【特別コラム連載】会計ファイナンス人材×AI 第2回 現在のAIの概況

外山:
みなさん、こんにちは。今回のテーマは、「現在のAIの概況」ということで、AI企業やAIサービスのご紹介の他、最近のトレンドなども解説したいと思います。
鈴木:
今回もよろしくお願いします!知りたいことが山ほどあるので楽しみです。
AIのサービスといえば、なんといってもChatGPTですよね。でも、ChatGPTってどこの会社が運営しているんでしたっけ?
外山:
ChatGPTを運営しているのは、OpenAIというアメリカの企業です。CEO(最高経営責任者)は、サム・アルトマンという人ですね。OpenAIは、非営利法人と、その子会社の営利法人で構成されていて、ちょっと特殊な企業構造なのです。
鈴木:
なんで非営利法人なのでしょうか?お金を儲ける気がなかったのですか。
外山:
現在は営利事業に力を入れていますが、少なくとも当初は、人類のためにオープンなAGIを開発するという目的のため、非営利法人としてスタートしたのです。
鈴木:
AGI?なんですか、それは?
外山:
汎用人工知能です。OpenAIが掲げる『OpenAI憲章』によれば、「経済的に最も価値のある仕事において人間を凌駕する高度に自律的なシステム」だとのことです。
鈴木:
え、そんなすごいAIを作ろうとしているんですか!
それはかなり難しい気がしますけど、AIをオープンにするというのは実行していますよね。ChatGPTをリリースしているわけですし。
外山:
いえ、この場合の「オープン」とは、「誰でも自由に使える」という意味です。
鈴木:
え、どういうことですか?ChatGPTを自由に使っていますよ。
外山:
ITの世界には、オープンソースという考えがあります。世界中の誰もが自由に使えるように、プログラムを一般公開するということです。
その意味で言うと、AIのプログラムや、完成したAIのモデル自体を、無料でダウンロードできるようにし、人々がそれを使うだけでなく、自由に改良したりできて、初めて「オープンなAI」を名乗れるわけです。
鈴木:
無料って…。そんなことをしたら儲からないじゃないですか。あ、だから非営利法人なのか。
外山:
はい。実際、私がAI開発の現場で働いていたころは、OpenAIは無料でAIを公開していて、我々も利用させていただいたものです。ただ、当時から少しずつAIの公開を控えはじめていて、「OpenAIなのにオープンにしていない」という批判の声はありましたね。
鈴木:
でも、これだけAI開発にお金がかかるようになると、完全に無料で提供するなんて難しいですよね…
ちなみに、OpenAIはけっこう儲かっているんですか?
外山:
ChatGPTの売上自体は伸びているものの、現在は赤字状態です。OpenAIの資金源は、主に投資によるものですね。マイクロソフトからの資金調達が有名です。最近では、ソフトバンクも莫大な出資をしています。
鈴木:
そういえば、ソフトバンクの孫さんがOpenAIのサム・アルトマンさんと一緒に写っている記事を見ました。
OpenAIのライバルというと、やっぱりGoogleなのでしょうね。でも、AIに関しては、Googleの方がちょっと出遅れた印象があります。
外山:
いえいえ、実はGoogleはずっとAI業界を牽引していて、AIを支える基礎技術も多く開発してきました。AIに関連する著名な人材も大勢抱えていますし、一時期はGoogleの一人勝ちのような様相を呈していました。
生成AIに関しても、重要な研究はほとんどGoogle発だったので、ChatGPTのようなサービスを最初にリリースするのはGoogleだろうと思っていました。私だけでなく、多くのAI関係者がそう思っていたのではないですかね。
鈴木:
では、Googleは長らくAI界のトップランナーだったのにも関わらず、OpenAIに先を越されてしまったような感じだったのですね。なぜでしょうか?
外山:
その分析は難しいですが、Googleの稼ぎ頭の検索事業とバッティングするので、生成AI事業に慎重になっていたという指摘はありますね。
鈴木:
たしかに、ChatGPTが出てから、Googleで検索する回数は減った気がします。これからGoogleは巻き返せるのでしょうか?
外山:
今はもうAIに全力集中しているという印象ですし、GoogleはAIで勝ち残るための条件を備えているので、盤石な印象ですけどね。
現在のAIは機械学習という技術分野に属するのですが、機械学習の特徴を覚えていますか?
鈴木:
えっと…。データを学習させるというやつですよね。
外山:
その通りです。機械学習とは、大量のデータから、そのデータのパターンや傾向などを見出す技術でした。現在の生成AIも、大量のテキストや、画像、動画データから学習しています。ということは、単にAIについての技術力があるだけでは足りないわけで、データを持っている企業が強いということになります。
鈴木:
Googleは検索に使うWebの情報を押さえていますし、YouTubeも子会社にしているので、動画情報なんかも豊富に持っていますね。
外山:
そうなのです。圧倒的な人材や資金力に加え、保有データの量が桁違いなので、やはりGoogleは強いです。最近では半導体も開発していますし、Googleの各種サービスとの連携も強みだと言えます。
鈴木:
まだChatGPTの方が知名度はあると思いますけど、Google のサービスであるGeminiもAIの本命だといえそうですね。
個人的には、どちらのAIの方が会計ファイナンスに強いのかは気になります。
外山:
以前のAIは計算に弱いという難点がありましたが、最近のAIには推論能力というものが備わっていて、計算も得意になったため、会計ファイナンスの分野でも力を発揮できるようになりました。ただ、ChatGPTとGeminiのどちらが優れているかは断言できませんね。それぞれの強みがありますし、新しいバージョンが出るたびに性能も向上していますので。複数のAIを使って、比較してみるのも良いと思います。
鈴木:
なるほど…。では、他にどんなAIがあるのですか?
外山:
言葉のやりとりをすることができるAIを、「大規模言語モデル(LLM)」といいましたが、他の大規模言語モデルといえば、Anthropic(アンソロピック)社が開発した、Claude(クロード)も有名です。
鈴木:
クロード?急に人名っぽいですね…
外山:
「情報理論の父」と呼ばれるクロード・シャノンにちなんでいるようです。
Anthropicは、OpenAIの元研究者たちが起業した会社で、安全性と倫理性を最優先していることで知られています。AI自体の評価も高いのですが、最近はプログラミングAIに力を入れている印象で、エンジニア以外には馴染みが薄いかもしれませんね。
鈴木:
プログラミングですか。もともとOpenAIにいた人たちが起業したとのことですけど、OpenAIとは、ターゲットにしているユーザー層が違うのかもしれませんね。
他にはありますか?
外山:
あとは、Grok(グロック)も存在感が高まっています。xAI社が開発したAIです。
鈴木:
xAIって知らないです。
外山:
xAIは、X(旧Twitter)の運営にも関わっている企業ですよ。CEOはイーロン・マスクです。
鈴木:
あ、XにもAIが付いていますよね!あれがGrokでしたか。どこかで聞いたような気はしていました。
外山:
他には、Meta(元Facebook)もLlama(ラマ)というAIを出していますよ。
鈴木:
それはまったく聞いたことないですね…
外山:
Metaはちょっと特殊で、誰でも使えるように、AIを一般公開しているのです。先ほど、オープンなAIという話をしましたが、まさにLlamaはオープンなAIなのです。
鈴木:
え、オープンなAIって、誰でも自由に無料でダウンロードできるってやつですよね!?最高じゃないですか。それなら、ChatGPTなんて使わずに、Llamaを使えば良いですよね。
外山:
理屈としてはその通りなのですけど、実際問題、AIを動かすためには、非常にハイスペックなマシンが必要なのです。比較的低スペックのPCでも動くような、小型のモデルも公開されていますけど、かなり性能が落ちます。ChatGPTのようなものを期待すると、回答の質や、応答速度などの面で、がっかりするかもしれませんね。
鈴木:
うーん、うまい話はないのですね。でも、どこかの企業のサーバーにデータを送信しなくて済むというのは大きなメリットになりますし、これから性能も上がっていくと思うので、オープンなAIは増えてほしいですね。
外山:
それで言うと、実は、一番オープンなAIに力を入れているのは、中国の企業なのです。具体的には、アリババとか、DeepSeekとか。
鈴木:
中国勢がオープンなAIを作るというのは、ちょっと意外な…
そういえば、DeepSeekって、ニュースになっていましたよね!安全に使えるんですか?
外山:
DeepSeekは、ChatGPTと同じようなWebサービス版と、オープン版があるのです。Webサービス版の方は、データがDeepSeek社に送られてしまいます。とはいえ、特定の企業にデータを送信することは、Webサービスを使う以上、避けられない問題ではあります。AI特有の話でもないですしね。
逆に言えば、オープン版をダウンロードして使えば、自分のマシン内だけで完結するので、外部と通信せずにAIを動かすことができます。
鈴木:
DeepSeekって、たしかGPUをあまり使わずに作られたんでしたよね。それで、エヌビディアの株価に影響を与えて、「DeepSeekショック!」などと騒がれたことを思い出しました。
今さらですけど、GPUって何ですか?パソコンでゲームやるときに必要な機械だった気がしますが、なんでAIに必要なのか、いちいち分からないのですよね…。計算がすごく速いってことですか?
外山:
GPUは、画像を処理する半導体チップですね。ここでは簡単な説明に留めますが、計算自体の速さよりも、大量の計算を同時に行うことができるのが強みです。並列計算と呼んだりするんですけどね。
AIの計算というのは、主に行列の計算をするのですが、行列は並列計算によって高速化できるのです。なので、GPUとAIというのは、非常に相性が良いのです。
鈴木:
行列って、数学で出てきたやつですよね?まさかAIに関係しているとは…
外山:
とはいえ、GPUはもともと画像処理のためのものなので、もっとAIに特化した半導体チップもあり得ますし、実際にあります。ただ、エヌビディアはGPUを作っているだけでなく、GPUを使ってAIの計算を行なうための、CUDA(クーダ)というソフトウェアも作っているというのが重要です。今どきのAIはCUDAを用いて開発されることが多いのですが、CUDAに依存したプログラムを動かすには、エヌビディアのGPUが必要です。もはやエヌビディア無しでAIを語ることはできないような状態なのです。
鈴木:
まだまだエヌビディア無双は続くのですかね。他の会社にも期待したいですが…
いやあ、今回は固有名詞がたくさん出てきましたね。ちょっとまとめてみます。
1.OpenAIやGoogleの他にも、アンソロピックなど、多くの企業がAIを開発している。
2.中国のAI企業も勢いがある。オープンなAIを開発しているのが特徴。
3.エヌビディアは、AIを動かすのに必要なGPUや、GPUを動かすソフトを作っている。
外山:
本日はAI業界の概況について語りましたが、とにかく進歩が速いので、どんどん状況は変わっていくと思います。ニュースのチェックが必須ですね。
鈴木:
最後にもう一つ聞いても良いですか?
外山:
何でもどうぞ。
鈴木:
どんなAI企業に投資をしたらよいですか。
外山:
それは私が知りたいです…
外山 哲郎
有限責任パートナーズ綜合監査法人
金融系、ゲーム系、など幅広い分野でスマートフォンアプリやWebサイトの開発に携わる。 2017年からAI業務に従事。データ分析や、医療の分野でのAI活用の研究・開発などに携わる。 ライターとしても活動(ニコニコニュース(ニコニコ動画))。 2024年7月 有限責任パートナーズ綜合監査法人入所。 現在は、IT専門家として監査業務に携わる他、法人内のDXおよびAI活用を推進している。
鈴木 爽矢
有限責任パートナーズ綜合監査法人
2022年大学3年生時に公認会計士試験合格。 大学時代にはCPA会計学院で監査論のチューター及び広報部のマーケティング業務を行う。 その後大手監査法人、コンサルティング会社を経て現職の有限責任パートナーズ綜合監査法人に入所。 現在は主に、IPO準備会社や上場企業の会計監査に従事し、財務デューデリジェンスなどの非監査業務にも携わっている。