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【特別コラム連載】会計ファイナンス人材×AI 第3回 AIの歴史

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コラム

外山:みなさん、こんにちは。今回は、AIの歴史についてお話ししたいと思います。AIの過去の歴史を知れば、現在のAI業界の見え方も変わってくると思いますよ。

鈴木:よろしくお願いします。AIはここ最近の技術だと思っていましたが、歴史があるんですね。

外山:実は、意外と長い歴史があります。どこからお話しするか悩むところですが、一般的には、ダートマス会議の話から始めることが多いようですね。

鈴木:歴史が会議から始まるのは意外でした。

外山:ダートマス会議というのは、コンピューターを使って知能を再現することをテーマとした学会のようなものですね。1956年に、アメリカのダートマス大学で行われました。この会議において、歴史上初めて「Artificial Intelligence(AI)」という言葉が使われたのです。

鈴木:ダートマス会議からAIという言葉が生まれたのですね。でも、1956年は、日本でいえば昭和31年ですね。そのような時代にコンピューターはすでにあったのですか?

外山:一般に「世界初の汎用電子式コンピューター」呼ばれるENIAC(エニアック)は、1946年にアメリカで開発されました。重量は約27トンで、大量の真空管を使っているので、現在のコンピューターとはかなり違った外観でした。

1956年の段階でも、まだ主流は真空管式だったようで、「巨大な計算機」の域を出ないものでした。

鈴木:すでにコンピューターはあったのですね。そのような時代にすでにAIについて考えられていたというのは意外でした。

外山:黎明期のコンピューターやAIには、天才的な人々が数多く関わっていました。彼らは、計算機に人間のような知性が宿ることを予想していたのです。例えば、アラン・チューリングという人は、1950年の時点で、コンピューターが十分に知的かを判定する方法について考案しています。

鈴木:コンピューターが知的か否か、どのように判定するのですか?

外山:簡単に言えば、コンピューターを相手にチャットをして、人間と区別がつかなければ、そのコンピューターは人間に匹敵する知的存在である…というわけです。これを「チューリング・テスト」と呼びます。

鈴木:コンピューターが「人間と普通に話せれば知的」ということですか?

外山:そうですね。ChatGPTが登場した今となっては普通に感じますが、コンピューターと言葉でコミュニケーションをするという発想自体が当時は斬新だったのです。

鈴木:たしかに。まだコンピューターが登場したばかりの時代と考えると、天才的な発想ですね。

外山:ダートマス会議にも伝説的な天才がたくさん関与していますよ。主催者はジョン・マッカーシーで、中心となったメンバーには、「人工知能の父」ことマービン・ミンスキーや、クロード・シャノンなどもいます。

鈴木:一人も知らないです…

外山:クロード・シャノンは、前回話題にあがった、アンソロピック社のClaude(クロード)というAIの名前の元になった人です。「情報理論の父」と呼ばれる人物で、情報という概念を数値として扱えるように定義したという、歴史的な業績があります。

鈴木:「〇〇の父」と呼ばれる方が多いですね…

外山:まさに、現在のITの基礎を作り上げたと言っても良い人たちですからね。

ダートマス会議は、開催に関わった中心人物たち以外にも、そうそうたる顔ぶれが参加しています。その内容も画期的で、ニューラルネットワークなど、現在のAIに直結する技術についても話し合われたようですよ。

鈴木:ニューラルネットワークは、AIのニュースで見たことあります。最近の技術だと思っていましたが、かなり前からあったのですね。たしか、人間の脳と関係があると聞いたことがあります。

外山:本来、ニューラルネットワークというのは、脳の神経細胞のネットワークのことです。脳にはニューロンという神経細胞があって、それらをシナプスが接続しているのですが、そのような構造をニューラルネットワークというのです。

AIの世界でいうニューラルネットワークとは、脳の構造を模倣したプログラムです。ですから、「”人工”ニューラルネットワーク」などと呼ぶべきだと思いますが、最近は、ニューラルネットワークといえば、AIの方を指す場合が多くなりました。

鈴木:コンピューター自体は、普通のものと変わらないのですか?

外山:そうです。ニューラルネットワークは、あくまでソフトウェアのレベルの話なので、ハードウェアは通常のコンピューターで問題ありません。Windowsが載ったPCでも、ニューラルネットワークのプログラムを動かすことはできます。

鈴木:ニューラルネットワーク専用のコンピューターを使うのかと思っていました…

外山:そういう誤解は意外と多いかもしれませんね。

ちなみに、ニューラルネットワークの起源は、1943年に、神経生理学者で外科医であるウォーレン・マカロックと、論理学者・数学者のウォルター・ピッツが考案した「形式ニューロン」に遡ることができます。形式ニューロンの論文を発表したとき、ピッツはまだ20歳でした。

鈴木:当時の天才たちが、コンピューターも開発し、ニューラルネットワークなどの理論ができあがり、AIはここから一気に盛り上がっていくのですね!

外山:たしかに、このダートマス会議によって、第1次AIブームが花開きます。

この時代のAIの中心は、推論や探索ですね。コンピューターの計算能力を使って、複雑な問題の答えを効率的に探しまくる…というものです。チェスなどのゲームの他、数式や言語などでも用いられ、人間よりも早く正確に最適解にたどりつくこともできました。

鈴木:コンピューターで計算して答えを探すというのは、力技みたいな気もします…

外山:たしかに、「計算」などと言うと力技に感じるかもしれませんが、AIというのは、基本的には計算によって答えを見つけるものです。特に当時は、コンピューターが物を考えているような振る舞いをするというだけでも、大きな驚きをもって迎えられました。

鈴木:理解できました。そのAIには、ニューラルネットワークが使われていたのですか?

外山:いえ、実は第1次AIブームの探索や推論には、ニューラルネットワークとは別の技術が使われていました。ニューラルネットワークは主役にはなれなかったのです。

パーセプトロン」という、非常に単純なニューラルネットワークは登場して、注目もされたのですが、扱える論理のパターンが限られていて、複雑な問題は解くことができなかったのです。

また、ニューラルネットワークにしろ、推論・探索にしろ、高い計算能力が必要なのですが、当時のコンピューターは貧弱すぎました。そうしたさまざまな限界に突き当たり、AI研究は徐々に活気を失っていきます。そして、「AI冬の時代」と呼ばれる期間が訪れます。

鈴木:ずっと順風満帆というわけではなかったのですね。

ここから今のAIブームまで、冬の時代が続いていくのですか?

外山:いえ、その前に、第2次AIブームというのが到来します。1980年代の話ですね。

今度の主役は、「エキスパートシステム」といって、人間の専門家の知識を用いてルールを作り、それによって推論させるという仕組みです。

鈴木:人間の専門家が作ったデータを「学習」させるということですか?

外山:AIといえば「学習」…といきたいところですが、エキスパートシステムは、AIが自分で学習するようなものではありません。人間の手によって、知識やルールを、プログラムの形式で記述したのです。

鈴木:もう少しわかりやすく教えてください。

外山:つまり、AIがさまざまな質問に答えられるように、専門的な知識をあらかじめコンピューターに与えておくイメージです。それに加えて、質問に対してどのように考えるべきかのルールも与えます。

鈴木:質問に対する答えのパターンを、あらかじめ人間の手でたくさん与えるってことでしょうか?いくら与えても足りない気がします。

外山:その通りで、一定の成果はあげたものの、このような方法では限界がありました。

いくら様々なパターンを書き連ねていっても全てを網羅することはできませんし、それらが組み合わさったりすると、パターンは膨れ上がり、処理に時間がかかりすぎます。このような問題を「フレーム問題」ともいいます。

余談ですが、第2次AIブームの末期くらいに発売された、ファミコン用ゲーム『ドラゴンクエストⅣ』では、AIが使われていることが大きな話題となりました。このAIは、さまざまな行動パターンがあらかじめプログラム内で設定されたもので、エキスパートシステム的なAIといえます。ゲームのように、パターンがかなり絞れる用途なら、このようなアプローチも上手くいったのですけど…

鈴木:回答のパターンをあらかじめ全部与えるというのは、さすがに無理があると思います。

しかし、そのエキスパートシステムの仕組みは、現代のAIとは違いますよね?ニューラルネットワークはどうなったのでしょうか?まだ複雑な問題は解けないままなのですか?

外山:実は重要な進歩がありました。先ほど言ったパーセプトロンを組みあわせ、多層構造にすることで、複雑な論理パターンの問題を解けるようになったのです。さらに、AI界のレジェンドであるジェフリー・ヒントンらによって、ニューラルネットワークにデータを効率的に学習させることも可能になりました。

鈴木:いよいよ学習することもできるようになったのですね。現代のAIに近づいてきています。

外山:ニューラルネットワークというのは、原理的には、大きくなれば賢くなるものです。それは、脳が大きいほど賢いというのと同じようなものだといえます。これをスケーリング則などとも言います。

ところが、ニューラルネットワークの層を増やし、大きくすると、学習がうまくいかなくなるという問題が発生したのです。

鈴木:学習がうまくできないのでは、大きくしても意味がないのではないでしょうか?

外山:そうなのです。理由は後続の回で説明しますが、大きくすると学習に失敗してしまうため、結果的に、小さな、層の浅いニューラルネットワークしか作ることができないという事態に陥ります。

「手書きの数字を読み取る」とかの簡単なタスクなら成功するものの、層の浅いニューラルネットワークでは、処理できる内容に限界があったのです。

鈴木:多層構造にして、大きなニューラルネットワークにすれば、賢くなるということは分かっているのに、それだと学習が上手くいかないということなんですね。

エキスパートシステムやニューラルネットワークがうまくいかなかったということは、また冬の時代が来たのですか。

外山:はい。2度目のAI冬の時代が来てしまいました…。

ただ、今回の冬の時代の間には、インターネットが一般利用されたり、GPUが登場したり、ITを取り巻く環境にも大きな変化がありました。第2次AIブームの課題だった、大量のデータの収集や、高速な計算などが可能になっていったのです。

鈴木:ようやくニューラルネットワークの時代が来るのですね。

外山:IT環境の変化が整い、いよいよ現在に続く「第3次AIブーム」が到来するのですが…ここから先は、次回以降のお楽しみということで。


この記事の監修者
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外山 哲郎

有限責任パートナーズ綜合監査法人

金融系、ゲーム系、など幅広い分野でスマートフォンアプリやWebサイトの開発に携わる。 2017年からAI業務に従事。データ分析や、医療の分野でのAI活用の研究・開発などに携わる。 ライターとしても活動(ニコニコニュース(ニコニコ動画))。 2024年7月 有限責任パートナーズ綜合監査法人入所。 現在は、IT専門家として監査業務に携わる他、法人内のDXおよびAI活用を推進している。

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鈴木 爽矢

有限責任パートナーズ綜合監査法人

2022年大学3年生時に公認会計士試験合格。 大学時代にはCPA会計学院で監査論のチューター及び広報部のマーケティング業務を行う。 その後大手監査法人、コンサルティング会社を経て現職の有限責任パートナーズ綜合監査法人に入所。 現在は主に、IPO準備会社や上場企業の会計監査に従事し、財務デューデリジェンスなどの非監査業務にも携わっている。

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