関税の勘定科目について | 輸入仕入時の会計処理についても解説

国税局の画像です

インターネットの通信販売サイトを通じて行う電子商取引(以下、EC)の普及により、国境を越えた商取引が身近なものになりました。EC市場が拡大する昨今、商品の差別化を図るため海外商品を輸入販売するECサイトも増えています。

輸入取引には国内取引には発生しない支払いがあります。代表的なものが「関税」です。海外から商品を購入すると、関税が発生します。

本記事では、関税の基本的な考え方をはじめ、輸入開始から国内取引に至るまでの過程においてどのような会計処理を行うのかを解説します。さらに、輸入仕入時の仕訳で注意すべきポイントにも触れます。

関税とは

関税とは、外国からの輸入品に課される国税です。法人税や所得税などの租税と同じく、国家の財源として重要な位置を占めています。

関税をかける目的は、国内産業を保護するためです。安い外国製品が大量に国内市場に出回ると国内の製品が価格競争に負け、自国の産業が廃れてしまいます。

輸入製品に関税をかけることで製品のコストが上昇し市場価格も高く設定されます。これにより、輸入品と国内品の市場競争が調整されます。

関税率は、税関ホームページに掲載されている「実行関税率表*」をご確認ください。

参考*:税関 実行関税率表(2023年4月1日版)

一般的な輸入の流れ

輸入仕入時の会計処理を行うにあたり、一般的な輸入の流れを知っておく必要があります。ここでは、一般的な輸入の流れを解説します。

一般的な輸入の流れ

  1. 輸入者が商品を注文
  2. 輸出相手国で、商品を乗せたコンテナが船(または飛行機)に積まれ輸送開始
  3. 輸出者からインボイス*1が送付される
  4. 日本の港(空港)に商品が到着し、保税地域*2に搬入される
  5. 税関に輸入申告書を提出し、関税と輸入消費税を納税する
  6. 税関が申告書類の審査を行い、問題なければ輸入許可通知書が交付される
  7. 保税地域から輸入商品を引き取る
  8. 国内取引開始

上記5から7の輸入手続きは、専門的な知識と物流設備が必要です。そのため一般的には、フォワーダーと呼ばれる利用運送事業者(混載業者、貨物取扱業者)に手続きを依頼します。

*1インボイスとは:海外の輸出者が国内の輸入者宛てに発行する貨物の送り状のことで輸入申告時に必要になる書類

*2保税地域とは:輸入手続きが留保された状態で外国貨物の一時的な保管が認められた場所のこと。通関手続きを行うための場所でもある

輸入仕入時の会計処理について

国内仕入と違い、輸入仕入は取引に至るまでの過程が複雑です。商品の仕入時には、本体価格だけでなく、海外運賃、保険料、コンテナ運送料や輸入代行業者への手数料などの費用が発生します。国内取引にはないこれらの費用は、どの勘定科目で処理すればいいのか迷うこともあるでしょう。

ここでは、輸入の過程に沿いながら、タイミングごとにどのような仕訳を行うのかを解説します。

注文時

国内で海外の商品を注文したタイミングでは仕訳は行いません。この時点では、まだ物品の移動やサービスの提供が発生しておらず、実質的な価値変動が起きていないからです。

取引例:中国のECサイトから商品A(金額20,000元)を注文した。

仕訳なし

船積時

貿易ごとに取引条件の異なる輸入取引には、仕訳計上日に関する一定の規定はありません。一般的には、輸出国で商品を船(または飛行機)に積んだ時点(船積基準)が多く採用されています。

船積基準での仕訳計上日は、輸出側の船会社が発行する船荷証券(B/L)に記載されている船積日(B/L date)になります。船荷証券は貨物の引き渡しを証明する重要な有価証券です。

取引例:中国のECサイトで注文した商品A(金額20,000元)について、輸出者から船荷証券が送られてきた。船荷証券に記載されている船積日は8月29日であった。

8月29日のレートは1元=20円*である。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
8/29 仕入高 400,000円 買掛金 400,000円

商品本体価格の勘定科目は「仕入高」を使用します。

*換算レート:日本円に換算するレートは、船積日の8月29日のレートを使用します。

仕訳計上のタイミングは、後述する「輸入仕入時の会計処理で注意すること」でも詳しく解説します。

輸入通関時

輸入通関時には、輸入申告書の提出および関税と輸入消費税の納税を行い、輸入許可をもらいます。

取引例:9月5日の通関時に関税と輸入消費税の納税を行った。

日付 借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
9/5 仕入高 20,800円 普通預金 30,800円 関税
  仮払消費税等 7,800円     輸入消費税(国税)
  仮払消費税等 2,200円     輸入消費税(地方税)

ここでの仕訳のポイントは以下の3つです。

  • 関税は「仕入高」、輸入消費税は「仮払消費税等」で処理する
  • 輸入にも消費税が発生する
  • 輸入消費税は国内消費税の計算(仕入価格×10%)と異なる

この内、一つ目の「関税は「仕入高」、輸入消費税は「仮払消費税等」で処理する」は後述する「輸入仕入時の会計処理で注意すること」の中で詳しく解説します。ここでは残りの2つのポイントを解説します。

輸入にも消費税が発生する

消費税は、原則国内課税取引のみに発生するので、海外から物を仕入れる輸入仕入は「不課税」です。ただし、例外として保税地域から引き取られる外国貨物(輸入品)には消費税がかかります。*1

輸入者は原則として引き取り時までに税関に輸入申告書を提出し、消費税を納付しなければなりません。*2 このときに納める消費税を「輸入消費税」といいます。

*1根拠法令:消費税法第4条、5条

*2根拠法令:消費税法第47条、50条

参考:消費税法

輸入消費税は国内消費税の計算(仕入価格×10%)と異なる

輸入消費税は通常の国内課税仕入消費税の計算と異なり、「仕入価格×10%」では算出できません。

輸入消費税の金額算定の計算式は以下です。

輸入消費税=(CIF価格+関税)×消費税率(10%)

CIF価格とは、商品価格に海外から輸入港までの運賃や保険料を加算した金額です。輸入消費税は、取引ごとのCIF価格を基準に個別計算されるため、国内消費税の計算(仕入価格×10%)のように一律10%の課税仕入とはなりません。

注意点として、会計ソフトに仕訳入力する際、税込金額で消費税を自動計算させると税額に誤りが生じます。輸入消費税は、国税と地方税に区分しそれぞれ手入力で金額を入力する必要があります。

支払時

商品を保税地域から引き取り、代金を支払った時に、以下のような仕訳処理を行います。

取引例:輸入した商品の代金を普通預金から支払った。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額 摘要
買掛金 400,000円 普通預金 400,000円 商品代金の支払

支払時には、船積時に発生した買掛金を取り崩します。

輸入取引には、船積時から支払時までに上記で説明した以外にもさまざまな費用が発生します。以下に代表的な費用の内容と勘定科目をまとめました。

※経理方式は本則課税・税抜経理

費用の内容 勘定科目 税区分 備考
商品 仕入高 輸入仕入本体  
海外運賃 仕入高 輸入仕入本体 仕入に付随する費用(仕入諸掛)※運送費ではない
保険料 仕入高 輸入仕入本体 仕入に付随する費用(仕入諸掛)※保険料ではない
関税 仕入高 輸入仕入本体 仕入高
輸入消費税 仮払消費税 輸入仕入消費税輸入仕入地方消費税 国税・地方税分けて会計ソフトに入力する
コンテナ運送料 仕入高 課税仕入 国内取引のため課税仕入
コンテナヤードチャージ 仕入高 不課税 受け渡しをするコンテナヤード使用料のこと 輸入通関前に発生する費用のため不課税
輸入代行業者手数料 仕入高 課税仕入 国内取引のため課税仕入

輸入仕入時の会計処理で注意すること

ここまで、輸入仕入時の会計仕訳について解説しました。ここからは、輸入仕入時の仕訳で間違いやすく注意すべき重要ポイントを2つ解説します。

仕入を計上するのは輸出者が製品の船積をしたタイミング

輸入仕入と国内仕入とでは、仕入を計上するタイミングが異なります。国内取引では、実際に商品の引き渡しおよび検収が行われた時点で仕入計上を行うのが一般的です(検収基準)。しかし国境を越える輸入仕入の場合、国内取引に比べ諸々の手続きが多く、どの時点が商品の引き渡しになるかは諸説あります。

仕入計上基準にはいくつかの種類が存在します。日本の税法では、いつ計上すべきかの明確な規定はありませんが、国際会計基準IFRSでは、収益の会計処理についてIAS第18号に定められています。

IAS第18号では「物品の所有に伴う重要なリスクおよび経済価値を売手である企業が買手に移転したこと」が認識基準と定められています。このタイミングは、輸入仕入において「輸出者が商品の船積みを行ったとき」と考えられます。

出典:日本CFO協会 IAS第18号「収益」 IAS 18 Revenue

船積基準は検収基準より仕入計上のタイミングが早くなるのがポイントです。決算の時点でまだ入港していない海上の商品がある場合は、期末に在庫として計上しなければなりません。

関税と輸入消費税は異なる処理が行われる

関税と輸入消費税はどちらも国に納める税金ですが、性質は異なります。

関税は国内市場競争の価格調整という観点から、輸入品に加算されるコストの性質を持っており、支払時に費用勘定として計上されます。勘定科目は「仕入高」です。租税公課ではなく、仕入に付随する費用(仕入諸掛)として「仕入高」で計上されるのがポイントです。

輸入消費税は輸入者が支払うべき税金であるという点は関税と同様です。ただし輸入消費税は、あくまでも消費税としての性質であり、コストの性質を持っているかは消費税額が確定する年度末まで判断できません。

消費税は事業年度末に初めて金額が確定します。消費税の理論上、最終的な金額確定により、費用ではなく収益として認識される可能性もあります。よって、支払った時点では資産の仮勘定として「仮払消費税等」を使って計上します。

  勘定科目 勘定科目の5分類
関税 仕入高 費用
輸入消費税 仮払消費税等 資産

関税と輸入消費税は、同じ税金でも会計処理が異なるというポイントを押さえ、記帳ミスを防ぎましょう。

輸入仕入時にかかる税金

輸入仕入時には、関税と輸入消費税のほか、「内国税」がかかる場合があります。内国税とは、国内の特定の品物や人に課される税金のことです。実は、消費税も内国税の一つです。

消費税以外の内国税の具体例は、以下の通りです。

  • 酒税
  • たばこ税及びたばこ特別税
  • 揮発油税
  • 地方揮発油税
  • 石油ガス税並びに石油石炭税

内国税は、輸入品の種類により税率が異なるため一率ではありません。同じ品目でも細かく分類されており、それぞれ税率が異なります。

たとえば酒税は、お酒の種類によって細かく税率が定められています

例:酒類にかかる主な税率

出典:税関 3105 酒類の輸入について(カスタムスアンサー)より

これらの内国税も、国内において販売、購入により所有権の移動があった場合、買い手は売り手に税金を支払います。

輸入する商品にどのような税金がかけられるかを知り、正しい仕訳を行いましょう。

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まとめ

本記事では、関税の基本的な考え方をはじめ、輸入開始から国内取引に至るまでの過程で行う会計処理について解説しました。

関税は輸入業務を行う上で避けては通れない税金です。EC市場の拡大*によって今後ますます身近な税金になっていくことが予想されます。

関税および輸入仕入の会計処理に関する知識を身に付け、実務に役立てていきましょう。

参考*:経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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