経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
最前線で戦略を描き、成長の舵を取る
組織の頭脳として全体最適を追求する
次世代リーダーへの登竜門
900万円~2,500万円
※業績や評価によって変動
30歳~45歳
新興上場企業で経営企画部長を務めるということ。それは、急成長する企業の未来を設計し、舵を取る重要な役割を担うということです。CEOの右腕として経営戦略を立案し、組織全体を俯瞰しながら会社の成長エンジンを最適化する——そんなやりがいに満ちた挑戦が待っています。
年収1,500万円を超えるポジションであることも多く、次世代の経営幹部や執行役員への登竜門としても注目されるこのポジション。多くの情報が交差する経営の中枢で、経営企画部長の決断が企業の未来を左右します。新たな価値を創造し、組織と共に成長する醍醐味を味わえる経営企画部長という天職について、詳しくご紹介しましょう。
経営企画部長は、新興上場企業における「戦略の司令塔」です。CEOや取締役会の意思決定を支える重要なポジションであり、企業の未来を描く設計図の作成者でもあります。
まず、経営企画部長の中核業務は「企業戦略の立案」です。市場分析やトレンド調査から始まり、3ヵ年・5ヵ年の中長期経営計画を策定します。たとえば、新規事業への参入判断、既存事業の拡大戦略、海外展開の是非など、大きな経営判断に必要な情報を集約・分析し、経営陣に提案します。「この新規事業に参入すれば、3年後には全社売上の20%を占める柱になる可能性がある」といった具体的な将来予測を示し、経営陣の意思決定をサポートするのです。
次に重要なのが「予算策定と管理」です。各部門から上がってくる予算案を精査し、全社最適の視点から調整を行います。限られたリソースをどう配分すれば最大の効果が得られるか—その判断は、企業の1年間の行動計画を決定づけます。四半期ごとの業績レビューでは、計画と実績の乖離を分析し、軌道修正の提案も行います。
また、新興上場企業ならではの業務として「IR活動の統括」も重要です。四半期ごとの決算発表資料の作成、投資家向け説明会の準備、アナリストからの問い合わせ対応など、資本市場とのコミュニケーションを担当します。株価は企業価値の重要なバロメーターであり、投資家に自社の成長戦略を適切に伝えることで、企業価値の最大化に貢献します。
さらに、M&Aや資本政策の立案も経営企画部長の重要な職務です。成長加速のための買収候補先の選定、デューデリジェンスの統括、PMI(買収後の統合)計画の策定など、企業の非連続的成長を実現するための施策を主導します。「この企業を買収すれば、自社にない技術を獲得でき、市場シェアを5%拡大できる」といった具体的なシナリオを描き、経営陣の判断材料を提供するのです。
日々の業務では、各部門の責任者とのコミュニケーションも欠かせません。営業、マーケティング、開発、人事、財務など各部門の課題や成果を把握し、部門間の連携を促進します。組織全体の情報が集約される立場だからこそ、部門最適ではなく全社最適の視点で判断を下せるのです。
経営企画部長の魅力は、企業経営の全体像を俯瞰できる点にあります。CEOや取締役会の意思決定プロセスに直接関わり、時には厳しい議論を交わしながら、会社の未来を創り上げていく。その過程で得られる経営感覚は、将来CEOや事業責任者になるための貴重な経験となるでしょう。
「なぜ経営企画部長を目指すのか?」—この問いに対する答えは、この職種ならではの醍醐味にあります。
最大の魅力は、「企業経営の中枢に立てる」ということです。事業部門のように特定の領域に特化するのではなく、企業活動の全体を俯瞰する立場にあります。たとえば、新規事業の立ち上げを検討する際には、市場の将来性、競合状況、自社の強み、必要な投資額、期待されるリターン、リスク要因など、多角的な視点から分析し、経営判断の材料を提供します。この過程で培われる「経営者目線」は、キャリアステップにおいて大きな財産となるでしょう。
また、「意思決定の最前線にいる」という点も大きな魅力です。新興上場企業では、スピード感のある意思決定が求められます。市場環境の変化や競合の動きに素早く対応するため、経営企画部長は常に最新の情報を収集・分析し、CEOや取締役会に提言します。「このタイミングで思い切った投資をすべきか」「この事業からは撤退した方が良いのか」—そういった重要な判断に関わることで、経営者としての意思決定力が鍛えられます。
さらに、「組織の未来を創造する」やりがいも経営企画部長ならではです。中期経営計画を策定する際には、3年後、5年後の会社の姿を描きます。「年間売上100億円企業になるためには、どのような事業ポートフォリオを構築すべきか」「グローバル展開を進めるために、どのような組織体制が最適か」—そういった未来図を描き、実現に向けたロードマップを策定するのです。自分が描いた戦略が実を結び、会社が成長していく姿を目の当たりにできる喜びは何物にも代えがたいものです。
経営企画部長は、「次世代経営者への登竜門」としての側面も持っています。企業戦略の立案、予算策定・管理、M&A、資本政策など、経営の多様な側面に関わることで、将来的にCEOや事業部長として活躍するための総合力を身につけられます。実際に、経営企画部長から執行役員や取締役に昇進するキャリアパスは珍しくありません。
一方で、新興上場企業の経営企画部長には、「変化を恐れない姿勢」も求められます。市場環境は常に変化し、テクノロジーの進化や競合の参入によって、昨日までの常識が通用しなくなることもあります。そんな不確実性の高い時代において、柔軟な思考と大胆な発想で新たな成長戦略を描ける人材が求められているのです。
経営企画部長は、数字とビジネスの両方を理解し、戦略を形にできる「バイリンガル」な存在です。財務データを分析しながらも、市場の動向や顧客ニーズを捉え、創造的な戦略を立案する—そんな総合力を持つ人材として、企業内での存在感と影響力を高めていくことができるでしょう。
新興上場企業の経営企画部長は、企業の成長戦略策定から投資家対応まで多岐にわたる役割を担います。以下に、3月決算企業を例にした年間スケジュールを月別に解説します。
主要タスク
この時期は経理部門が決算業務で繁忙を極めるため、経営数値の分析と経営陣へのインプット提供が重要です。また、決算短信や有価証券報告書の非財務情報部分の確認・作成支援も必要になります。
主要タスク
新興上場企業にとって、機関投資家やアナリストからの評価は株価形成に直結するため、決算説明会の質を高めることが重要です。また、株主総会の準備は総務部門と連携して進めます。
主要タスク
株主総会が終了すると、企業は次のフェーズに移行します。中期経営計画の進捗や変化する市場環境に基づき、戦略の微調整や見直しを検討する時期でもあります。
主要タスク
第1四半期の業績は年間計画達成の重要な指標となります。計画と大きく乖離している場合は、早期にアクションプランを検討する必要があります。
主要タスク
上期の動向を見て下期の戦略を微調整する時期です。特に成長フェーズの企業では、リソース配分の最適化が重要な課題となります。
主要タスク
上場企業として業績予想と実績の乖離が大きい場合は、開示が必要になります。半期時点での精度の高い予測と、必要に応じた適時開示の準備が重要です。
主要タスク
中間決算は投資家に対する重要な節目です。同時に、次年度計画の策定プロセスも始まるため、現状分析と将来展望を同時に進める必要があります。
主要タスク
次年度計画策定は経営企画部長の重要な役割です。各部門の要望と全社最適のバランスを取りながら、成長と収益性を両立させる計画を策定します。
主要タスク
年末は次年度計画の確定と同時に、その実行体制の検討も行います。組織変更が必要な場合は、この時期に検討を進めます。
第3四半期決算は年度業績の最終予測を固める重要な機会です。同時に、次年度の実行計画を具体化していく時期でもあります。
主要タスク
年度末が近づくと、次年度の円滑なスタートに向けた準備と、当年度の着地点確認を同時に行う必要があります。特に上場企業では、業績予想と実績の乖離を最小化することが重要です。
主要タスク
年度末の3月は締めと始まりが同時に進行する月です。当年度の締めくくりと次年度のスタートダッシュを同時に支援する役割が経営企画部長には求められます。
取締役会・経営会議運営
投資家・IR対応
予算統制・業績管理
戦略プロジェクト推進
新興上場企業の経営企画部長の年間スケジュールは、「計画策定」「実行支援」「モニタリング」「IR対応」のサイクルを基本としながら、四半期ごとの決算対応や株主総会対応などの定型業務に加え、事業戦略の検討や新規プロジェクトの推進など多岐にわたります。特に成長フェーズにある企業では、外部環境の変化に合わせた柔軟な計画修正や、限られたリソースの最適配分が重要な役割となります。
また、上場企業として資本市場との対話や適時開示対応も重要な責務です。経営企画部長は、社内の調整役であると同時に、経営陣と現場、そして企業と資本市場をつなぐ架け橋としての役割を担っています。
新興上場企業において最も重視されるのは、持続的な成長を実現するための戦略設計と迅速な実行サイクルの確立です。
成長戦略の策定
アジャイル型の実行管理
新興上場企業にとって、持続的な成長は株主価値向上と市場からの信頼獲得の最重要要素です。大企業と比較して経営資源が限られる中、正しい成長領域の選択と集中、そして素早いPDCAサイクルの実行が競争優位の源泉となります。
経営企画部長は、総合的な視点から成長戦略を設計し、その実行を加速するエンジンとしての役割を担います。特に新興上場企業では、環境変化や新たな機会への素早い対応が求められるため、戦略の適応力と実行スピードが他社との差別化要因となります。
新興上場企業は、上場を機に求められるガバナンス水準の引き上げと、多様なステークホルダーとの関係構築という新たな課題に直面します。経営企画部長はこの変革の中核を担います。
ガバナンス体制の整備・強化
ステークホルダーコミュニケーション
新興上場企業の経営企画部長は、創業期・未上場期に比べ格段に高度化する企業統治の要求水準に対応しつつ、長期的な企業価値向上に資するガバナンス体制を構築する役割を担います。
形式的なガバナンス対応ではなく、迅速な意思決定と適切な監督機能のバランスを取りながら、成長企業としての機動性を失わない体制構築が求められます。また、株主・投資家をはじめとする多様なステークホルダーとの関係構築は、安定的な成長を支える基盤となります。
特に新興企業は業績の変動性が高く、成長過程での判断ミスによる影響が大きいため、適切なリスク管理と透明性の高い情報開示が企業価値を左右します。
新興上場企業は急速な事業拡大に伴い、組織規模の拡大や経営システムの高度化が必要となります。経営企画部長はこの組織的成長痛に対応し、持続可能な経営基盤を構築する役割を担います。
組織設計・再設計
経営システムの高度化
新興上場企業が直面する典型的な課題の一つが「創業期の仕組みが機能しなくなる組織的成長痛」です。経営企画部長は、企業の成長段階に応じた組織・制度の再設計を主導し、拡大する組織の求心力を維持しながら経営効率を高める役割を担います。
特に創業経営者のカリスマや属人的判断に依存した経営から、システマチックな経営への移行は、持続的成長のための重要な課題です。組織規模拡大に伴う複雑性の増大に対応しつつ、意思決定の質とスピードを両立させる経営基盤の構築が求められます。
また、新興上場企業では人材の急速な増加や多様化が進むため、企業理念や価値観の浸透、一体感の醸成も重要な課題となります。
新興上場企業の経営企画部長の報酬水準について、利用可能な最新情報をもとに説明します。
なお、新興上場企業の経営企画部長に特化した具体的な報酬データは限られていますが、関連する役員報酬調査や企業規模別の管理職報酬データから、おおよその水準を推定することができます。
新興上場企業の経営企画部長の報酬水準は、以下の要素によって大きく変動します。
典型的な経営企画部長の報酬パッケージは以下の要素で構成されています。
基本報酬(年収ベース)の目安
賞与を含めた年間総報酬の目安
株式報酬を含む場合
株式報酬(ストックオプションや譲渡制限付株式等)が付与される場合、特に成長性の高い企業では、上記の金額に加えて、条件達成時に数百万円〜1,000万円以上の追加報酬となる可能性があります。
報酬を押し上げる要因
報酬を抑制する要因
デロイト トーマツの「役員報酬サーベイ(2024年度版)」によると、
新興上場企業の経営企画部長の報酬水準は、企業規模や成長段階、業界によって大きく異なりますが、おおよそ年間1,000万円〜2,500万円の範囲内に収まることが多いようです。ただし、高成長企業や特殊なスキルセットを持つ人材の場合は、この範囲を超える可能性もあります。
また、近年の傾向として、固定給だけでなく、業績連動型の賞与や株式報酬といった変動報酬の比率が高まっており、企業の成長に貢献することで、より高い報酬を得られる仕組みが広がっています。
日本では近年、革新的なビジネスモデルや先進的なテクノロジーを武器に急成長を遂げ、上場を果たした企業が複数存在します。その中でも特に注目されている3社をご紹介します。
概要
特徴
SmartHRは「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」というミッションを掲げ、人事労務業務の効率化を実現するサービスを提供しています。入社手続きや雇用契約、給与明細の配布、年末調整など、従来紙や手作業で行われていた業務をデジタル化し、大幅な業務効率化を実現しています。
多くの企業で人手不足が深刻化する中、バックオフィス業務の効率化ニーズを的確に捉え、急速に顧客基盤を拡大。日本企業のDX推進を支援する代表的なSaaS企業として評価されています。
概要
特徴
「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、個人間取引のプラットフォームとして急成長を遂げました。スマートフォンの普及と結びついた使いやすいUIと、配送システムの最適化により、新たな消費行動を生み出しています。
日本発のユニコーン企業として海外展開も積極的に進め、米国でも事業を展開。2023年にはついに黒字化を達成し、安定的な成長軌道に乗りつつあります。
フリマアプリの枠を超え、金融サービス「メルペイ」を展開するなど、生活インフラとしての地位を確立しつつある点も注目されています。社内のグローバル化を積極的に進め、外国人採用も積極的におこなっています。
概要
特徴
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、個人事業主や中小企業向けのクラウド会計・人事労務サービスを提供しています。独自のテクノロジーを活用し、複雑な会計処理や法改正への対応をリアルタイムで行うことで、専門知識がなくても直感的に業務ができる環境を提供しています。
設立以来、継続的な成長を続け、顧客基盤は個人事業主から中小企業、さらには中堅企業へと拡大。サブスクリプションモデルによる安定的な収益基盤を構築しています。
会計データを基に金融サービスとの連携を強化するなど、スモールビジネスのインフラとなるプラットフォームを構築する戦略も注目されています。
これらの企業に共通するのは、テクノロジーを活用して既存の業務プロセスを根本から変革し、効率化・最適化を図るという点です。また、サブスクリプションモデルを中心としたビジネスモデルにより、ストック型の収益構造を実現している点も特徴的です。
日本のビジネス環境の変化に合わせて、今後もこうした新興企業の成長・上場が期待されています。
新興上場企業の経営企画部長は、急成長するビジネスと資本市場の狭間で舵取りを担う重要なポジションです。伝統的な大企業とは異なる環境で活躍するために必要なマインドセットを解説します。
「現状維持」ではなく「急成長」を前提とした思考回路を持ち、常に事業拡大の機会を追求する姿勢が求められます。
計画重視から実行重視へ、完璧主義から柔軟な対応力へと思考をシフトし、環境変化に俊敏に対応するマインドが必要です。
自社完結ではなく、社内外の多様なステークホルダーと連携し、共創することで価値を最大化する発想が重要です。
相反する要素を同時に追求し、止揚する高度なバランス感覚が経営企画部長には必須です。
財務目標のみならず、社会的意義と経済的成功を統合する高次元の目的意識が求められます。
新興上場企業の経営企画部長に求められるマインドは、大手企業のそれとは以下の点で大きく異なります。
新興上場企業の経営企画部長には、「戦略家」であると同時に「実行者」であり、「未来を描く者」であると同時に「現実を直視する者」であることが求められます。
環境変化が激しく、リソースが限られた中でも、ビジョンと現実をつなぎ、多様なステークホルダーの期待に応えながら、組織の急成長を支える—このような高度なバランス感覚と強靭な精神力を持ちつつ、自らの手を動かすことも厭わない姿勢が、新興上場企業の経営企画部長には必要不可欠です。
何よりも、「既存のルールブックに頼らず、自らルールブックを書く」という創造的マインドセットこそが、新興上場企業の経営企画部長の真価を発揮させる基盤となるでしょう。
新興上場企業の経営企画部長として成功するためには、特有の環境に適応した専門的なスキルセットが必要です。急成長ステージの企業と資本市場の両方に対応しながら、組織の戦略的成長を実現するために求められる主要スキルを解説します。
ビジョン構築力
経営計画策定スキル
実行力
財務分析力
資本戦略構築力
IR対応スキル
組織設計スキル
人材戦略
チェンジマネジメント
データ分析力
デジタル戦略構築
アナリティクス活用
経営層連携
社内影響力
外部関係構築
リスクマネジメント
コンプライアンス推進
情報管理
イノベーション推進
新規事業開発
M&A・提携戦略
グローバル戦略
多文化理解
言語・交渉力
定量分析ツール
プレゼンテーション
プロジェクト管理
新興上場企業の経営企画部長には、大企業の同職位と比較して、以下の特徴的なスキル差異があります。
さらに重要なのは、これらの個別スキルを状況に応じて柔軟に組み合わせ、常に全体最適の視点から判断する統合的な思考能力です。専門性と汎用性、分析と直感、戦略と実行のバランスを取りながら、組織の急成長フェーズを支える中核的存在として機能することが求められます。
経営企画部長というポジションは、一朝一夕でたどり着けるものではありません。では、このポジションを目指す場合、どのようなキャリアパスがあり得るのでしょうか。ここでは、逆算的に考えながら、複数の可能性を探っていきましょう。
まず経営企画部長に就任する直前のポジションとしては、以下のようなパターンが考えられます。
経営企画部の課長やマネージャーから部長に昇進するケースです。経営企画部内で実績を積み、戦略立案や予算管理のノウハウを着実に身につけた人材が、自然な流れで部長にステップアップします。例えば、中期経営計画の策定プロジェクトでリーダーシップを発揮したり、重要なM&A案件を成功に導いたりすることで評価され、部長に抜擢されるケースが多いでしょう。
営業部長や事業部長など、一定の規模の組織マネジメント経験を持つ人材が、より広い視野を持ってもらうために経営企画部長に異動するケースです。現場での実績とリーダーシップが評価され、全社的な戦略立案を担うポジションに抜擢されるのです。事業の最前線で培った市場感覚や顧客理解が、経営企画においても大きな武器となります。
CFOや財務部長が経営企画部長を兼務したり、完全に職務を移行したりするケースです。財務・会計の専門知識を持ち、数字に強い人材が経営企画を担当することで、より精度の高い経営計画や投資判断が可能になります。IPO準備や資本政策の立案など、財務と経営企画が密接に関わる局面では特に有効なキャリアパスです。
コンサルティングファームや投資銀行、他社の経営企画部門で実績を持つ人材を外部から招聘するケースです。特に成長フェーズにある新興企業では、即戦力となる経験者を求めて外部採用を行うことが少なくありません。戦略コンサルタントとして様々な企業の経営課題に携わった経験や、投資銀行でM&Aに関わった経験は、経営企画部長としても大いに活かせます。
では、これらの直前ポジションにたどり着くまでには、どのようなキャリアステップがあるでしょうか。さらに逆算して考えてみましょう。
多くの場合、新卒や若手のうちに経営企画部に配属され、アナリストや担当者として実務経験を積むことから始まります。予算管理のサポート、各種分析レポートの作成、経営会議の資料準備などの業務を通じて基礎を身につけ、徐々に責任ある業務を任されるようになります。中堅社員になると、中期経営計画の策定プロジェクトや新規事業の立ち上げなど、重要なプロジェクトを担当。マネージャー・課長クラスになると、チームをリードしながらより戦略的な業務に携わり、最終的に部長にステップアップする流れです。
営業や企画開発など、事業の最前線でキャリアをスタートし、優秀な成績を収めることでマネージャーや部長に昇進。その後、より広い視野を身につけるために経営企画部門に異動するというパターンです。現場で培った実践力とリーダーシップが評価され、全社戦略を担う経営企画部長に抜擢されるのです。特に事業創出の経験や顧客理解の深さは、経営企画においても強みとなります。
財務や経理の専門家として入社し、決算業務や資金調達、原価管理などの実務を通じて実績を積み上げるキャリアパスです。数字に強く、企業の財務状況を俯瞰できる人材として評価され、財務部長やCFOに昇進した後、経営企画部門との接点が増えていく中で、経営企画部長を兼務するようになるケースも多いです。
戦略コンサルティングファームで様々な業界・企業の経営課題に関わり、分析力・提案力を磨いた後、事業会社に転職して経営企画部門で活躍するパターンです。コンサルタントとして培った論理的思考力やフレームワークを活用する能力が評価され、比較的短期間で経営企画部の要職に就くケースも少なくありません。
若手時代に経営企画部門を目指すための準備としては、以下のようなスキルや経験を意識的に積むことが重要です。
これらのスキルと経験を意識的に積み重ねることで、経営企画部長というゴールに近づいていくことができます。ただし、このキャリアパスは一例に過ぎません。重要なのは、どの部署にいても「全体最適」の視点を持ち、数字とビジネスの両方を理解する「バイリンガル」な人材を目指すことです。
経営企画部長を目指す上で忘れてはならないのは、表面的なスキルだけでなく、信頼関係の構築も重要だということです。経営企画部門は様々な部門と連携し、時には厳しい調整を行う立場にあります。そのためには、「この人の言うことなら信頼できる」と思ってもらえる人間性と実績を積み上げることが不可欠です。日々の業務の中で誠実さを示し、約束したことは必ず実行する—そうした姿勢が、最終的には経営企画部長という重要なポジションへと導くのです。
新興上場企業の経営企画部長というポジションは、決して簡単にたどり着けるものではありません。しかし、計画的にスキルを磨き、意識的に経験を積むことで、十分に手の届く目標でもあります。どのキャリアパスを選びますか?その選択が、未来を大きく左右することになるでしょう。
経営企画部長の役割を担うことで、ビジネスパーソンとして飛躍的な成長を遂げることができます。この職種で磨かれるスキルと、その先に広がるキャリア展望について見ていきましょう。
まず身につくのは「戦略的思考力」です。市場分析、競合分析、SWOT分析などの手法を駆使して情報を整理し、そこから中長期的な戦略を導き出す能力は、経営企画部長の最も重要なスキルです。例えば、「この市場セグメントは年率15%で成長しており、競合もまだ少ない。自社の技術的優位性を活かせば、3年以内に市場シェア20%を獲得できる可能性がある」といった戦略的判断ができるようになります。この思考プロセスは、どんな職種に就いても価値を発揮する普遍的なスキルです。
次に磨かれるのが「分析力と数値感覚」です。経営計画や予算策定の過程で、膨大なデータを分析し、意思決定に必要な情報を抽出する能力が養われます。売上、利益、コスト構造、投資対効果など、ビジネスの根幹を成す数字に対する鋭い感覚は、経営幹部として不可欠な素養です。「この施策に1億円投資すれば、3年間でどれくらいのリターンが期待できるか」といった投資判断が的確にできるようになります。
また、「全社横断的なコミュニケーション能力」も大きく向上します。経営企画部長は、営業、マーケティング、開発、人事、財務など、あらゆる部門と連携しながら業務を進めます。各部門の言語(専門用語や考え方)を理解し、時には「翻訳者」のような役割を果たしながら組織全体の意思統一を図る—そのプロセスで培われるコミュニケーション能力は、将来的に組織のリーダーとなる上で極めて重要です。
「プロジェクトマネジメント能力」も経営企画部長として磨かれる重要なスキルです。中期経営計画の策定、M&Aの実行、組織改革の推進など、大規模なプロジェクトを主導する経験を通じて、目標設定、スケジュール管理、リソース配分、リスク管理といったプロジェクトマネジメントのノウハウが身につきます。複雑な課題を分解し、優先順位をつけて着実に進める能力は、どんなビジネスシーンでも重宝される普遍的なスキルです。
さらに、上場企業特有の「IR・資本市場との対話能力」も獲得できます。投資家やアナリストとのコミュニケーションを通じて、自社の成長戦略を端的に説明し、質問に的確に答える能力が磨かれます。このスキルは、社内外の様々なステークホルダーを納得させる「説得力」の向上にも直結します。
キャリア展望としては、経営企画部長の経験を活かして様々な道が開けます。
経営の中枢で培った視点と経験は、経営陣として会社の舵取りをする上での大きな武器となるでしょう。
全社戦略の立案に関わった経験を活かし、実際に事業の責任者としてP/L(損益計算書)を預かる立場にステップアップするのです。
多様な業界・企業の戦略立案に関わることで、さらに視野を広げていくことができるでしょう。
事業計画の立て方、資金調達の方法、組織設計の考え方など、経営企画で学んだノウハウが、自らの会社を成長させるための基盤となるのです。
このように、経営企画部長というポジションで身につけるスキルと経験は、その後のキャリアの可能性を大きく広げてくれます。戦略と実行、数字と人、全体最適と部分最適—様々な要素をバランスよく理解できる「経営の総合力」を持つ人材として、市場価値は着実に高まっていくでしょう。
特に新興上場企業では、経営企画部長として事業のスケールアップや企業価値向上に貢献した実績が、次のキャリアステップへの大きな足がかりとなります。急成長フェーズのビジネスモデル構築、資本市場との対話、M&Aの実行といった経験は、どの企業でも高く評価される普遍的な価値を持っているのです。