができます。この全体観は、将来的にCOOやCEOを目指す上でも貴重な資産となるでしょう。
さらに、新興上場企業では「自分の手掛けた内部統制システムが企業の成長を支える土台となる」というやりがいがあります。努力が、「健全に成長する企業」という目に見える形で結実するのです。例えば、構築したリスク管理体制のおかげで未然に不正を防止できたり、効率的な業務プロセスの提案が全社的な生産性向上につながったりした時の達成感は何物にも代えがたいものです。
社会的意義という観点からも、内部監査部長の仕事は非常に価値があります。企業不祥事が相次ぐ現代社会において、企業の透明性と誠実性を担保する役割は、投資家や顧客、従業員など全てのステークホルダーの信頼を守ることにつながります。内部監査部長の仕事が、社会全体の健全な経済活動を支えているのです。
このように、新興上場企業の内部監査部長を目指すことは、ビジネスの最前線で組織の健全性と成長を両立させるという、スリリングかつ社会的意義の高いチャレンジへの第一歩なのです。
内部監査部長は、組織のガバナンス、リスク管理、内部統制の有効性を独立した立場から評価・改善する重要な役割を担っています。特に新興上場企業では、内部統制の整備・運用が発展途上であることも多く、監査を通じた組織の成長支援が期待されます。以下に、新興上場企業の内部監査部長の年間スケジュール例を3月決算会社を想定して示します。
月次業務
四半期業務
監査以外の活動
危機対応
定期的な活動
年次活動
特有の課題
新興上場企業の内部監査部長の年間スケジュールは、企業の成長段階やビジネスモデル、業界特性によって詳細は異なりますが、基本的な流れとしては上記のようになります。新興上場企業の内部監査部長は、コンプライアンスと企業成長の両立を支援する重要な役割を担っており、この年間スケジュールを基盤としながらも、組織の状況に応じた柔軟な対応が求められます
新興上場企業にとって、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)への対応は必須要件です。内部統制の不備は、情報開示の信頼性低下、株価への悪影響、最悪の場合は上場廃止リスクにもつながります。特に上場間もない企業では、内部統制の整備・運用が発展途上である場合が多く、その構築と評価は内部監査部長の最重要任務と言えます。
内部統制の評価計画策定と実行
不備への対応
経営層・監査法人との連携
新興上場企業は往々にして急速な成長過程にあり、事業拡大や新規事業参入に伴う新たなリスクに直面します。しかし、リスク管理体制が成熟していないケースが多く、また経営者のリスク感度も様々です。内部監査部長は独立した立場から、組織全体のリスクを俯瞰し、早期警鐘を鳴らす役割が求められます。
全社的リスクマネジメント体制の構築支援
経営リスクの監視と早期警鐘
重点リスク領域の深掘り監査
内部監査は「検査・指摘」機能ではなく、組織の持続的成長と企業価値向上に貢献する役割が求められています。特に新興上場企業では、急速な成長に伴い様々な非効率や課題が内在している場合が多く、これらを改善することで大きな価値向上が期待できます。内部監査部長には、問題点の指摘だけでなく、経営改善に向けた建設的な提言を行うことが重要です。
業務効率化・プロセス改善の提言
ガバナンス強化のための提言
企業文化・組織風土の改善
上記3つの重要任務は互いに密接に関連しています。
このように、3つの任務を個別に遂行するのではなく、相互に連携させた統合的アプローチを取ることで、限られたリソースでの最大効果を達成することが可能となります。
これらの要素を兼ね備えることで、内部監査部長は「守りの機能」だけでなく、企業の持続的成長と企業価値向上に貢献する戦略的パートナーとしての役割を果たすことができるでしょう。
新興上場企業の内部監査部長の報酬水準については、公開情報から推測される一般的な水準についてご説明します。
新興上場企業の内部監査部長の年間報酬総額は、企業規模、業種、上場市場、個人のスキル・経験によって大きく異なりますが、一般的に以下のような範囲にあると考えられます。
報酬は一般的に以下の要素で構成されます。
上昇要因
減少要因
内部監査部長の採用市場については以下の通りです。
新興上場企業における内部監査部長の報酬は、以下の要因も考慮されます:
新興上場企業の内部監査部長の報酬は、企業規模や業種により幅がありますが、総額で年間800万円~1,500万円程度が平均的な水準と考えられます。専門性の高さ、経験の豊富さ、上場企業での内部監査経験などにより、この範囲を超える報酬となることもあります。
内部監査機能の重要性に対する認識の高まりと、適格な人材の不足から、今後も内部監査部長の報酬水準は緩やかに上昇していく可能性があります。ただし、個々の企業の財務状況や業界動向によって大きく異なります。
日本では近年、革新的なビジネスモデルや先進的なテクノロジーを武器に急成長を遂げ、上場を果たした企業が複数存在します。その中でも特に注目されている3社をご紹介します。
概要
特徴
SmartHRは「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」というミッションを掲げ、人事労務業務の効率化を実現するサービスを提供しています。入社手続きや雇用契約、給与明細の配布、年末調整など、従来紙や手作業で行われていた業務をデジタル化し、大幅な業務効率化を実現しています。
多くの企業で人手不足が深刻化する中、バックオフィス業務の効率化ニーズを的確に捉え、急速に顧客基盤を拡大。日本企業のDX推進を支援する代表的なSaaS企業として評価されています。
概要
特徴
「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、個人間取引のプラットフォームとして急成長を遂げました。スマートフォンの普及と結びついた使いやすいUIと、配送システムの最適化により、新たな消費行動を生み出しています。
日本発のユニコーン企業として海外展開も積極的に進め、米国でも事業を展開。2023年にはついに黒字化を達成し、安定的な成長軌道に乗りつつあります。
フリマアプリの枠を超え、金融サービス「メルペイ」を展開するなど、生活インフラとしての地位を確立しつつある点も注目されています。社内のグローバル化を積極的に進め、外国人採用も積極的におこなっています。
概要
特徴
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、個人事業主や中小企業向けのクラウド会計・人事労務サービスを提供しています。独自のテクノロジーを活用し、複雑な会計処理や法改正への対応をリアルタイムで行うことで、専門知識がなくても直感的に業務ができる環境を提供しています。
設立以来、継続的な成長を続け、顧客基盤は個人事業主から中小企業、さらには中堅企業へと拡大。サブスクリプションモデルによる安定的な収益基盤を構築しています。
会計データを基に金融サービスとの連携を強化するなど、スモールビジネスのインフラとなるプラットフォームを構築する戦略も注目されています。
これらの企業に共通するのは、テクノロジーを活用して既存の業務プロセスを根本から変革し、効率化・最適化を図るという点です。また、サブスクリプションモデルを中心としたビジネスモデルにより、ストック型の収益構造を実現している点も特徴的です。
日本のビジネス環境の変化に合わせて、今後もこうした新興企業の成長・上場が期待されています。
新興上場企業の内部監査部長は、急成長する組織の中で品質保証と価値創造を両立させるという挑戦的な役割を担っています。「監査手法」や「専門知識」だけでなく、独自のマインドセットが求められます。以下に、そのコアとなるマインドについて解説します。
「監視者」から「価値創造パートナー」へ
内部監査は従来「社内警察」のように捉えられがちでしたが、新興上場企業では特に「ビジネスの成功に貢献するパートナー」としての姿勢が重要です。
「守り」と「攻め」のバランス感覚
新興上場企業では特に、コンプライアンスとイノベーションの両立が課題となります。内部監査部長には、この二律背反を調和させる思考が求められます。
客観性を保ちながら組織変革を促す
内部監査部長は独立した立場を維持しつつ、組織に変化を起こす影響力も持たなければなりません。特に新興上場企業では、この両立が大きな課題となります。
現場の事情を理解しつつ本質的改善を目指す
効果的な内部監査のためには、監査対象への深い理解と本質的な問題解決の両方が必要です。新興上場企業では特に、現場の実情を踏まえた実効性ある提言が求められます。
将来を見据えた監査と環境変化への柔軟な対応
新興上場企業は変化のスピードが速く、内部監査も未来志向で変化に強いアプローチが求められます。
組織の学習と成熟を促す
新興上場企業では、ガバナンスや内部統制の文化が発展途上であることが多く、内部監査部長には組織の成熟を促す役割も求められます。
自らの進化を続ける姿勢
内部監査部長自身が常に学び、変化する姿勢を持つことは、急成長する新興上場企業においては特に重要です。
様々な要素の調和を図る能力
内部監査部長には、多くの二律背反要素のバランスを取る感覚が求められます。特に新興上場企業では、このバランス感覚が成功の鍵となります。
新興上場企業の内部監査部長に求められるマインドは、一言で表すと「建設的バランサー」と言えるでしょう。企業の成長と規律、挑戦と慎重さ、独立性と協働性など、様々な二項対立の間で最適なバランスを見出し、組織の持続的成長を支える存在が求められています。
内部監査部長の真の価値は、監査技術や専門知識だけでなく、上記のような多面的なマインドセットを持ち、組織の状況に応じて柔軟に、かつ原則を守りながら対応できる「知的しなやかさ」にあります。
そして最も重要なのは、監査を通じて「組織をより良くしたい」という強い意志と情熱です。新興上場企業という変化と成長の真っただ中にある組織において、内部監査部長はチェック機能ではなく、企業価値向上のための重要なパートナーであるという自覚と責任感を持ち、日々の監査活動に取り組むことが求められています。
新興上場企業の内部監査部長には、成長企業の特性を理解しながら統制環境を整備・評価する多面的スキルが求められます。以下に必要なコアスキルをまとめました。
以上のスキルセットを統合的に活用することで、新興上場企業の内部監査部長は、企業の成長を支えながら適切な統制環境を構築するという重要な役割を果たすことができます。特に重要なのは「成長」と「統制」のバランス感覚、そして「問題指摘」と「価値創造」の両面から組織に貢献する視点です。
内部監査部長というポジションに至るまでには、いくつかの異なるルートが存在します。それぞれのパスには独自の強みがあり、どれが「正解」というわけではありません。ここでは逆算して、このポジションに至るための複数の道筋を探ってみましょう。
新興上場企業の内部監査部長の直前に想定されるポジションとしては、主に三つの経路が考えられます。
大手上場企業で培った体系的な監査手法やガバナンスの知識を、成長企業の環境に適用する形で転職するケースです。大手上場企業での経験は「あるべき姿」の青写真を持っているという強みがあり、新興上場企業のガバナンス体制構築に大きく貢献できます。
複数のクライアント企業の内部統制構築を支援してきた経験は、新興企業の内部監査部門を一から立ち上げる際に極めて有用です。様々な業界のベストプラクティスを知っているという点も大きな強みとなります。
会計監査のプロフェッショナルとして培った深い専門知識と、数多くの上場企業を見てきた経験が、内部監査部長として即戦力となります。特に財務報告に係る内部統制評価(J-SOX)の領域では、この経験が大きく生きるでしょう。
さらにさかのぼって、これらの中間管理職に至るまでの経路を考えてみましょう。
監査法人を起点としたキャリアパスでは、公認会計士として5年から10年程度の実務経験を積み、シニアスタッフからマネージャーへとステップアップするケースが典型的です。このルートの強みは、会計と監査の専門知識が非常に堅固であることと、様々な企業の財務状況や内部統制を見てきた「目利き力」を持っていることです。
事業会社の財務・経理部門からのキャリアパスも有力な選択肢です。財務経理の実務担当者から管理職へと成長し、その後内部監査部門へ異動するというルートです。事業特性への深い理解と実務経験に基づく「現実的な監査アプローチ」が強みとなります。
IT部門や法務部門からのキャリアチェンジも珍しくありません。それぞれの専門分野でマネージャー経験を積んだ後、内部監査部門に合流し、その専門性を生かして徐々に守備範囲を広げていくというパターンです。特にITガバナンスやコンプライアンスが重視される業界では、こうした専門知識を持つ人材が重宝されます。
若手時代にどのような経験を積むべきかという点では、まず「数字に強くなる」ことが基本です。財務諸表を読み解く力や、ビジネスプロセスを定量的に分析する能力は、どのような監査活動においても基礎となります。経理部門での実務経験や、MBA等で財務・会計の知識を体系的に学ぶことも有効でしょう。
また「批判的に考える習慣」を身につけることも重要です。若手のうちから「なぜそうなのか」「本当にそれで十分か」と考える姿勢を持ち、表面的な説明に満足しない探究心を養いましょう。
もちろん専門資格の取得も強力な武器となります。CIA(公認内部監査人)やCISA(公認情報システム監査人)といった国際的な資格は、内部監査の専門家としての証明になります。公認会計士資格を持っていればなお有利でしょう。
このように様々なキャリアパスがありますが、共通しているのは「複眼的な視点を持つこと」の重要性です。会計だけ、ITだけ、あるいは法務だけといった一面的な知識では、内部監査部長として十分に機能することはできません。様々な角度からビジネスを見る力を養うことが、このポジションを目指す上での鍵となるでしょう。
これらのキャリアパスのどれかを歩む可能性は十分にあります。大切なのは、どの道を選んだとしても、常に視野を広く持ち、専門性と全体観をバランスよく磨いていくことです。そうすれば、いつか新興上場企業の内部監査部長として、企業の健全な成長を支える重要な役割を担う日が来るでしょう。
新興上場企業の内部監査部長という立場で得られるスキルは、ビジネスパーソンとしての総合力を磨く最高の機会となります。その理由は、このポジションが「経営目線」と「現場感覚」の両方を必要とする稀有な役割だからです。
まず身につくのは「ガバナンス設計力」です。成長著しい企業において、スピード感を損なわずに適切な内部統制を構築するには、ビジネスモデルを深く理解した上での最適解を見出す力が求められます。この能力は、組織設計や経営管理の専門性として、大きな武器となるでしょう。
次に「リスク感知能力」が鍛えられます。さまざまな部門やプロセスに潜むリスクを先回りして察知し、未然に防ぐ目を持つことは、どんな経営ポジションでも重宝される能力です。この「危機を察知する嗅覚」は、内部監査の現場で日々磨かれていきます。
「コミュニケーション力」も飛躍的に向上します。内部監査部長として効果的に機能するには、時に厳しい指摘をしながらも相手の協力を引き出す高度な対人スキルが不可欠です。経営陣には率直に意見を述べ、現場には改善の必要性を納得させる―そんな「上にも下にも強い」コミュニケーション能力は、どんなキャリアでも価値を発揮します。
また「問題解決力」も養われます。監査で発見した課題に対して、指摘するだけでなく実行可能な改善策を提案するためには、創造的な問題解決アプローチが必要です。この「批判ではなく建設的な解決策を提示する力」は、あらゆるビジネスシーンで求められる普遍的なスキルです。
さらに、この職種で特に磨かれるのが「分析力」です。膨大なデータやプロセスの中から本質的な問題を見抜く洞察力は、内部監査の醍醐味であり、戦略立案や意思決定においても大きな強みとなります。
これらのスキルを身につけることで、キャリアの幅は大きく広がります。具体的には、以下のようなキャリアが考えられます。
企業全体を俯瞰する視点と各部門の機能を深く理解しているため、経営幹部としての適性が高く評価されるのです。
内部監査で培った「何が会社にとって最適か」を判断する力が、経営戦略の立案や組織づくりに直結するからです。
ガバナンスとリスク管理の専門家として、複数の企業で知見を生かすマルチボード型のキャリアも魅力的な選択肢でしょう。
新興上場企業の内部監査部長というポジションは、監査の専門家を超えて、将来の経営幹部や独立したガバナンスの専門家としての可能性を広げる、キャリアの要となるステップなのです。ここで積み重ねる経験は、今後どのような道に進もうとも確かな財産となるでしょう。