棚卸しとは?棚卸しの目的やタイミング、効率的に行うポイントを解説

段ボールのある倉庫の画像です

ビジネスを行う上で、在庫の状況を正確に把握するのは非常に重要です。

そのための手段として「棚卸し」があります。棚卸しとは、一言でいえば在庫の実物と帳簿上の数値が一致しているかを確認する作業のことを指します。

多くの経営者や事業者およびスタッフにとって、「なぜ棚卸が必要なのか」「いつ棚卸をするのが最適なのか」「どうすれば効率良く棚卸が進められるか」は疑問点でしょう。

本記事では、棚卸しの基本的な意義から、その目的、適切なタイミング、そして効率的に行うためのコツまでを詳しく解説します。

棚卸しとは

棚卸しとは、企業の在庫商品や原材料などの物的資産の実際の数量と、帳簿上の数量が一致しているかを確認する作業を指します。

在庫の過不足、紛失、破損などの問題を検出し、適切な帳簿処理や在庫管理の改善を行うための重要なプロセスです。

正確な在庫評価を実現するため、棚卸しは企業経営における基本的な作業の一つとなっています。

棚卸しをするタイミング

棚卸しのタイミングは企業や業界慣行に応じて異なるのが普通です。

多くの場合、棚卸しは、会計年度の終わりにあわせて年1回実施されます。

これは、年度末の財務諸表を作成する際、正確な在庫評価を行うための基盤として棚卸し作業が行われるからです。

ただし、在庫の動きが活発な業種や企業では、四半期ごとや月次での棚卸しを実施するケースもあります。

スーパーやドラッグストアのように、多様な商品を取り扱っており、在庫管理が重要な業界では、棚卸しの頻度も多くなる傾向にあります。

頻繁に棚卸しを行うことで在庫の管理をより頻繁に行うことで、在庫に関連するリスクを低減できるでしょう。

棚卸しをする目的

棚卸しは、企業の経営において必要不可欠な作業の一つです。この作業を通じて、在庫の正確な状況を把握し、さまざまなビジネス上の目的を達成するための基盤を築きます。

以下に、棚卸しを行う主要な目的を具体的に説明します。

正確な利益を計算するため

在庫の評価は、企業の利益計算に直接影響します。

在庫の数量や価値が正確でないと、売上原価や在庫評価損、そしてその結果としての利益が正確に計算されない可能性があります。

年度末の財務諸表を正確に作成するためにも、棚卸しによる在庫の正確な確認は欠かせません。

たとえば、A社が手掛ける人気のバッグが年度末に100個と見積もられていたが、実際の棚卸しで80個しかなかったとします。

この20個の差異が、紛失や破損もしくは記録ミスによるものであれば、売上原価の計算や在庫の評価に影響を与える恐れがあります。

このような誤差を排除し正確な利益を計算するためには、棚卸しは不可欠です。

在庫管理をするため

棚卸しを通じて、在庫の過剰や不足、破損や紛失が明らかになります。

これにより、次回の発注量の調整や、不要な在庫の処分、紛失防止策の検討など、より効果的な在庫管理を行うための具体的な情報を得ることができます。

たとえば、電子部品の卸売業を行っているB社は、特定の部品が在庫切れになると大量の注文がキャンセルされることがあるとしましょう。

定期的な棚卸しを行えば、部品の在庫状況をリアルタイムで確認できるようになり、適切な発注を行うことができ、このようなキャンセルを減少させられます。

販売機会を損失しないようにするため

在庫の不足は、顧客への商品供給が滞る原因となり、結果的に販売機会を逸失するのにつながります。

定期的な棚卸しを実施すれば、在庫の状況をリアルタイムで把握し、適切な在庫補充を行い、顧客のニーズに迅速に応えることが可能となります。

たとえば、C社は流行りのスニーカーを販売しているものの、人気商品の在庫が突如なくなり、顧客からのクレームが増えました。

棚卸しを通じて在庫の状況を常に確認し、予想される需要に合わせて発注を調整することで、販売機会の損失を防ぐことが可能となります。

棚卸しをする際の具体的なやり方

企業が保有する在庫の実態を正確に把握するために行われる「棚卸し」は、さまざまな方法で実施されます。ここでは、とくに一般的な「リスト方式」と「タグ方式」に焦点を当てて、手法と特徴を解説します。

リスト方式

リスト方式は、在庫リストを元に棚卸を行う方法です。

具体的には、在庫品目や予想数量などがリストアップされた帳票を持ちながら、実際の在庫スペースを巡回していきます。

リストの内容と実際の在庫を照合しながら、数量の差異や新たな品目などの変更点を直接リスト上に記入していきます。

リスト方式のメリットは、簡単かつ迅速に棚卸が行える点です。

一方、リストの内容と現状の在庫が大きく異なる場合は、その都度リストを更新する手間が増えるデメリットがあります。

タグ方式

タグ方式は、在庫商品それぞれに棚卸し用のタグを取り付け、タグに数量や品目、場所などの情報を記入する方法です。

棚卸し作業者は、商品の数量を確認し、タグに直接記入します。後から、これらのタグを集めて一括でデータ入力を行い、在庫の集計や分析を行います。

この方法のメリットは、実際の在庫状況を直接見ながらデータを取るため、リスト方式よりも正確性が高い点が挙げられます。

一方、タグを取り付ける手間や、タグが紛失するリスクがあることがデメリットとして考えられます。

棚卸しする際の注意点

棚卸しは、企業の財政状態を正確に把握し、資産の有無を確認するための重要なプロセスです。

これにより、会社の資産を正確に計上し、実際の物理的な在庫と記録上の数字が一致しているかを確認します。

そのため、この作業中のミスや誤解は企業の業績や経営判断、さらには財務諸表の正確性に大きな影響を及ぼす恐れがあります。

とくに、以下に挙げる3つのポイントは、棚卸しの際に注意が必要な項目です。

以下では、具体的な例を交えながら、それぞれのポイントを詳しく説明します。

入出庫の数量を間違えないようにする

在庫の数量は、商品の発注や販売、利益計算の基盤となる情報です。

たとえば、ある商品が100個としてシステムに記録されている場合、その数字を元に次回の発注や在庫補充の計画を立てることが考えられます。

しかし実際の在庫が90個であった場合、予期しない在庫不足が生じ、顧客への提供が滞るリスクが生まれます。

適切な再注文のタイミングや在庫調整の判断には、正確な数量の確認が不可欠です。

誤った金額を入力しないようにする

商品の単価は在庫の評価額を算出するための基礎データとなります。

単純な入力ミスであっても、その後の在庫評価や利益計算に影響を及ぼす恐れがあるため、注意が必要です。

たとえば、1個1000円として知られている商品を10個在庫している場合、正確な評価額は1万円となります。

しかし、もし単価を間違えて100円と記録してしまったら、評価額は大きくズレることになります。

社内でルールを共通する

社内での棚卸し方法や基準がバラバラだと、結果の一貫性や信頼性が損なわれる危険があります。

例として、商品の品質基準やダメージ品の取り扱いが部署や担当者により異なる場合、その差異は在庫評価の結果にも反映されます。

企業全体としての品質管理や業績評価にも影響が出るため、棚卸しの基準やルールは社内全体で共有し、統一するのが重要です。

効率的に棚卸しするポイント

棚卸しは正確性が求められる作業であり、効率的な進め方が重要です。

経営者やスタッフが多くの時間を費やしても完了しない棚卸しは、業務に支障をきたす可能性があります。

以下に効率的に棚卸しを行うための主要な3つのポイントと、それに関連する具体的な例をご紹介します。

計画を立てる

棚卸しは、企業の在庫や資産の正確な状態を把握するための重要な作業ですが、作業自体は複雑で時間がかかるものです。そのため、計画的に進めることが求められます。

以下に、計画を立てることの重要性と具体的な例を交えて説明します。

  1. 時間の最適化

棚卸し作業は、業務を停止させて行われることが多いため、業務の遅延や顧客への影響を最小限に抑えるためには計画的に実施する必要があります。

たとえば、小売業の場合、来店客の少ない時間帯や閉店後の時間を活用するなど、計画的に作業時間を決定することで、業務への影響を低減できます。

  1. 効率的な人員配置

計画を立てることで、必要な人員や役割を明確にし、適切な位置に配置できます。

例:あるエリアの商品に詳しいスタッフをそのエリアの棚卸しにアサインして、作業のスピードや正確性を向上させることができます。

  1. 必要な資材の確保

棚卸しには、専用のフォームやバーコードリーダーなどの道具が必要です。

計画的に作業を進めることで、事前に必要な資材を準備し、作業の遅延を防ぐことができます。

  1. 問題への迅速な対応

事前に計画を立てておくことで、もし作業中に問題が発生した場合でも、対応策を早急に決定し、作業の中断時間を最小限に抑えることができます。

たとえば、ある商品の在庫数に大きなズレがあった場合、すぐに原因を調査し、対応策を決定できます。

  1. 結果の評価とフィードバック

計画を元に棚卸し作業を行った後は、その結果をもとに計画の妥当性を評価することができます。

これにより、次回の棚卸しの際にさらに効率的な作業を計画することが可能となります。

まとめると、計画を立てることは、棚卸し作業をスムーズかつ正確に進めるための鍵となります。正確な棚卸しは、ビジネスの健全な経営判断の土台となるため、その重要性は非常に高いものです。

棚卸表を活用する

棚卸しを効率的に進めるためには、棚卸表の活用が不可欠です。

棚卸表は、在庫の数量や品目、位置、商品の価格などの情報がまとめられた一覧表で、これを元に物理的な在庫と記録上の在庫が一致しているかを確認します。

以下に、棚卸表を活用する方法を詳しく説明します。

  1. 品目の明確化

棚卸表には商品の名称やコード、型番など、商品を一意に特定できる情報を記載します。これにより、似たような商品を混同することなく、確実に在庫確認ができます。

  1. 位置情報の記載

倉庫や店舗内のどの場所に商品が配置されているかを明記します。これにより、棚卸し作業を行う際の移動時間を短縮し、効率的に作業を進めることができます。

  1. 記録上の在庫数量と単価

商品ごとの在庫数量や単価を明確に記載しておくことで、実際の物理的な在庫との差異をすぐに確認できます。

  1. 実際の在庫数量の欄

棚卸し作業時に実際に確認した在庫数量を記入する欄を設けます。これにより、記録上の在庫との違いを即座に確認し、必要な調整を行うことができます。

  1. 差異の確認

棚卸作業終了後、棚卸表上で記録上の在庫数量と実際の在庫数量の差異を一覧で確認できるようにします。これにより、過不足や入力ミスを迅速に特定し、対処できます。

  1. 定期的な更新

棚卸しは定期的に行われるため、棚卸表も定期的に最新の情報に更新しておくことが重要です。とくに商品の追加や廃止、価格変更などの情報は随時更新するようにします。

棚卸表を適切に活用することで、棚卸しの効率を大幅に向上させることが可能です。棚卸しの結果として得られる正確な在庫情報は、ビジネスの運営や業績の評価にも大きく寄与します。

効率化できるシステムを活用する

近年、バーコードスキャナーや在庫管理システムなど、棚卸しを効率化するためのツールが増えてきました。

たとえば、バーコードスキャナーを使用することで、商品の読み取りや数量の確認を迅速に行うことができるようになります。

在庫管理システムを活用することで、リアルタイムでの在庫情報の更新や、過去の棚卸しデータとの比較など、高度な分析も可能です。

これらのシステムを活用することで、手間を省きながらも高精度な棚卸しを実現できます。

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まとめ

棚卸しは、企業や事業主が在庫の実態と帳簿上の数値が一致しているかを確認するための不可欠な作業です。

棚卸しの作業を通じて、正確な利益の計算や在庫の適切な管理が可能となり、販売機会の損失を防ぐことができます。

棚卸しは単なる在庫確認作業以上の価値を持つため、定期的かつ効率的な実施を心がけることで、ビジネスの健全な運営に大きく貢献するという認識を持ちましょう。

この記事を書いた人

CPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

ライターCPAラーニング編集部

簿記・会計をこよなく愛するCPAラーニングコラムの編集部です。簿記検定に合格するためのポイントや経理・会計の実務的なコラムまで皆様に役立つ情報を提供していきます。

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