経理を行っている人でも、どれが会計帳簿に該当するのかよくわからない人も多いのではないでしょうか?
会計帳簿は、日々のお金の流れを記録するものです。
正しい会計帳簿の作成は、経営状況の把握がしやすく、青色申告もスムーズに行うことができ、金融機関からの融資なども受けやすくなります。
会計帳簿とはどのような種類があるのか、会計帳簿をつける際のルール、保存期間などをくわしく解説します。
目次
会計帳簿とは?
会計帳簿とは、主に会社法432条により作成が義務付けられている帳簿のことで、大きく分けると主要簿と補助簿の2種類です。
主要簿と補助簿では記録する内容が異なりますが、共通して必要な項目は日付・取引先・取引内容・目的・金額です。
会計帳簿は、損益計算書や貸借対照表を作成するときにも欠かせません。
会計帳簿の種類について
会計帳簿は、主要簿と補助簿に分けられます。
主要簿は発生したすべての取引を記録し、補助簿は主要簿の詳細をカバーします。
どのような種類があるのか、くわしく見ていきましょう。
主要簿の種類
主要簿は、発生する取引をすべて記録した帳簿のことです。
仕訳帳・総勘定元帳の2つが主要簿ですが、日記帳は毎日の取引を発生順に記載する帳簿で、ほかの帳簿の備忘録のような役割をしているため、作成義務はありません。
会計ソフトであれば、仕訳を行うと日記帳は自動で作成される場合があります。
仕訳帳と総勘定元帳は作成が義務付けられています。
作成が必須である仕訳帳と総勘定元帳はどのような会計帳簿なのか、くわしく見ていきましょう。
仕訳帳
仕訳帳は、発生した取引順に、借方と貸方に分けて記入します。
金銭のやり取りなど、すべての取引が時系列で記載される帳簿です。
仕訳には取引内容の見出しの役割をしている勘定科目を使います。
勘定科目は、大きく分けると資産・負債・資本(純資産)・収益・費用の5つです。
仕訳帳に必要な項目は以下のとおりです。
- 日付
- 勘定科目
- 金額
- 摘要
貸借対照表を構成する資産が増えるときは借方、負債や資本(純資産)が増えるときは貸方に記載します。
損益計算書を構成する費用が増えるときは借方、収益が増えるときは貸方です。
借方と貸方の金額は必ず一致します。
総勘定元帳
総勘定元帳は仕訳帳から転記を行い、勘定科目ごとに記帳する帳簿です。
勘定科目ごとに見られるため、残高を確認したいときなどに活用できます。
決算の際、総勘定元帳を基に損益計算書や貸借対照表が作成されるため、重要な会計帳簿です。
簿記試験では仕訳をし、総勘定元帳に転記して解く問題がありますが、会計ソフトでは自動的に作成してくれる場合があります。
補助簿の種類
補助簿は、主要簿の補助的な役割をしています。
取引内容をより詳しく知りたいときに便利です。
総勘定元帳は勘定科目ごとの総額を知ることはできますが、銀行ごとの預金や取引先ごとに売上や仕入の把握ができません。
詳細を把握したいときは、その都度計算するのは手間がかかるので、補助簿を作成しておく必要があります。
預金出納帳
預金出納帳は、金融機関の口座ごとに入金と出金を記入します。
普通預金であれば「普通預金出納帳」、当座預金であれば「当座預金出納帳」です。
主に必要な項目は以下のとおりです。
- 日付
- 相手科目
- 入出金の理由
- 入出金の金額
- 残高
通帳を見ながら預金出納帳へ記入していきます。企業によって1週間に一度、1ヶ月まとめて行うなどペースは変わります。
記入が終わったら、必ず現金出納帳と通帳の残高が同じ金額であるかチェックしましょう。
月末に入金額・出金額、そして差引残高を記入し、再度通帳と残高の一致を確認します。
預金通帳では引き落とした日付や振込金額など、情報がすべて把握できないため、しっかりと管理を行うには預金出納帳が欠かせません。
現金出納帳・小口現金出納帳
現金出納帳は、現金の入出金を記入する帳簿です。伝票を元に記録します。
主に必要な項目は以下のとおりです。
- 日付
- 勘定科目
- 取引内容
- 入金額
- 出金額
- 残高(前日の残高+当日の入金額-当日の支払金額)
同じく小口現金出納帳も現金の出入りを記録する帳簿ですが、現金出納帳とは別のものです。
小口現金とは、会社に置いてある少額の現金のことです。企業では大金を持つのはセキュリティ上よくないため銀行に預けます。
主に小口現金は切手代などの通信費や事務用品などを購入するための消耗品費など、少額の精算に使用されます。
小口現金から支払った内容を記載するのが、小口現金出納帳です。
仕入帳
仕入帳は、仕入先ごとに取引を記入する帳簿です。買掛金元帳の基になります。
摘要には仕訳だけではわからない、仕入れた商品の内容や個数、単価・総額などを記載します。
値引きや返品があった場合は、赤字で記載するのが一般的です。
売上帳
売上帳は、得意先(顧客)ごとに取引を記入する帳簿です。売掛金元帳の基になります。
摘要には仕訳だけではわからない、売り上げた商品の内容や個数、単価・総額などを記載します。
値引きや返品をした場合は、赤字で記載するのが一般的です。
支払手形記入帳
支払手形記入帳は、支払手形の取引を記録する帳簿です。
支払手形ごとに金額や支払期日、受取人などを記載します。
支払手形の決済ができなかった場合、不渡手形になります。
不渡りを出してしまうと、取引先の信用を失う恐れが出てくるでしょう。
金融機関から融資をしてもらえない可能性もあり、資金繰りに影響するので帳簿でしっかりと管理してください。
受取手形記入帳
受取手形記入帳は、受取手形の取引を記録する帳簿です。
受取手形ごとに金額や支払期日、支払人などを記載します。
自社の資金繰りを悪化させないためにも、受取手形記入帳を作成し不渡りがないかしっかりとチェックしましょう。
商品有高帳
商品有高帳は、商品の在庫を記録する帳簿です。商品有高帳があると在庫の管理がしやすくなります。
商品ごとに受け入れと払い出し、在庫数や在庫原価などを記入します。
仕入単価はほとんどの商品が一定ではないため、商品有高帳では単価の捉え方に種類があります。
先入先出法は、先に仕入れた商品を出庫と仮定する計算方法です。単価を分けて計算します。
移動平均法は、単価の違う商品が入ってくるたびに平均単価を出して出庫する方法です。
移動平均法は、売上単価を決めるときにも役立ちます。
期末だけではなく常に棚卸資産を把握できるのが特徴です。
仕入先元帳
仕入先元帳は、仕入先別に取引や残高を記載する帳簿です。買掛金元帳と呼ばれることもあります。
仕入先ごとの取引内容および取引金額などを記入します。
支払いに漏れがないか、仕入先元帳で管理するといいでしょう。
得意先元帳
得意先元帳は、得意先別に取引や残高を記載する帳簿です。売掛金元帳と呼ばれることもあります。
得意先ごとの取引内容および取引金額を記入します。
売掛金を期日どおりに回収ができているか、しっかりと把握することが大切です。
固定資産台帳
固定資産を保有している場合は、固定資産台帳を作成します。記載するのは、資産の内容や使用開始日、耐用年数などです。
固定資産とは主に使用期間が1年以上、取得価格が10万円以上の資産のことです。
パソコンやプリンター、オフィス用の家具・自動車などが該当します。
会計帳簿をつけるときのルール
会計帳簿は、まず領収書などの書類を見ながら仕訳帳に記入するところから始まります。
その後、仕訳帳の記録を総勘定元帳や補助簿に転記します。
内容があっていればいいというものではなく、会計帳簿のつけ方にはルールがあります。
どのような企業で働いても共通のルールのため、しっかりと覚えておきましょう。
数字はアラビア数字を用いる
会計帳簿はアラビア数字で記載します。
漢数字やローマ数字などは使用しません。
会計ソフトに入力するときは、自動的にアラビア数字になります。
略字を用いる
会計帳簿は以下の略字が使用されます。
- @ 単価
- ¥ 円
- #〇 第〇号(丸には数字)
ほかにもありますが、略字を使用すると取引の内容が一目で把握できます。
訂正は2本線を引く
紙の会計帳簿の場合、文字や数字を訂正するときは2本の線を平行に引きます。線の右側には訂正印を押しましょう。
修正ペンなどは使用してはいけません。
会計ソフトから出力する場合は、正しい文字や数字を入力後に上司に承認をもらいましょうう。
紙で保存が必要な場合は、訂正後に再度出力するようにしてください。
会計帳簿の保存期間
会計帳簿の保存期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年です。
税法上で定められており、受領した注文書や契約書、領収書などの書類や取引にあたり作成したものも同じく保存が義務付けられています。
税法上では7年ですが、会社法の会計帳簿の保存期間は10年です。欠損金の繰越控除を受ける事業年度も原則10年の保存とされているため、法人は10年間と覚えておきましょう。
会計帳簿閲覧請求について
3/100以上の株式を保有する株主は、会計帳簿の閲覧および謄写をする権利を持っています。
企業は拒否できる場合もありますが、いつ見せても問題ないよう会計帳簿は正確にしっかりとつけましょう。
個人事業主は会計帳簿を作成すべき?
会計帳簿を作成しなくてはいけないのは法人だけではありません。
個人事業主も会計帳簿の作成は事業を行う上では必須です。青色申告の場合は、複式簿記での記録が必要になります。
白色申告でも簡易簿記での記帳義務があるため注意しましょう。
会計帳簿を作成しないデメリット
会計帳簿を作成しないことで起こるデメリットがなければ作成したくない、記帳が面倒だと感じる人もいるかもしれません。
主要簿は3種類ですが、補助簿はたくさんの種類があるため、何を作成すべきかわからない人も多いでしょう。
できれば手間を省きたいものですが、事業を営む上では会計帳簿は経営状況を把握するのに欠かせないものです。
会計帳簿を作成しない場合、次のようなデメリットがあります。
仕訳帳と総勘定元帳は作成しなければならない
会計帳簿を作成したくないと思っても、主要簿である仕訳帳と総勘定元帳の作成はしなくてはなりません。
仕訳帳と総勘定元帳は、作成が義務付けられているため、作成しない場合は100万円以下の罰金が発生します。
法人税の申告をする際にも必要です。税務調査が入った際に提示できないと追徴課税を受ける恐れも高まります。
取引先との関係を正確に把握できなくなる
取引先が多い場合、仕入先元帳と得意先元帳がないと、取引状況を正確に把握できなくなる恐れがあります。
仕入先へ買掛金の支払い漏れがあれば、信用を失いかねません。
また、得意先の売掛金がしっかり回収できないと、資金繰りに影響が出ることもあります。
事業を継続するために、補助簿も大切な役割を担っています。
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まとめ
会計帳簿は、企業の経営状況を把握するのに欠かせないものです。
主要簿である仕訳帳と総勘定元帳は、帳簿の作成が義務付けられており、決算書にもかかわるため、正確に記帳しましょう。
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