経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑

会計人材のキャリア名鑑

VCのアナリスト

未来のイノベーションを見抜き、投資するフロントメンバー

日本のスタートアップ企業を発掘・伴走する醍醐味

未経験から最先端ビジネスの起業家を支えるプロフェッショナルへ

主な業務内容

  • スタートアップ企業や市場のリサーチ・分析、投資候補の発掘
  • 投資先企業の財務・ビジネスモデル検証、バリュエーションの作成
  • 投資実行サポート、投資後の成長支援やレポーティング

想定年収

400万円~800万円
※業績や評価、ファンド規模、経験・スキルで変動

想定年齢

22歳~30歳

VCのアナリストは こんな仕事

ベンチャーキャピタル(VC)のアナリストは、革新を起こすスタートアップ企業や次世代を担う起業家を見つけ出し、その成長に投資する実践型プロフェッショナルです。日々飛び込んでくる新しいビジネスモデル、まだ世界にない技術やサービス、多種多様な経営者との出会いが繰り返され、毎日が「未来を形作る一歩」に満ちています。

アナリストはただお金を動かすだけでなく、企業や業界の変化の兆しに目を光らせます。業界動向や最先端技術、社会課題と新ビジネスの接点、市場トレンドなどを貪欲にリサーチし、伸びる企業の要素は何か、チームの先輩のサポートを受けながら、答えを導き出します。スタートアップ企業の経営者が参画するピッチイベントへの参加や、ソーシング(投資先候補探し)、日々の面談のセッティングも重要な業務です。

プロジェクトの流れとしては、まず広範な情報収集・独自のトレンド分析から有望なスタートアップ企業候補のリストアップ、経営者インタビュー、事業・財務モデルの分析・検証と進みます。投資決定プロセスでは、バリュエーションモデル(企業価値評価)の作成、ユニットエコノミクスの検証も行います。リスク管理の観点で、「製品開発が遅延する時の資金繰り」「競合が急増した時のマーケットシェア」「組織ガバナンスの脆弱性」などの具体的な懸念を一つひとつ精査します。トラブル発見時にはチームや投資先経営陣と連携し、リスク再評価・追加調査・必要時には外部エキスパートを巻き込んだ議論の場を設定します。

投資実行後にも伴走型支援が続きます。KPI進捗管理や競合状況レポート作成、起業家の壁打ち相手となるなど、経営者視点を学びながらVC内の経験豊かなパートナー陣とも意見交換できる絶好の環境です。未経験からでも日々のトライ&エラーが許され、チャレンジに満ちたキャリアを歩むことができます。

VCのアナリストという ポジションの魅力

VCのアナリストは、未来を創る起業家・イノベーターたちの最初の支援者であり、共に「夢の実現」を後押しできるポジションです。革新的なビジネスモデルや新しいマーケット、テクノロジーが生まれる瞬間に真っ先に立ち会い、その成長を現場で自ら感じられるのが最大の魅力です。

自分の仮説・調査が、先輩アソシエイトなどの見解を踏まえ、ファンドの投資判断材料になり、時には日本経済や生活スタイルそのものにも大きなインパクトを与えます。このダイナミックな体験は他の仕事ではなかなか味わえません。

また、扱う案件の幅広さ、スタートアップ企業の経営陣とゼロ距離で議論できる近さも大きな魅力です。アナリストの段階から情報収集・投資判断・投資実行・経営支援・EXIT(株式売却や上場)まで、多様なプロセスのいずれにも当事者意識を持って携わることができます。データ分析力や戦略思考だけでなく、起業家の情熱・苦悩・成長を間近で見ながら、人を信じる力・見抜く力が養われます。

ダイバーシティに富んだ職場環境や、まだ正解のない未来を自ら設計していく面白さも特徴です。新しいビジネス領域を発掘し、日本から世界へというグローバルな可能性を日々感じられる職種です。変化のスピードや失敗も多いからこそ、本質を見抜き、誰よりも早く行動する主体性が評価されます。

そして、VCファンドのアナリストは、将来的にパートナーや起業家、ビジネスリーダー、上場企業の新規事業責任者などへのキャリア展開も可能です。未経験からでも一歩先を行く成長環境が整っており、自分の実力や価値を高めたい人にとって唯一無二のチャンスに満ちています。

VCのアナリストの 年間スケジュール例

ここでは3月決算、国内大手VC(複数投資案件・伴走型支援)を想定した年間スケジュール例を紹介します。

【4月】

  • 新年度投資戦略会議・重点テーマ分析
  • 新規スタートアップリストアップ、ピッチイベント情報収集
  • 前年度投資先の決算評価まとめ

【5月】

  • スタートアップ面談・オフィス訪問
  • 初期調査・投資候補リスト精査
  • 業界動向レポート作成

【6月】

  • デュー・デリジェンス(DD)実行(ビジネスモデル・財務等)
  • 外部専門家ヒアリング、競合分析
  • 初期バリュエーションモデル作成

【7月】

  • 投資委員会資料作成サポート
  • 起業家への質疑応答・最終面談
  • 契約/クロージング諸手続

【8月】

  • 投資決定案件の実行・資金送金
  • 新規投資先向けKPI・モニタリングスキーム設計
  • 社内報告資料・事例共有会

【9月】

  • 既存投資先への定例フォローアップ
  • ポートフォリオ横断型市場分析
  • 次世代投資テーマ検討

【10月】

  • 起業家勉強会・イベント運営サポート
  • 投資先経営会議出席・課題ヒアリング
  • EXIT(IPO・M&A)案件の進捗確認

【11月】

  • 追加投資案件の初期評価
  • 新分野・海外案件のリサーチ
  • 投資先との定例コミュニケーション

【12月】

  • 投資委員会向け年間成果サマリー資料作成
  • 年末業界トレンド分析
  • 社内(パートナー層)との1on1レビュー

【1月】

  • 新年度投資予算・方針準備
  • ピッチイベント運営サポート・エントリー審査
  • 投資候補企業分析

【2月】

  • 投資先マイルストーンレビュー・レポート更新
  • 新規面談/インキュベーションプログラム参加
  • 業務効率化プロジェクト

【3月】

  • 決算業務補助・投資先財務評価
  • EXIT候補の検討・事例調査
  • 年度総括・成果発表会

定例業務

  • 週次の投資委員会・案件進捗ミーティング
  • スタートアップ面談・起業家フォローアップ
  • 投資先KPIデータ収集・レポーティング

臨時に発生する業務

  • 投資先経営課題発見時の追加ヒアリング・資料収集
  • 資本政策やストックオプション設計のサポート
  • ピッチイベントや外部カンファレンスへの急な参加・発表

VCのアナリストの 重要任務

一人ひとりがファンド運営の成否を左右する存在であり、チームの知見とアイディアが案件創出の源泉となります。

1.スタートアップ発掘・初期分析

市場調査・業界勉強だけでなく、イベントやネットワーキングを通じて起業家・企業へ積極的にアプローチします。ピッチ内容や事業計画を読み解き、伸びしろ・競争優位性を見極めます。他社VCや業界キーパーソンとの情報交換も日常業務です。ここでの「目利き力」がファンド全体の成果を左右します。

2.デューデリジェンス・バリュエーション作成

投資候補の詳細分析段階では、ビジネスモデルや顧客インタビュー、財務モデリング、競合比較など多角的な視点でリスクと成長可能性を同時に検証します。VCパートナー層の意思決定を下支えする「冷静さと熱意のバランス」が不可欠です。

3.投資後モニタリング・成長支援

投資実行後は投資先との定例ミーティングや進捗レビュー、課題抽出、場合によっては追加資金調達や経営人材の紹介、マーケティング/営業戦略の壁打ち、資本政策設計への改善提案なども担当。EXIT(IPO・M&A)に向けて伴走します。

VCのアナリストの 報酬水準

■報酬概要

日系ファンドの新卒・未経験の場合:400万円~600万円
数年のキャリア・高度なスキルを持つ場合:600万円~800万円が一般的
外資系・大規模VCや有力個人系ファンドでは年収800万円超スタートもあり

■報酬構成

  • 基本給(多くは月額給与制)
  • 年次賞与(個人・ファンド業績連動、数十万円~100万円台)
  • インセンティブ(EXIT実績連動型の特別ボーナス、ストックオプション付与例も)
  • 各種社会保険・福利厚生

変動要因

  • 担当案件数・成績(EXIT数や案件規模)
  • 英語力やIT・技術バックグラウンド等の希少スキル
  • ファンドの規模感、本人のコミット度など

■トレンド

  • 若手層育成・IT人材争奪で“初年度から500万円超”も珍しくない
  • インセンティブ比率が上昇傾向。EXIT実績によっては数百万円単位の上乗せもあり
  • ワークライフバランスや副業容認、学び直し支援など多様な制度も浸透

VCのアナリストに 向いている人は、どんな人?

1 好奇心・学習意欲

     新しいテクノロジーや事業、業界動向を自ら面白がれる力
  変化を積極的に楽しみ、未知の分野も前向きに学べる精神

2 チャレンジ精神・主体性  

     型破りな起業家や新規事業に自分から飛び込む姿勢
 上司任せではなく、自分発の課題発見・提案・仮説検証

3 責任感・共感力

 起業家や投資先の悩みに寄り添い、伴走者となる誠実な姿勢
 丁寧なヒアリングやサポートで信頼を築く力

4 論理的思考力と事業センス

 データや事実に基づいた冷静な判断と、この事業は伸びるという直感力
 説得力ある分析・提言が求められる

5 チームワーク・コミュニケーション

 上下や外部パートナーと素早く情報共有・協働できる
 良い企画・知見を惜しみなく仲間にオープンにできる

6 柔軟性と粘り強さ

 市場環境や担当案件の急変に臨機応変に対応
 諦めず何度もトライし続ける高い意志

VCのアナリストは「探究心=知的ワクワク」と「現場志向」が両立した人材向きと言えます。トライ&エラーの繰り返しと、変化と挑戦を面白がる姿勢が成長を加速させるでしょう。

1 情報収集・リサーチ力

 - 公式・非公式情報の取得、国内外の業界トレンド把握
 - 競合や市場・ユーザー動向の多面的収集

2 財務分析・バリュエーション

 - 損益計算書やKPI分解、資本政策の理解
 - スタートアップ特有のバリュエーション手法(マルチプル法、シナリオ分析等)

3 ビジネスモデル設計・分析力

 - サービス/商品/マーケットの成長仮説立て、競合比較
 - 事業計画づくり支援(Excel、PPT等活用)

4 プレゼン・資料作成スキル

 - 社内外向け投資委員会、起業家向けスライド資料の作成
 - 複雑な情報を整理・視覚化し説得力を高める

5 コミュニケーション・ヒアリング力

 - 起業家やファンドメンバー、社外専門家との議論
 - タイムリーで双方向的な情報交換

6 業務管理・タスク進行力

 - 複数案件を同時並行で進め、納期や優先順位を自分で設定
 - タスク漏れ防止や要所でのセルフチェック

7 語学力(英語力)

 - 海外スタートアップやグローバル投資家とのやり取りが増加
 - 技術レポートや契約書の読解、クロスボーダー案件で活躍


「現場で使える分析力」と「ビジネス目線のリサーチ」はどの領域でも通用するスキルと言えるでしょう。

VCのアナリストまでの 道のり

直前に多いポジションは、以下になります。

  • VCでのインターン経験者、アナリスト職
  • シードスタートアップやベンチャー企業の経営支援スタッフ
  • 金融機関(銀行・証券)やコンサルファームの若手

さらにその手前は、以下のキャリアが考えられます。

  • 大学・大学院時代のビジネス/経済専攻
  • 起業・新規事業立ち上げサークルやビジコン経験者
  • 大手メーカー・IT企業での事業開発・企画部経験

社内登用や、VCファンド・投資部門へ異動する例も。近年は社会人未経験者や大学卒業生を対象としたVCアナリスト・インターンシップも活発です。大切なのは、好奇心と「自ら考え抜き・提案できる力」。若手時代にはロジカルシンキングやPDCA習慣・Excel/PPTの基礎力を磨くことが必要とされます。

VCのアナリストの キャリアパスの展望

VCのアナリストとして得た知見は、多様なキャリアへの扉を開きます。実際の投資案件や日々のリサーチ活動で数多くの起業家、経営人材、先端市場との接触機会を重ねるため、3〜5年で他ファンドへの昇進やアソシエイト、シニアアナリスト、パートナーへ階段を駆け上がる道筋は王道です。

また、スタートアップ企業にCOO/CFO待遇で転職・転身したり、社内の新規事業責任者やアクセラレータープログラム運営なども王道ですが、近年は自ら起業し「起業家」側にまわる人もでてきています。投資銀行や経営コンサルタント、PEファンド、テック企業の戦略部門やグローバル事業開発にもキャリア展開できます。

英語や専門スキルを活用すれば、クロスボーダー投資や大手外資VCへのステップアップも十分射程圏内。日本のイノベーションを世界に広げる仕掛け人として、どこまでも未来が開かれています。

まとめ

役割と責任

  • スタートアップ発掘・分析・投資判断から伴走支援まで多岐にわたる新産業創出の牽引役
  • 変化の最前線で「未来」を自ら切り拓く責任

求められるマインドやスキル

  • 好奇心・主体性・論理的思考・責任感・柔軟性・チームワーク
  • 情報収集/リサーチ・財務分析・ビジネスモデル設計・プレゼンなどマルチスキル

重要な職務

  • スタートアップ発掘・初期分析
  • デューデリジェンス・バリュエーション作成
  • 投資後モニタリング・成長支援

キャリアパス

  • アナリスト→アソシエイト→シニア→パートナーという社内でのキャリアアップ
  • スタートアップ企業のCFOや投資銀行、経営コンサルタント、PEファンド、テック企業の戦略部門、独立起業など多様なキャリアチェンジによるキャリアパス