経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑
組織の信頼と成長を築く、プロフェッショナルの第一歩
内部統制とリスクマネジメントの最前線で活躍
400万円~700万円
※業績や評価によって変動
25歳~40歳
大手上場企業における内部監査部スタッフは、企業活動の健全性と持続的成長を担保するという、非常に責任ある役割を担っています。内部監査の現場は、企業のすべての部門・機能を巡り、業務プロセスや会計処理、ITシステム、リスク管理など、多岐にわたるチェックポイントを持っています。具体的には、現場ヒアリングや業務フロー分析、サンプリング調査、データ分析を通じ、不正・誤謬の防止や効率化の余地、法令順守の実態を明らかにし、経営層へ改善提案を行うことが日常です。
内部監査部スタッフの業務は、計画フェーズからスタートします。年間監査計画を基に、対象部門や拠点を選定し、現場への監査通知・日程調整を行います。監査では、書類やシステムデータを閲覧し、関係者から詳細をヒアリングしてプロセスの適正運用を確認します。典型的な流れは、「業務実地監査→課題の指摘→改善案検討→フィードバック→再確認」というPDCAサイクルです。
日常業務の中で特に重視されるリスク対策としては、「横領・不正・誤集計などの不適切会計の早期発見」や、「コンプライアンス違反・ハラスメント・情報漏えい等の法令遵守違反の抑止」が挙げられます。最近はサイバーリスクやグローバル拠点の監査も増えており、ITシステム監査やデータアナリティクスも重要度を増しています。こうした場面では内部監査独自の視点で、AIによる取引異常検知や統計的手法を駆使し、潜在リスクを多角的に洗い出します。
たとえばある新規事業部門の監査では、急拡大ゆえに承認フローが複数経路化していたことが発覚し、不正リスクを抑えるために「権限分掌の厳格化」「システム承認ルートの自動化」など改善策を提案しました。その後、再監査によって改善効果を定量的にモニタリングします。このように内部監査部スタッフは、単なる“チェック屋”ではなく、企業価値向上を推進する「経営パートナー」の側面も持っています。
日々の業務は現地訪問、リモート監査、書類審査、インタビュー、法令・基準をもとにした資料分析と多岐にわたり、予期せぬ問題解決が求められるスリリングな場面も多くあります。グローバル化が進む大手企業では、海外子会社や取引の監査も増加傾向にあります。法律や規則はもちろん、文化や商習慣の違いまで把握し、総合的なリスク対処力を発揮する必要があります。
内部監査部スタッフは、全社視点で「気づき」と「変革」をもたらす立場です。自らの指摘や提言が経営改革を動かすダイナミズムと、組織全体の信頼を守るミッション感あふれる仕事です。挑戦しがいと意義を体感できる、社会の持続的成長に貢献する力強いキャリアのスタートとなります。
内部監査部スタッフの最も大きな魅力は、「会社全体の健全性と信頼を担保するキーパーソン」であることです。企業活動を多方面から監督・評価する中で、通常の部署では経験できないほど幅広い業務知識・経営感覚を深く養うことができます。その役割は単なる業務チェックにとどまらず、不正・不適切行為を未然に防止し、現場の「より良い組織風土づくり」にも大きく寄与しています。
たとえば内部監査の現場では、営業部門・人事部門・生産現場・IT部門・海外拠点など、実に多様な部門を横断的に経験できます。そのため「各部門の業務に精通したジェネラリスト」として、全社的な信頼を得やすい立場になるのです。経営層との距離も近く、監査結果や課題提案をもとに組織改革・プロジェクトがスタートするなど、自分の仕事が直接会社の成長に結び付く点も大きなやりがいと言えるでしょう。
また、縁の下の力持ちとして「会社を守る」「組織全体の透明性と公正さを高める」ことに徹底して関われるのも、やりがいの源泉です。組織内では他部署と対等に接し、時に厳しい指摘を行うことも必要ですが、真摯なヒアリング・アドバイスによって、現場から「監査部がいてくれてよかった」という信頼を築くことができます。
他のポジションとの違いは、「全社横断・多分野・リスク思考」のスケール感にあります。プロジェクト参画や業務プロセス改善活動を通じて、内部統制・リスク管理・コンプライアンス・効率化など広範なテーマに挑戦できます。不正やリスクの芽をいち早く発見し、透明性ある企業をつくる意義の大きさは計り知れません。
社会的意義も際立っており、ESG(環境・社会・ガバナンス)が重視される昨今、内部監査の意見が機関投資家や監督官庁への信頼醸成にも繋がっています。自分の責任ある指摘・提言が社会全体の安心や公正につながる -そんなダイナミックさと高い専門性、組織を支える誇りがこの職種の大きな魅力です。
このスケジュールは3月決算企業をモデルにしたものです。期末・期首や四半期ごとに監査計画・実施・フォローといったサイクルがあり、臨時監査や不正調査にも随時対応します。
全社・各部門の日常業務フローを細かく分析し、効率性・リスク・内部統制を評価します。不適切な権限分掌や非効率な業務手順、現場のリスク点を洗い出し、運用改善や業務改革の提案を行います。業務の「現場主義」と合理的な分析眼が問われる任務です。
会計処理・財務情報の適正性を監督し、仕訳や決算書、原価計算等をチェックします。不正・誤謬の早期発見、法令・会計基準との整合性検証が主な目的です。外部監査人である監査法人との意見交換や共同調査も担当し、会社の財務健全性を守る役割を果たします。
ERP、財務システム、基幹業務システム等が適切・安全に運用管理されているかを評価します。情報漏えい・サイバー攻撃・システム障害・アクセス権限管理など、最新リスクに備える監査が急増中。デジタル化時代の監査部門で必須任務です。
この3つの重要任務を通じ、全社的な業務改善・リスク低減・信頼性強化に寄与するポジションといえます。
年収レンジは400万円〜700万円ほど。新卒〜30代前半で500万円台前後、監査経験や専門職資格(公認内部監査人CIA、公認会計士CPAなど)を有する場合、中堅層で700万円を超えることもあります。
安定性と成長性を兼ね備えた、専門職として評価される水準です。
企業の健全性や公正さを守るために、不正やルール違反を見逃さず、誠実に業務に向き合う姿勢が必須。取引・業務・会計などあらゆる場面で信頼されるための基盤です。
現場や経営層の意見に流されない独立した視点と判断力。根拠を持った客観的な評価・指摘が求められます。
数値データ、契約書、複雑な業務フローまで、一つひとつの細かい違和感やズレに敏感であること。業務の信頼性を支えます。
時には厳しい指摘や改善提案が必要ですが、現場との信頼関係構築や丁寧なヒアリング、納得感ある説明力が重要です。
法令・業務・IT等日々進化する知識分野への意欲的な学びと、グローバル監査や新しいリスクに果敢に挑戦する気概が求められます。
緊急事態や対立時にも冷静に事実・論点を整理し、社内外圧力に屈しない胆力。淡々と業務を進める安定感が必要です。
これらのマインドは、“企業の砦”として全社から信頼され、難局に対峙できる監査プロフェッショナル人材への成長を後押しします。
各部門の業務内容や会計基準、内部統制フレームワーク(J-SOX等)への理解力がベースとなります。
ERP・会計システムやITログ解析、データ監査技術の活用が必須に。統計的なアプローチも重要です。
明瞭簡潔に課題・改善内容を伝える報告書作成や、経営層へのプレゼン力が欠かせません。
海外拠点監査や、海外法規対応時の英語コミュニケーション力があると活躍領域が広がります。
監査チームの段取り、タスク分担、期日管理や改善進捗フォローなど一連の遂行力も必要です。
事実ベースの課題発見・解決策立案のための分析的・因果推論力が威力を発揮します。
監査は幅広い専門知識・最新リスク対応・論理性・実行力すべてが求められる“総合格闘技”です。これら多様なスキルを磨くことで、プロフェッショナルとして一段上の信頼と成長につながります。
内部監査部スタッフへの道は、会計・業務・IT分野など多様な経歴からひらかれています。
直前ポジション例
その手前の経験
基礎段階
内部監査部スタッフのキャリアは、専門職として幅広い成長と高い市場価値につながります。一定期間の現場経験を積めば、監査リーダー、主任監査員、シニア監査担当、さらには課長・マネジャーへの登用が期待できます。
また、IT監査・グローバル監査のプロフェッショナルや、監査部門から経営企画・リスク管理部門への異動など、「監査を基盤とした横展開カード」も企業内外で豊富です。資格取得(CIA、CPA)や英語力強化を足がかりに、監査法人やコンサル、内部統制アドバイザー、独立監査役等へのキャリア拡大も十分可能です。
近年は、ESG経営の推進役やデジタルトランスフォーメーション(DX)時代の内部統制高度化という新たなトレンドも生まれています。こうした分野での活躍は、社内外で“引く手あまた”の人材へと成長できるチャンスと言えるでしょう。