【特別コラム連載】会計ファイナンス人材×AI 第1回 AIとは何か

外山:
みなさん、こんにちは。今回から全10回で、AIについての講義をお届けします。私は講師の外山です。
ITエンジニアとしてスマートフォンアプリやWebサイト開発などに携わった後、AIの研究開発の現場で働いてきました。現在は監査法人でIT監査の業務を行なっている他、社内DXやAIの活用などを推進しています。
鈴木:
よろしくお願いします!私は、有限責任パートナーズ綜合監査法人で監査業務を行なっているスタッフ1年目の鈴木爽矢です。業務でAIを使うこともあるのですが、まだまだ、使い方に不慣れで自信が無いのですが非常に興味はあります。
監査業界においても、AIにもっと詳しくならないといけない時代なのだろうと思っています。
外山:
意識が高くて良いですね。さっそくですが、なにかAIは使っていますか?
鈴木:
プライベートでChatGPTは使っていますよ。すごいですよね!あれでAIに興味を持ちました。よく分からないことは、ChatGPTに聞いています。
外山:
すばらしい。この講義を受けるのに基礎知識は必要ないですけど、ChatGPTとかGeminiのようなサービスは触っておいてほしかったので、安心しました。
鈴木:
Geminiって何ですか?
外山:
Gemini(ジェミニ。またはジェミナイ)は、ChatGPTと同じようなものだと思ってください。Googleが行なっているサービスです。
鈴木:
私はiPhoneを使っているので、Googleのことはよく知らなかったです。
そもそもAIというのが何だかよく分からないのですよね。フワッとしているといいますか…。たとえば、私の実家のエアコンにはAIが搭載されているらしいのですけど、何をもってAIと言っているのか分からないです。ChatGPTは分かりやすいのですけど…
外山:
良い指摘ですね。まず、AIというのは、「Artificial Intelligence」の略で、日本語だと「人工知能」といいますよね。でも、最近はAIという呼び方の方が一般的かもしれません。
昨今のAIブームで(実際、現在は第3次AIブームとか、第4次AIブームなどと言われています)、AIと名付ければ売れるというような風潮もあり、世の中はAI製品であふれています。
では、AIとは何かというと、困ったことに、実は明確な定義がないのですよ。
鈴木:
そうなんですか?
外山:
さまざまな団体がAIに対して独自の定義づけをしていますし、辞書にも「AI」の項目は載っていますけど、決定版と呼べるものはないですね。そもそも「知能」自体が解き明かされていない以上、人工「知能」を定義することもできないと言われます。
例えば、『広辞苑』(第七版)では、AIについて「推論・判断などの知的な機能を備えたコンピュータ・システム」と書かれていますけど、前半部分は知能についての説明ですよね。
ざっくり言えば、コンピュータ上で人間の知能を再現しようとする技術がAIだと言って良いと思います。
鈴木:
ようするに、「人工知能とは、人工的な知能だ」ということですか。説明になっていないような…
外山:
たしかにそうですね。ただ、昨今の風潮として、機械学習によって作成されたモデルのことをAIと呼ぶことが多いですよ。
鈴木:
機械学習?聞いたこともない言葉が出てきましたね。難しそうです…
外山:
機械学習というのは、「Machine Learning」の直訳で、確かに違和感がある言葉ですね。一般的な用語でもないと思います。
ごく大雑把に言えば、大量のデータを学習して、そのデータのパターンや傾向を見つける技術だということになります。
鈴木:
データを学習するというのは、たしかにAIっぽいですね。「データを食わせる」とかも聞いたことがあります。それが機械学習でしたか。
ひょっとして、私の実家のAI搭載エアコンも、データから学習して賢くなったのですかね。
外山:
その可能性は大いにありますね。今どきのAIというのは、「大量のデータを学習させて、それによって見出したパターンを活用するもの」がほとんどです。
鈴木:
でも、機械学習でデータを学習させたとして、それをAIと呼ぶのは大げさですよね。
AI搭載エアコンに知能があるとも思えないのですが…
外山:
たしかに、機械学習をAIと呼ぶ風潮には違和感があります。AIと呼ぶに値するのは、大規模言語モデルくらいでしょうね。
鈴木:
また知らない言葉が出てきました。大規模言語モデル?それって、ChatGPTよりすごいのですか?
外山:
いえ、大規模言語モデル(Large Language Models。以下LLMと略す)というのは、人間の言葉を扱うことができるAIの総称ですね。つまり、ChatGPTもLLMの一種です。
もう少し厳密に言うと、ChatGPTというのはサービス名ですけど、その裏で動いている、GPT-5などのモデルがLLMなわけです。
鈴木:
GPT-5って、ちょっと前に出たやつですよね。たしかに、ChatGPTには知能を感じますよ。あれはAIの名にふさわしいものだと思います。
でも、よく「生成AI」といいますよね。LLMというのは、生成AIと同じ意味ですか?
外山:
LLMは、生成AIの一種です。画像生成AIや動画生成AI、音楽生成AIなど、色々な生成AIがありますが、その中の「文章を生成するAI」がLLMです。ちなみに、LLMも機械学習の一分野ですよ。
AI > 機械学習 > 生成AI > LLM > ChatGPT という包含関係ですね。
鈴木:
頭が整理されてきた気がします…
では、間違っていたら指摘してほしいのですけど、要するに、人間の質問に対してどう答えるかということが、プログラムされているということですよね?
外山:
いえ、どう答えるかがプログラムされているわけではないのです。人間がプログラムして作るのは、いわば空っぽの脳みそと、その脳みそにデータを学習させる仕組みですね。LLMに対して大量の文書を与えると、LLM自体が自律的に学習していくというイメージです。
そして、学習させたあとの脳みそを「モデル」と呼ぶのですが、そのモデルこそがAI本体ですね。
鈴木:
モデルという言葉も何度か出てきましたよね。学習させたあとのAI本体のことでしたか。
では、どう答えるかを、人間がプログラムしているわけではないのですね。
外山:
そういうことです。なので、AIを開発した人にも、そのAIがどのようなことを回答するかは分からないのです。
それゆえ、AIはブラックボックス化しやすいから注意です。
鈴木:
なるほど。では、AIが自分で考えて自分で答えをだすということは、ひょっとして、ChatGPTには意思があるのですか?
外山:
それは非常に厄介な質問ですけど、あまり深入りしない方が良いでしょうね。私自身は、AIには意思に近いものが宿り得るという立場ですけど、そもそも人間の意思とは何かがよく分からないですし、動物には意思があるのかとか、そういう面倒な問題も関係してきます。
そういう問題を横に置くとしても、LLMは意思があるように見える受け答えをするので、それは実際に意思があるのと変わらないという考え方もあり得ると思います。
とはいえ、AIに意思があるとしてしまうと、道具として使うことが難しくなりますし、法的、倫理的な問題も生じかねないので、とりあえずは「AIには意思はない」としておくべきでしょう。
鈴木:
思った以上に難しい話になってしまいましたね。AIについて考えていくと、結局は「知能とは」とか「意思とは」みたいな、哲学的な問いになっていくのは面白いです。
外山:
AIを人間と比較することは重要だと思いますよ。とりあえず、 今日覚えておいてほしいのは、以下の3点です。
・AIとは、コンピュータ上で人間の知能を再現しようとする技術
・今どきのAIは、機械学習という技術が用いられている
・その中でも、大規模言語モデル(LLM)は、人間のように言葉を扱うことができる
鈴木:
そのくらいなら覚えられそうです。
今のAIを取り巻く状況とか、仕事で使えるAIとか、具体的な話も聞かせてください。
外山:
それでは、次回はAIの最近のトレンドを解説しましょう。具体的なサービス名なども教えますよ。
鈴木:
ありがとうございます。
新しい言葉がたくさん出てきて、だいぶ混乱していますよ。
外山:
この講義を何度か読んで、復習しておいてください。
鈴木:
長いので、ChatGPTに要約してもらいます。
外山:
それも良いけど、できればちゃんと読んでほしい…
外山 哲郎
有限責任パートナーズ綜合監査法人
金融系、ゲーム系、など幅広い分野でスマートフォンアプリやWebサイトの開発に携わる。 2017年からAI業務に従事。データ分析や、医療の分野でのAI活用の研究・開発などに携わる。 ライターとしても活動(ニコニコニュース(ニコニコ動画))。 2024年7月 有限責任パートナーズ綜合監査法人入所。 現在は、IT専門家として監査業務に携わる他、法人内のDXおよびAI活用を推進している。
鈴木 爽矢
有限責任パートナーズ綜合監査法人
2022年大学3年生時に公認会計士試験合格。 大学時代にはCPA会計学院で監査論のチューター及び広報部のマーケティング業務を行う。 その後大手監査法人、コンサルティング会社を経て現職の有限責任パートナーズ綜合監査法人に入所。 現在は主に、IPO準備会社や上場企業の会計監査に従事し、財務デューデリジェンスなどの非監査業務にも携わっている。