農業簿記とは?農業簿記の勉強方法や試験概要、日商簿記との違いも解説

農業簿記とは農業経営に特化した簿記のことを指します。

一般的な商業簿記とは異なる特有の取引や経費を的確に記録・管理するための知識や技術が求められます。

本記事では、農業簿記の基本的な概念から、効果的な勉強方法、試験の概要、そして日商簿記との違いについて詳しく解説します。

農業経営をより効率的に行うための第一歩として、農業簿記は不可欠です。

農業に関わる方はもちろん、簿記に興味を持つすべての方にとって農業簿記は役に立つものであることを本記事を通じて理解していきましょう。

農業簿記とは?

農業簿記とは農業を営む事業者が自身の活動を記録するために簿記を活用したもののことをいいます。

農業簿記には農業簿記検定という資格検定試験があるため、農業簿記を身につけたい場合は、この試験を活用するのが最も効果的です。

以下では、農業簿記検定試験についてわかりやすく解説します。

試験概要

農業簿記検定試験は農業経営において必要とされる会計や財務の知識を評価・認定するための試験です。

この試験は一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会の監修のもと、農業に特化した簿記知識を試すものとなっており、農業のビジネス化が進む中で、その重要性が増しています。

試験は1級、2級、3級の3つのレベルがあり、それぞれ異なる範囲から出題されます。

1級では財務会計、原価計算、管理会計の分野から、2級では財務会計、原価計算の分野から、3級では財務会計の分野から問題が出題されます。

試験形式は記述式と計算問題の組み合わせで、解答はマークシートを利用した多肢選択式です。

受験者は電卓の携行が認められていますが、通信機能のある機器の使用は禁止されているので注意してください。

農業簿記検定試験を通じて、農業経営における正確で専門的な知識を身につけ、農業経営の更なる発展に寄与できることが期待されています。

各級における受験科目

農業簿記の検定試験は3つの科目(級)に分かれて実施されています。

具体的には1級、2級、3級の3つの級が存在します。平成28年度から1級の検定試験が開始されましたが、1級と2級の同時受験は認められていません。

一方で、2級と3級の同時受験は許可されています。

各級の出題内容は以下の通りです。

  • 1級:財務会計、原価計算、および管理会計の分野からの問題が出題されます。
  • 2級:財務会計と原価計算の分野からの問題が出題されます。
  • 3級:財務会計の分野のみからの問題が出題されます。

試験の形式としては、記述式の問題と計算問題が組み合わされて実施されます。

解答は、マークシートを使用した多肢選択式となっており、受験者は電卓を持参することが可能です。

ただし、通信機能を持つ機器、たとえば携帯電話やスマホ、タブレットなどの使用は禁止されているので注意してください。

各級の設問数は以下の通りです。

  • 1級:50問
  • 2級:25問
  • 3級:25問

詳しい出題範囲や取り扱う勘定科目については、公式の「農業簿記検定試験範囲」と「勘定科目」の資料を参照してください。これらの資料は、公式サイトからPDFファイルとしてダウンロード可能です。

合格基準と合格率

農業簿記検定試験の合格基準は、各級とも問題の総得点の70%が基準となっています。

直近に行われた試験の合格率は次の表のとおりです。

検定名称実施月級・科目区分受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
農業簿記検定(第18回)11月1級1181311.0
2級37312834.3
3級99462963.3
農業簿記検定(第19回)7月1級782734.6
2級3038227.1
3級79643654.8

農業簿記を取得するメリットはある?

近年、農業のビジネス化が進む中で農業簿記の重要性が高まっています。

農業簿記検定の資格を取得することで農家や農業に関わる方は経営の視点を持つことができ、さまざまなメリットを享受することができます。

以下では、その具体的なメリットについて詳しく解説します。

経営実態を把握できる

農業をビジネスとして捉えるためには経営状態を正確に把握することが不可欠です。

農業簿記検定の資格を持つことで、経営状態を「可視化」する能力が身につきます。

日々の業務管理や帳簿作成をシステム化することで、経営の健全性や問題点を迅速に把握することができるようになります。

とくに、日本の農業は家族経営が主流であるため、家計と事業会計の区別が曖昧になりがちです。

農業簿記の知識を持つことで、これらを明確に区別し、経営状態を正確に把握することが可能となります。

地域農業ビジネスの活性化に役立てる

農業簿記検定の資格を持つことは自身の農業経営だけでなく、地域全体の農業ビジネスの活性化にも貢献できます。

そもそも、農業簿記検定試験は、「一般社団法人全国農業経営コンサルタント協会」が監修のもと、「一般財団法人日本ビジネス技能検定協会」が主催している資格検定試験です。

資格を持つことで、コンサルタントとして地域の農家にアドバイスを提供することができ、地域農業の品質向上や生産性の向上に寄与することができます。

また、自身の成功したビジネスモデルをほか農家に提供することで、フランチャイズ展開などの新しいビジネスチャンスも生まれるかもしれません。

会計知識が増えて日常でも役立つ

農業簿記検定の資格を取得することで、基本的な会計知識や簿記のスキルが身につきます。

これは、農業経営だけでなく、日常生活やほかビジネスシーンでも非常に役立つ知識となります。

たとえば、家計の管理や投資の判断、さらには他の事業を始める際の基盤としての知識として活用することができます。

会計の知識は、数字を通じて物事を客観的に捉える視点を持つことができるため、多岐にわたるシーンでの意思決定をサポートします。

以上のように、農業簿記検定の資格を取得することは、農業経営を強化するだけでなく、多方面でのメリットを享受することができます。

現代の農業において、このような資格はますますの価値を持つこととなるでしょう。

日商簿記と農業簿記の違いは?

日商簿記と農業簿記は、どちらも簿記の基本的な原則に基づいていますが、農業の特性を反映した内容や取扱いが異なる点がいくつかあります。以下では、日商簿記と農業簿記の主な違いを詳しく解説します。

農業簿記では農業に関する勘定科目がある

農業簿記には、一般的な簿記、とくに日商簿記とは異なる、農業特有の勘定科目が設定されています。

これらの勘定科目は農業の特性や取引内容を正確に反映するために必要とされています。

たとえば、「種苗費」は種子や苗、種いもなどの購入費用を計上するためのものであり、「素畜費」は育成牛や子豚の購入費用や引取り運賃を計上するためのものです。

また、「農薬衛生費」は農薬や家畜薬、共同防除経費、獣医の治療代などを計上するための勘定科目となります。

さらに、「農業共済掛金」は、農業共済に加入している農家が共済掛金や火災保険料、車両の保険料などを計上するための特有の勘定科目です。

これらの勘定科目は、農業の現場での実際の取引や経費を正確に帳簿に記録するために不可欠であり、農業簿記の特色として理解することが重要です。

確定申告のやり方が日商簿記と異なる

農業を営む個人事業主が確定申告を行う際、通常の商業簿記、すなわち日商簿記とは異なる、農業専用の確定申告書類様式を使用する必要があります。

この特有の様式は、農業の特性や取引内容を正確に反映するために定められているものです。

農業で得た所得は、サラリーマンやフリーランスなどのほか所得とは別に、専用の書式で売上や経費を記載する必要があります。

具体的には、農業での取引や経費、収入などを詳細に記載するための「農産物受払帳」や「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」などの簡易帳簿を使用します。

これらの帳簿は、農業の生産や販売に関連する取引の詳細を記録するためのもので、確定申告の際にはこれらの帳簿を基に所得や経費を計算し、申告書に記入します。

また、農業以外の所得がある場合、たとえばサラリーマンとしての給与所得や、副業としての事業所得などがある場合は、それらの所得と農業所得は区分けして、それぞれの所得に応じた書式で売上や経費をまとめなければなりません。

このように、農業簿記における確定申告は、日商簿記とは異なる独自の手続きや書式が求められるため、正確な理解と適切な対応が不可欠です。

農業簿記では棚卸しに関する科目を多く学ぶ

農業簿記における棚卸しは、通常の商業簿記とは大きく異なる点がいくつかあります。

農業においては、生産資材や収穫前後の農産物、さらには育成中の動植物など、多様な在庫を抱えることが一般的です。

このような特性から、農業簿記では在庫の管理や帳簿付けに関する科目をより詳細に学ぶ必要があります。

具体的には、農業簿記の棚卸しでは、在庫を以下の4つの主要な勘定科目に分類して管理します。

  1. 農産物

これは販売を目的として生産された物品を指します。例として、収穫済みでまだ販売されていない農産物が該当します。

  1. 仕掛品

これは生産の途中である物品を指します。具体的には、栽培中や未収穫の農産物、また販売目的で飼育中の動物などが含まれます。

  1. 原材料

これは生産活動に使用される資材を指します。種子や肥料、農薬などが該当します。

  1. 貯蔵品

これは生産や販売以外の目的で保管されている物品を指します。燃料や包装材料、収入印紙などがこれに該当します。

このように、農業簿記では、日常の農業活動に関連する多様な取引や在庫の動きを正確に反映するための独自の勘定科目や手法を学ぶことが求められます。これにより、農業経営の実態をより正確に把握し、効果的な経営判断を下すための基盤を築くことが可能です。

生物についての減価償却も学ぶ

農業簿記において、果樹や家畜などの生物資源の会計処理は非常に重要な位置を占めます。

これらの生物資源は、生産活動を行っている状態のものとして「生物」という勘定科目で取り扱わなければなりません。

生産活動を開始するまでに要した育成費用は、固定資産の取得金額として計上されます。

そして、これらの生物資源には減価償却が適用されます。

その価値の経時的な減少を帳簿上で反映させる必要があるからです。

一般に、農業において利用される生物という資産は、価値が時間の経過とともに減少すると考える必要があります。

この価値の低下を反映するのが、減価償却という手続きです。

生物資源を管理するために、具体的にはまず毎年度末に育成期間中の果樹や家畜にかかった費用を「育成仮勘定」という仮置きの固定資産に振り替える処理が行われます。

その後、年度中に生産活動を開始した果樹や家畜は、「育成仮勘定」から「生物」に振り替えられ、減価償却の対象として管理が開始されます。

一般的に就職で有利なのは日商簿記

日商簿記は、商業簿記の基本的な知識や技術を身につけるための資格として、多くの企業や業界で高く評価されています。

そのため、一般的な企業での就職活動や昇進の際に、日商簿記の資格を持っていることは大きなアドバンテージとなります。

とくに、経理や財務部門での仕事を希望する場合、日商簿記の資格はほぼ必須といえるでしょう。

一方で、農業簿記は、農業関連の業界や農家での経営に特化した知識を提供します。

農業関連の仕事を目指す人や、農家としての経営スキルを磨きたい人にとっては、農業簿記の知識は非常に価値があります。

しかし、一般的なビジネスの現場での利用範囲は限られているため、広範な業界での就職活動を考える場合、日商簿記の資格取得が推奨されます。

農業簿記のおすすめの勉強方法

農業簿記は、農業経営における会計や財務の知識を身につけるための重要な学問分野です。

近年、農業のビジネス化が進む中で、この知識は農家や関連事業者にとって必須となっています。

しかし、農業簿記の勉強は一見難しそうに感じるかもしれません。

そこで、効果的に学ぶためのおすすめの勉強方法を以下に紹介します

問題集を解く

まず、問題集を利用する学習方法は、農業簿記の知識を実践的に身につけるための非常に効果的な手段です。

具体的な事例や数字を扱うことで理論だけでなく実際の業務での応用力も養えます。

問題集は基礎的な内容から応用的な内容まで幅広くカバーしているのが一般的です。

初心者は基本的な問題から始め、徐々に難易度を上げていくことで、知識の定着を図ることができます。

また、間違えた問題はとくに何度も取り組むことで、理解の深化を図ることが可能です。

多くの問題集には模擬試験が付属しており、時間を計って実際の試験形式で問題を解くことで、試験対策も同時に行うことができます。

動画学習する

動画学習は、視覚的に情報を取り入れることができるため、理解を深めるのに非常に有効です。

とくに、複雑な内容や新しい概念を学ぶ際には、動画での解説を聞きながら学ぶことで、より具体的なイメージを持つことができます。

農業簿記に関する動画では、実際の帳簿の記入方法や計算方法を示しているものがほとんどです。

これにより、実務での適用方法を具体的にイメージすることができます。

専門家や講師が実際に解説を行う動画を利用することで、難しい内容も分かりやすく理解することができます。

また、質問やコメント機能を活用して、疑問点を解消することも可能です。

動画は一時停止や巻き戻しができるため、自分の理解度にあわせて学習を進めることができます。

何度も繰り返し視聴することで、知識の定着を図れます。

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まとめ

農業簿記は、農業経営に特化した簿記の形式で、商業簿記とは異なる独自の取引や経費の記録・管理方法を持った技術です。

効率的に農業簿記について勉強したい場合は、資格試験を活用しましょう。

農業簿記については、農業簿記検定という資格試験が年に2回開催されています。

農業簿記検定の効果的な勉強方法としては、問題集の解答や動画学習を活用することが推奨されます。

農業簿記検定試験は複数の級に分かれており、それぞれの級で求められる知識やスキルが異なります。

日商簿記と異なり、農業特有の勘定科目の存在や、確定申告の方法、棚卸しの取り扱い、生物資源の減価償却方法などが大きく異なることが農業簿記の特徴です。

日商簿記は一般的な企業での就職や昇進に有利とされる一方、農業簿記検定は農業関連の仕事や農家の経営に特化した知識を提供してくれる資格試験です。

農業を営む方や農業に携わる方は、ぜひ、農業簿記検定試験の受験を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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