経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
チーム全体をまとめながら、最前線でM&A・再生案件等を指揮する現場リーダー
高度な知識と実践的な案件遂行力を掛け合わせてキャリアの可能性を拡大
900万円~1,500万円
※担当案件規模、成果、チームマネジメント範囲で変動
28歳~40歳
独立系FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)のマネージャーは、まさに実務と現場推進の最前線に立つ中核ポジションです。M&Aや事業再生、バリュエーション(企業価値算定)、各種デューデリジェンス案件において、プロジェクト全体を「動かす」「支える」エンジン役を担います。
クライアントの経営層やディレクター、パートナーと連携しつつ、現場への指示やタスク配分、複数メンバーの進捗・品質管理まで“両輪”を回す管理実務が特徴です。
日々の業務は多岐にわたります。プロジェクト開始時はディールの設計やチーム分担、リスク管理のスキームを自ら提案。進行中は財務モデルの作成やデューデリジェンス・レポート取りまとめだけでなく、スタッフのアウトプット品質のチェックや顧客に対する直接説明も重要な役割です。場合によっては、複数案件を同時に担当することも珍しくなく、高いマルチタスク力と優先順位付けが成長の鍵となります。
クライアントとの打ち合わせやコミュニケーションは、時に経営陣やCFO、他の専門家(弁護士・会計士)との複雑な調整を含みます。そこでは「ロジカルな解決力」と「現場の機微を捉える力」が問われ、予期せぬ情報やトラブルの調整も日常茶飯事です。たとえば、M&A案件では急なデューデリジェンス項目の追加や、クロスボーダー案件の法規制への対応が求められ、リスクと利害のバランスを素早く判断する冷静な頭脳が求められます。
また独立系らしく、新規サービス立ち上げや業務フロー改善、ナレッジシェア活動もマネージャーが自発的にリードします。最近はAI・データ分析を活用した新手法の導入や、クライアントニーズを反映したレポートフォーマットの設計など「仕組みをつくる」チャレンジも増加傾向。日々の業務に加えて、組織やお客様の期待を”一歩先の提案”で超えていく面白さがこの仕事にはあります。
リスク管理の面では、案件の遅延や納品ミス、不正調査や機密情報管理まであらゆる“落とし穴”に備え、シミュレーションやマニュアル整備も主導します。短納期の大型案件でも、関係者との緻密な連携・情報共有が不可欠であり、「推進力×安心感」を同時に提供できることがFASマネージャーの真価です。
FASマネージャーならではの最大の魅力は、「経営変革の現場」を誰よりも近くで体感できることです。M&A・事業再生・アウターとアップ支援など、クライアント企業の存続や成長にダイレクトに関わる仕事が目白押し。さらに、“案件全体の品質管理責任”と“若手スタッフの育成現場長”両方を同時に任されるため、幅広いスキルが自然と身についていきます。
ディレクターやパートナーと共に経営層への提案や合意形成の場に参画できる点も、大企業にはない圧倒的な成長機会です。自分が作成した資料や立てた仮説が経営判断にそのまま反映されるため、「この仕事が会社の未来を動かしている」という確かな実感が得られます。
また、独立系FASは硬直的な分業体制ではなく、プレイングマネージャー型が主流です。プロジェクト推進の中心で自ら汗を流しつつ、後輩のOJTやプロセス改善にも自由に携われます。改善提案や新サービス企画などで実力が認められれば、早期の昇進も夢ではありません。
「どこまで幅広く経験したか」でキャリアの厚みが決まる独立系FAS。予算管理・クライアント折衝・リスク管理・ナレッジ発信 – 一つ上の総合力を獲得するには絶好のフィールドです。また多種多様なメンバー・顧客と向き合うため、「人を動かす」面白さや「困難を突破する」達成感も日々味わえます。
さらに、成長に比例して年収・報酬も大きく上昇します。近年は人的資本経営・新技術領域の大型案件が急増し、最新分野にどんどんチャレンジできるスリリングさも魅力です。得られる人脈や実績、業界内の信用は将来パートナー・役員・他業界マネージャーなど幅広いキャリアへと広がっていきます。
独立系FASは年度決算期が1月または3月であることが多く、月次・四半期・期末を意識しつつ複数大中小案件の並行管理やナレッジ業務も組み込まれます。年間・月間スケジュールの一例を挙げます。
複数の案件で進行管理とデリバリー品質の維持向上が最重要ミッション。具体的には、財務分析・DD・バリュエーションなど実務チェック、納期管理、進捗遅延・品質劣化等のリスク把握と即時対応が求められます。「納品責任者」として最後の砦でもあります。
クライアントへのレポート説明・提案会議、経営層への直接アプローチ、潜在リスクの早期指摘や課題整理まで。商談前後やトラブル時も「現場代表」として解決を主導し、信頼醸成、再受注や紹介の起点となる役割です。
スタッフの進捗指導、ピープルマネジメント、ナレッジ(事例・失敗談等)共有の場づくり。新サービスの提案・内部改善も仕掛け人として発信し、組織全体の成長を後押しします。
この3本柱が組み合わさって“FASファームの実行力”を体現しています。
年収は900万円〜1,500万円(案件リーダー・売上貢献・人材育成等で上振れ)。ボーナスは成果・評価連動が一般的。
独立系FASはクライアントの状況に応じて柔軟なアドバイスを行える点が監査法人系FASとの大きな違いであり、特に中小企業やオーナー企業との密接な関係構築を得意としています。日本における独立系FAS企業の中でも代表的な企業を紹介します。
日本M&Aセンターは、業界最大級の規模を誇る独立系FAS企業です。主に中堅・中小企業のM&A仲介業務を中心に活動しており、全国各地で豊富なネットワークを構築。企業成長を目的とした戦略的な買収や事業承継を支援すると同時に、経営者同士の信頼関係を重視したサービス提供が特徴です。また、専門性に裏打ちされた合理的なマッチング技術により、高い成約率を誇っています。
M&A仲介という分野において長年の実績を持つレコフは、特に日本国内の企業間取引に定評があります。同社は、ビジネススキームの調整だけでなく、企業価値を最大化するための戦略的な提案が得意です。クロスボーダー案件にも対応しており、国際的なネットワークを活用したサービス展開も進めています。
再生支援やM&Aだけでなく、経営コンサルティングを幅広く手掛ける山田コンサルティンググループ。特に中小企業の事業承継や事業再生に関するアドバイザリーが得意であり、具体的な経営課題の解決に寄り添う姿勢が特徴です。また、企業診断や戦略策定に関する能力の高さから、大手企業の支援業務を担当する機会も増えています。
ストライクは、M&A仲介に特化したサービスを展開している独立系FAS企業です。その強みは、柔軟な対応力とクライアントのニーズを徹底的に追求する姿勢です。中小企業やオーナー企業の事情や価値観を理解し、具体的かつ効果的な提案を提供しています。特定の規模や業種に限定されない幅広いアプローチが評価されています。
中小企業のM&A仲介業務を得意とするM&Aキャピタルパートナーズは、顧客のニーズに応じたオーダーメイド型の提案を提供しています。同社では企業の重要基盤となる経営の安定性や発展性を考慮した上でのサポートが特徴であり、事業承継や買収後のフォローアップにも力を入れています。
案件を“自分ごと”に捉えて最後までやり抜く覚悟が問われる。
現場対応・状況変化・緊急対応で即断即決ができる。
自ら手本となり、周囲と情報共有や学び合いに能動的。
短納期・突発対応・トラブル時も冷静さを保つ強さ。
新会計基準・再生手法・テクノロジーなど常にアップデート。
データや数字を的確に説明・課題設定・顧客納得に導く力。「状況適応×人を動かす情熱×変化を学びに変える姿勢」が必要とされます。成長と現場を楽しめる人にマッチします。
決算・M&A・バリュエーション等の素養が実務レベルで求められる。
多数タスクを遅滞なくQCD管理し高品質でまとめる技量。
与件ヒアリング〜レポーティングまで自走できる。
顧客トップ層へ納得感ある筋道でプレゼンができる。
若手指導、タスクアサイン、ナレッジ伝播ができる。
問題予兆の早期発見・業務改善やマニュアル整備の経験。
「現場の数字と人を“動かして”成果を出す」実務力を武器とすることが求められます。
直前のポジション
その前段階
若手時代
上記複線キャリアの組み合わせで30歳前後の飛び級昇進事例も数多く、圧倒的実務量と現場改善実績が独立系FASマネージャーへの道を拓きます。
まず王道のステップは、マネージャー経験を通じてパートナーへの昇格を目指すルートです。案件獲得力とチームビルディング力を実績として示せば、早ければ40歳前後でパートナーに到達するケースもあります。パートナーは年間報酬が固定給+成果報酬で数千万円超に達し、ファームの経営判断やブランド戦略にも深く関与できる「最終到達点」といえるポジションです。
一方、FASマネージャーで培った能力は事業会社サイドでも高く評価されます。特に上場企業のコーポレート戦略部門やM&A統括室、ひいてはCFO候補としてのオファーが増加しています。独立系ファーム出身者は「客観的な投資目線」「多案件を並走するタフさ」「外部ステークホルダー調整力」が強みとなり、企業内での資本政策や成長投資の意思決定をドライブする役割を担います。報酬は年収1,500万〜3,000万円レンジが一般的ですが、ストックオプションが付与されるスタートアップに移ればキャピタルゲインを含めて一気に億単位を狙える可能性もあります。
さらに、PEファンドやベンチャーキャピタルへの転身も有力です。独立系FASで蓄積したバリュエーションとデューデリジェンスの実務力は、投資判断の根幹を担うアソシエイト〜ディレクタークラスで即戦力となり、キャリアの幅を金融サイドへ拡張できます。また、近年はESG投資やインパクト投資のニーズ拡大に伴い、サステナビリティ領域のアドバイザリーへ専門性を深耕し、社会課題解決型ビジネスへの関与を高める動きも顕著です。
独立起業を選ぶ道も開かれています。FASマネージャーとして案件開拓から実行、クロージングまでの一連を担った実績は、独自のブティックファーム設立やM&A仲介、バリュエーション特化型コンサルティングなどを立ち上げる際の信頼の礎となります。自らの裁量で報酬と働き方を設計し、クライアントの課題解決に深くコミットできる醍醐味は、企業内では得がたい魅力です。
このように独立系FASのマネージャーは、パートナー昇格というゴールを持ちながらも、事業会社CFO、PEファンド、スタートアップ、起業といった複数の華やかな出口戦略を描けます。高度な金融知識と実践的な案件遂行力を掛け合わせ、未来の企業価値創造をリードする存在として、自身のキャリアをダイナミックに拡張できる展望が大いに広がっています。