経理・財務・会計ファイナンス人材のためのキャリア名鑑

会計人材のキャリア名鑑

中小企業のCEO

「日本の屋台骨を支える中小企業の先導役」

変化の時代に企業をリードするトップの役割と醍醐味

少数精鋭だから実現できる“決断”と“成長の体感”

主な業務内容

  • 全社経営戦略の立案と実行、事業計画・予算策定と進捗管理
  • 現場・管理職へのリーダーシップ発揮、組織風土づくり
  • 顧客・取引先との関係強化、新規事業や新市場開拓・経営課題へのスピード対応

想定年収

600万円~2,500万円
※業績や評価によって変動

想定年齢

35歳~65歳

中小企業のCEOは こんな仕事

中小企業のCEO(最高経営責任者)は、自社のビジョンを掲げ、事業戦略の立案・実行を通じ、変化の激しい社会・マーケットで持続的成長を目指す旗振り役です。大企業のような専門組織が少ない分、経営全体を俯瞰しつつ、「現場」と「経営」を行ったり来たりしながら一つひとつの決断に責任を持つダイナミックな仕事です。

CEOの一日はとても多様です。朝は全社朝礼や現場ミーティングで組織の雰囲気を肌で感じ、その後は来客対応・経営会議・財務報告・新規プロジェクト検討と、分刻みのスケジュールで社内外を行き来します。主要なプロジェクトには必ず顔を出し、都度業績や問題点、社員の声に直接向き合います。

事業計画の策定、予算編成や資金調達、主要取引先とのトップ面談など判断の連続です。経営環境が悪化すれば人員の見直しや新規投資、事業転換を自ら意思決定します。また、大規模な意思決定の裏には常にリスクの存在があります。たとえば新市場参入の場合、競合・自社資源・予算・法規制リスクを同時にチェックし、外部アドバイザーや部内幹部とのシミュレーションを重ねます。経営数字の異常値や新しいトレンドを見逃さず、必要であれば現場の最前線へ赴くことも珍しくありません。

ITシステムの導入、社内ルールの制定・改廃、採用・育成計画のアップデート、社外イベントや取引銀行・自治体などとの折衝もCEOの大切な仕事です。特に中小企業CEOは、社外ネットワークを積極的に拡げ、業界動向や法改正、補助金制度の活用、新技術導入など外部の変化をキャッチアップし、企業成長のカギに変えます。

日々めまぐるしい業務に追われながらも、自分の理念や自社の従業員、地元社会に対する使命感を前向きなエネルギーに変える。それが中小企業CEOという仕事です。まさに「自分事」と「社会的責任」が重なる、チャレンジングなやりがいが詰まったフィールドと言えるでしょう。

中小企業のCEOという ポジションの魅力

中小企業のCEOの魅力は、何より自分の意思と行動がダイレクトに会社の成果や存在意義、そして従業員や顧客、地域社会の未来に繋がる点にあります。大手企業のように厳密な分業・階層構造がないため、現場スタッフからエグゼクティブ、さらには外部パートナーや行政まで、あらゆるステークホルダーと密接に関わり合うのが特徴です。

このポジションでは、経営戦略や新規事業開発、M&A、組織改革など企業生命を左右する意思決定を日々行います。それだけでなく、現場社員と同じ目線で課題解決や改革推進を行い、試行錯誤を体感できるのは中小企業ならではです。

全てが自分事となるため、「やりたいこと、実現したいビジョン」を経営判断で形にできる自由度の高さ、スピード感、ダイナミズムは他の仕事で味わえません。新しいプロジェクトの立ち上げ、事業の撤退や再編、SDGs/ESG/働き方改革への挑戦、次世代経営者の育成など、無限の可能性が広がります。

さらに、会社の規模感がコンパクトである分、成果が見えやすく、社員や利用者から直接「ありがとう」という感謝の言葉や、社会的信頼を得られている実感があることも大きなやりがいです。場合によっては、オーナー経営者として資産形成や事業承継、M&A・上場なども目指せます。地域密着型なら地元産業や雇用創出に対する貢献実感もダイレクトに感じられます。

中小企業CEOは、経営者・事業リーダー・生活者すべての視点が求められ、ゼロイチの変革と地道な現場の泥臭さが同時に味わえます。

中小企業のCEOの 年間スケジュール例

3月決算、従業員50名規模の製造業を想定したCEOの年間スケジュール例をご紹介します。

4月

  • 新年度経営方針発表、全社朝礼・従業員へのメッセージ
  • 市場調査・年度新商品企画の承認
  • 仕入・設備契約の見直し、取引先キックオフミーティング

5月

  • ゴールデンウィーク休暇明けの現場巡回
  • 前期決算振り返りと全社報告会
  • 顧客向け新サービス説明会・営業同行

6月

  • 経営会議(月次業績レビュー・課題抽出)
  • 金融機関との面談・資金繰り協議
  • 夏季新卒採用・職場見学会実施準備

7月

  • 新グループリーダー研修・昇進者面談
  • 社員懇親会(社内コミュニケーション活性化)
  • 地域イベントや異業種交流会への参加

8月

  • 設備投資案件の現場確認・承認
  • 夏季休暇時のBCP(事業継続計画)点検
  • 現場工程改善PJの進捗確認

9月

  • 中間決算の準備・期首計画見直し検討
  • 顧客アンケートの回収とマーケティング分析
  • 地元自治体・産業団体と合同会議

10月

  • 期中幹部会・経営方針の再確認
  • 新製品開発プロジェクトの中間レビュー
  • 応募された新卒学生への職場見学会・社員座談会

11月

  • 組織改編・人員配置見直し
  • 主要取引先との事業戦略会議
  • 営業会議(下期営業方針策定)

12月

  • 年末商戦商品・生産計画の検討
  • フルメンバー現場巡回・従業員へのメッセージカード手渡し
  • 年末調整・賞与計算最終チェック

1月

  • 社員向け新年メッセージ・キックオフ朝礼
  • 経営計画の社外顧問・役員とのすり合わせ
  • 社員表彰式・目標共有

2月

  • 新年度事業計画のブラッシュアップ
  • 次年度予算組み・新投資案件の精査
  • 主要顧客訪問・ヒアリング

3月

  • 確定申告・決算打合せ
  • 総括会議・業績評価面談
  • 新年度プロジェクトキックオフ

定例業務

  • 週次:経営会議、現場朝礼/現場巡回、営業/管理/技術リーダーとの個別面談
  • 月次:全社会議、取引先・顧問ミーティング、主要KPIレビュー
  • 随時:新プロジェクト推進・顧客クレーム/危機対応・社員面接

臨時に発生する業務

  • 新規大型案件/トラブル時の緊急対応
  • 金融機関・株主等との臨時打合せ
  • 社内外イベント・メディア対応・SDGs/ESG関連の急な審議

中小企業のCEOの 重要任務

全ての経営資源を動かし企業を永続的成長へと導く全責任者として3つの任務を担います。

1.経営戦略の立案と現場実行の推進

市場環境・業界変化を俯瞰しつつ、会社の強みと弱みを自ら把握します。売上成長・利益創出を見据えた新規事業・既存事業拡大の意思決定から、実行現場への即時フィードバックまで担います。トップダウンだけでなく現場目線や全社を巻き込むことが不可欠です。

2.組織マネジメント・人材育成・働き方改革推進

採用・定着・育成・評価・働き方改革まで担います。人の力こそ中小企業の最大の資源です。社員一人ひとりのやる気醸成、若手リーダー抜擢、女性活躍推進等、現場と現実を見極めた柔軟なマネジメントが成功のカギです。

3.企業価値・ガバナンス向上とリスクマネジメント

資金調達・財務バランスの健全化、ステークホルダー調整、不正防止や法令順守体制づくりはもちろん、災害やパンデミック等の突発リスク対応までのリスクマネジメントも重要です。株主・地域社会・従業員への説明責任を果たし、この会社が永続的に存続・成長する信頼構築を最重視します。

中小企業のCEOの 報酬水準

報酬概要

  • 年収600万~2,500万円(多くは1,000万円前後がボリュームゾーン)
  • 社長・CEOはオーナー兼務の場合、役員報酬に加え配当・ストックオプション・不動産収入を持つ場合もあります。

報酬構成

  • 役員報酬(月給+ボーナス、月額30万~100万円規模が多い)
  • 業績連動賞与(利益・売上目標到達による加算)
  • 配当収入(自社株式保有時)、持株・ストックオプション等
  • 経費(社用車・交際費・福利厚生)含む

変動要因

  • 事業モデル(製造/IT/サービス等)・地域性・規模・景気動向
  • CEOの任期・就任形態(オーナー・雇われ・創業家等)
  • 経営実績(売上利益成長・新規事業/業績V字回復等)

報酬トレンド

  • 業界内での同規模他社比較が主流
  • 成果主義の強化、ガバナンス強化で報酬透明化が進展
  • 経営陣退職後の社外役員登用やM&A事業売却による資産形成事例も

中小企業のCEOに 向いている人は、どんな人?

■求められるマインド

1.主体性・決断力

会社を自分事として捉え、全ての意思決定を自分で引き受ける強さと躊躇せず行動する姿勢。

2.責任感と覚悟

経営悪化・危機的状況でも逃げず、最後までやり抜く持久力とストレス耐性。

3.現場・顧客志向

机上の理論より「現場の声」を尊重し、常に顧客・スタッフ目線で判断。

4.成長・学習意欲

新しい知識・スキルの貪欲な吸収。異業界・異分野の事例にも常にアンテナを張る。

5.巻き込み力・共感力

社員・取引先・地域社会など多様なステークホルダーに目的・目標を示し、共に動かすリーダーシップ。

6.柔軟性・チャレンジ精神

環境変化や失敗も面白がり、現状維持に満足せず成長へ貪欲な姿勢。

7.誠実さ・倫理観

どんな時でもルール・法令を守り、透明な経営で信頼構築。


中小企業CEOは、現場主義で未来志向であることが求められます。自己責任と大きな裁量にワクワクするタイプの人には最高のフィールドです。

■必要なスキル

1.事業戦略立案・実行力

市場環境分析、事業計画・KPI設計、トレンド把握と地に足の着いた意思決定をする力。

2.財務・経営管理力

予算編成、資金繰り管理、利益管理、銀行/投資家折衝力。

3.人材・組織マネジメント

採用・育成・評価、ダイバーシティ推進、組織文化改革。

4.コミュニケーション・ネゴシエーション

全方向型の対話と折衝、プレゼンテーション能力。

5.課題解決・プロジェクト推進力

問題発見力、計画実行/軌道修正の俊敏性。

6.デジタル・ITリテラシー

基本的なIT活用、デジタルツール導入・推進。

7.リスクマネジメント・法務基礎

危機管理、労務・コンプライアンス・各種法律の基礎知識。


「全社をマネジメントするための総合力」と「人・資金・組織・時代を動かす実践力」を両立することで一流のCEOに近づけます。

中小企業のCEOまでの 道のり

中小企業のCEOを目指すまでの道はさまざまです。

まず直前に想定されるポジションとしては、以下があります。

  • 取締役、執行役員、事業部長、工場長、営業本部長など幹部層
  • スタートアップ創業者(またはCOO、CFO等)

さらに一歩手前では、以下のキャリアが考えられます。

  • 課長・次長・部長等の管理職で部下育成、PL/プロジェクトマネジメント経験
  • 新規事業立ち上げ、プロダクトオーナー、工場新設、海外事業展開など中心ミッションの実行

社外からの登用(外部コンサル・事業会社経営層転職)や家業承継、M&Aでの社長選任パターンもあります。

現場主義のマインドを持ち、経営者としての意思決定経験を備えることで、中小企業のCEOへ近づくことが出来るでしょう。

中小企業のCEOの キャリアパスの展望

CEO経験はどの業種業態でも極めて強い経営キャリアの証です。事業成長・変革・再生・新規上場やM&A売却などを成し遂げれば、他社の取締役・相談役・社外役員やスタートアップ支援、さらに自身で複数事業のオーナー経営へ展開する道も広がります。

成長企業の場合はメガベンチャー・大企業経営層への転身や、グループ会社/海外現地法人のトップへの抜擢、自治体や業界団体・審議会への委員就任例も多数あります。失敗や撤退経験ですら、後の経営再生プロジェクトや事業承継ニーズの高まりにその後のキャリアの成功に役立ちます。

何よりも「自らの意思で組織を動かした経験」や「正解のない中で未来を切り拓いた実践力」は、多様なフィールドで市場価値を発揮できる資産となります。挑戦を続ける限り、年齢・業種に関係なく、いくつもの次なる“頂”へ進める開かれたキャリアです。

まとめ

役割と責任

  • 経営戦略立案から現場実行、組織づくり、リスク対応、価値創造まで全社を統括
  • 社員・顧客・地域・ステークホルダーすべてに説明責任を持つ決断者

求められるマインドやスキル

  • 主体性、責任感、共感力、チャレンジ精神、成長意欲・誠実さ
  • 戦略、財務、組織、人材、IT、対外交渉など総合ビジネス力

重要な職務

  • 経営戦略の立案と現場実行の推進
  • 組織マネジメント・人材育成・働き方改革推進
  • 企業価値・ガバナンス向上とリスクマネジメント

キャリアパス

  • 課長・次長・部長等の管理職で部下育成、PL/プロジェクトマネジメント経験、スタートアップ企業のCFOやCOO、役員や部長を経てCEOへつながるキャリアパス
  • 将来、スタートアップ企業のCEOとしてのIPOを目指したり、大手上場企業へのステップアップ、経営支援、社外役員、CEO育成のための社会活動など多面的な将来のキャリア