為替手形の仕訳方法とは?知っておくべきことこともわかりやすく解説

為替手形は、ビジネス取引の中で頻繁に使用される支払手段の一つです。

手形取引には独特の仕訳方法が求められ、正確な会計処理が不可欠となります。

本記事では、為替手形の基本的な仕訳方法を始め、取り扱いに関して知っておくべきポイントを詳しく解説するので参考にしてください。

手形取引が初めての方でも、わかりやすい例を交えながら、手形の会計処理の流れを把握することができる内容となっています。

また、手形取引における注意点や、よくある疑問についても触れていきます。

為替手形とは

為替手形は、取引における金銭のやり取りを円滑に行うための証書の一つです。

具体的には、3者間での金銭の移動を助ける役割を果たします。

手形自体は特定の期日までに手形に記載された金額を支払うことを約束する文書です。

為替手形はその中でもとくに、振出人が支払人に代わって受取人に金銭を支払うよう依頼する際に使用されます。

手形を利用することで、支払いの遅延や回収の漏れを防ぐことができ、取引の安全性を高めることが期待されます。

為替手形の種類

為替手形は、ビジネス取引において頻繁に使用される支払手段の一つです。為替手形の特性や取引の形態に応じて、主に3つの異なる種類が存在します。

それぞれの種類には独自の特徴や利用シーンがあり、適切な状況での使用が求められます。

  • 他人宛為替手形

他人宛為替手形は、為替手形の中でももっとも基本的な形態を持つもので、3者間の取引において頻繁に使用されます。振出人が支払人に対して、受取人への支払いを依頼する形となります。他人宛為替手形は、多くのビジネスシーンでの取引に適しています。

  • 自己受為替手形

自己受為替手形は、振出人自身が受取人となる特殊な形態を持っています。主に、取引の確実性を高める目的で使用されることが多く、とくに国際取引や大口の取引において価値が高まります。

  • 自己宛為替手形

振出人が自らを支払人とする形態の手形です。自己宛為替手形は、特定の条件下での取引や、一時的な資金調達の手段として利用されることが一般的です。

為替手形の種類を深く理解し、それぞれの特性や利用シーンを把握することは、効率的かつスムーズなビジネス取引を進める上で非常に重要です。適切な手形の選択と使用により、取引の安全性や信頼性を高めることが可能です。

為替手形の振り出しについて

為替手形の振り出しは、手形を作成する行為を指します。

為替手形の振り出しは、特定の取引における支払いの約束を形式化するもので、振出人が支払人に対して、受取人への金銭の支払いを依頼する際に行われるものです。

具体的には、A社がB社に商品やサービスを提供した際、B社が支払い方法として為替手形を振り出すケースが考えられます。

為替手形は、A社がC社に対して取引の依頼を行い、C社がA社に金銭を支払う流れとなります。

振り出しの行為は、取引の安全性を確保し、支払いの確実性を高めるための重要なステップです。

為替手形に記載する要件

為替手形を有効にするためには、以下の要件を記載する必要があります。

  1. 支払人の名称
  2. 振出人の名称
  3. 支払いの約束に関する記述

手形には、特定の期日までに指定された金額を支払うことの約束が明記される必要があります。

  1. 金額

支払うべき金額を明確に記載する必要があります。

  1. 受取人の指定

誰に対して支払いが行われるのか、受取人を明確に指定する必要があります。

  1. 振出日

手形が振り出された日付を記載します。

  1. 振出場所

手形の振出地を明記します。

  1. 支払期日

金銭の支払いが行われるべき期日を指定します。

  1. 支払場所

金銭の支払いが行われる場所を明記します。

要件を適切に記載することで、為替手形は機能を果たすことができます。

為替手形は取引における代金決済の約束事を形にしたため、不完全な記載や誤記があると、手形の効力が失われる可能性があるため、注意深く記載することが求められます。

為替手形の仕訳方法

為替手形の取引は、企業の経理処理において特定の仕訳方法を要求します。以下では、為替手形の主要な取引ステップごとの仕訳方法を具体的な数値を用いて紹介します。

手形の引き受け

手形取引において、商品代金などの支払いを手形で受ける場面があり、これを「手形の受け取り」と呼びます。

手形を受け取る場合、会計上では「受取手形」勘定を使用して仕訳を行わなければなりません。

具体的には、売掛金などの債権が手形によって回収される場合、売掛金の金額を減少させ、受取手形として計上します。

​ある企業が売掛金150,000円を手形で受け取った場合の仕訳は以下のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
受取手形150,000円売掛金150,000円

手形を受け取ることで、売掛金が回収されると同時に、受取手形として金額が計上されます。

為替手形の振り出し

手形取引において、商品の購入やサービスの利用に際して、支払いを手形で行う(手形を振り出す)場合があります。このような場面で、企業が手形を発行(振り出し)する際の会計処理を考えてみましょう。

為替手形とは、特定の人(振出人)が、別の特定の人(名宛人)に命じて、決まった日に決まった金額を第三者(指図人)に支払うように依頼する文書です。

手形を振り出すことは、将来のある時点で指定された金額を支払うことを約束する行為です。

この場合、指図人はお金を受け取る権利を持ち、名宛人はその金額を支払う義務を持ちます。振出人自身は、この手形によって新たな債権や債務を作るわけではなく、元々ある売掛金と買掛金がキャンセルされるだけです。

手形代金を支払う人に対して存在している売掛金と、手形の代金を受け取る人に対して存在している買掛金が減ることから、下記のように記帳を行います。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
買掛金150,000円売掛金150,000円

為替手形の呈示と手形代金の支払い

為替手形の取引において、手形の支払期日が到来した際には、手形を持っている企業や個人(受取人)は、手形の支払いを求めるために手形を呈示します。

この呈示を行い、手形代金が支払われる場合の会計処理を考察してみましょう。

手形の呈示とは、手形の支払期日に、手形を引き受けた企業や個人(支払人)に対して、手形に記載された金額の支払いを求める行為を指します。

直接振出人に手形を提示するのではなく、振出人が契約してる銀行(手形に記載されている銀行)に手形を持ち込むのが一般的です。

手形代金が支払われると、受取人は手形に基づく権利を消滅させ、代わりに現金や預金を受け取ります。

手形の支払期日に、受取手形150,000円の取り立てを行い、手形代金が当座預金に入金された場合の仕訳は以下のようになります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
当座預金150,000円受取手形150,000円

この仕訳により、受取手形の権利が消滅し、その代わりに当座預金として現金が増加します。

為替手形に関して知っておくべきこと

為替手形は、取引における支払いの約束を形式化する証書であり、適切に取り扱うためには、特定のルールや知識を知っておく必要があります。

以下では、為替手形に関して把握しておくべき主要なポイントを詳しく解説します。

受取人はその権利を他社に譲り渡せる

為替手形の受取人が持つ権利は、非常に柔軟であり、他の企業や個人への譲渡が許されています。

この機能は、とくに資金の流動性を高めるための重要な手段として利用されることがほとんどです。

譲渡の手続きは、手形の背面に譲渡の意志を示す文言を記載し、その下に署名することで完了します。

この譲渡を行うことで、受取人は手形の権利を新しい持ち主に移転させることができるのです。

具体的なシチュエーションとして、A社がB社から為替手形を受け取ったが、すぐに現金が必要な場合、A社はこの手形をC社に譲渡し、C社から現金を受け取ることができます。

このように、為替手形の譲渡機能は、企業の資金繰りをサポートする大変有効なツールとなっています。

振出人が空欄の場合、そのままでは効力を持たない

為替手形は、金額の支払いを約束する文書としての役割を果たしますが、その約束の主体となる振出人の名前が欠けていると、その手形は正式な効力を発揮することができません。

具体的には、たとえばA社がB社に商品を提供し、その代金として為替手形を受け取った場合、その手形に振出人の名前が記載されていなければ、A社はその手形を現金化することが難しくなります。

しかし、このような状況でも、受取人であるA社が自ら振出人の欄に名前を記入することで、手形の効力を生じさせることができるようになります。

ただし、記名するという手続きは、取引の信頼性や安全性を確保するための重要なステップです。手形に振出人が明記されているか十分に注意しなければなりません。

振出人の名前が欠けている手形を受け取った場合は、その事実を速やかに相手方に伝え、正確な手形の再発行を求めることが望ましいです。

印紙税の扱いについて

為替手形は、取引の際に使用される公的な文書の一つです。取引金額に応じて国に納める印紙税が定められています。

通常、この税金の負担は手形を振り出す側、つまり振出人が行います。

具体的には、10万円以上の取引であれば、その金額に見合った印紙を購入し、手形に貼り付けることで税務上の義務を果たします。

しかし、もし振出人がこの義務を怠った場合、受取人がその後の手続きの中で印紙税を補充することが求められることがあるので注意が必要です。

たとえば、A社がB社に対して為替手形を発行したが、印紙を貼り忘れた場合、B社がその手形を現金化する際に、印紙税を補完する必要が生じることが考えられます。

このような追加のコストや手間を避けるため、手形を発行する際には、必ず印紙税の正確な計算と処理を行うことが求められます。

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まとめ

為替手形は、ビジネスの世界でよく活用されている支払手段であり、その管理は適切に行わなければなりません。

適切に管理するためには、帳簿に仕訳を行うとともに、為替手形の振り出し支払いの管理を行う一方で、銀行への提示・代金の受取管理を行う必要があります。

本記事では、為替手形の基本的な仕訳方法について説明するとともに、仕訳をするときの注意点について解説しました。

とくに、手形を振り出した場合や、手形代金の支払いを行った際の仕訳方法についての理解が深まったはずです。

また、手形取引における一般的な疑問や誤解を解消する情報も提供しました。

為替手形の正確な会計処理は、企業の信用や財務健全性を維持するうえで不可欠です。

本記事で解説した為替手形の知識を活用して、より確かなビジネスの基盤を築いていきましょう。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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