勘定科目「支払手数料」とは?該当する費用や仕訳例、間違えやすい経費も紹介

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「支払手数料」は、銀行の振込手数料などを計上するときに使う勘定科目です。

銀行の振込手数料だけでなく、不動産売買時の仲介手数料や税理士などの専門家への報酬にも使用できるため、目にすることの多い勘定科目といえます。

ただし、日々の取引の中にはさまざまな手数料があるため、どういった費用が支払手数料に該当するのか、わからない人も多いのではないでしょうか。

また支払手数料を用いた場合、どのような仕訳になるのか知りたい人も多いことでしょう。

そこでこの記事では、支払手数料の定義該当する主な費用、またケース別の仕訳の例を解説します。

さらに、支払手数料を使う際のポイントなども解説していきますので、支払手数料の使い方で悩んでいる人は、ぜひ最後までお読みください。

勘定科目「支払手数料」とは

「支払手数料」は、銀行や郵便局の振込手数料や各種証明書の発行手数料など取引の際に発生した手数料や、専門家への報酬を支払うときに使う勘定科目です。

支払手数料は、一般的には商品やサービスの使用に伴う手数料のことを指しますが、税理士などの専門家への報酬を支払う際にも使用できることを覚えておくとよいでしょう。

また、支払手数料は販売費及び一般管理費の中の一般管理費に該当します。

なお販売費及び一般管理費の中には、支払報酬・販売手数料など似た名称の勘定科目があるため、注意が必要です。

支払手数料と似た名称の勘定科目については「支払手数料と間違いやすい経費」の章で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

支払手数料に該当する主な費用

支払手数料に該当する主な費用は、どのようなものがあるのでしょうか?

主な費用の例は、下記の通りです。

  • 銀行や郵便局の振込手数料
  • 不動産売買時の仲介手数料
  • 各種証明書の発行手数料
  • 事務手数料
  • 解約手数料
  • 為替手数料
  • 代引き手数料
  • クレジットカードの売上手数料
  • 税理士や弁護士、ライターやエンジニアなどの専門家に支払う報酬

さまざまな種類の費用があるため、覚えておくとよいでしょう。

また前の章で解説した通り、支払手数料の勘定科目は各種の手数料だけでなく、税理士などの専門家への報酬を支払う際にも使用できることを覚えておいてください。

【ケース別】支払手数料を用いた仕訳の例

前の章までで支払手数料の定義と、支払手数料に該当する主な費用を解説しました。

ここでは、ケース別の支払手数料の仕訳例を解説していきます。

実際の仕訳を確認して、支払手数料の使い方を覚えていきましょう。

解説する仕訳例は、下記の5つです。

  1. 振込手数料を自社で負担する場合
  2. 振込手数料を相手に負担してもらう場合
  3. 不動産の売買契約が成立した場合
  4. クレジットカードで商品が購入された場合
  5. 税理士に報酬を支払う場合

ケースごとに解説していきますので、どのような仕訳になるのかを確認していきましょう。

①振込手数料を自社で負担する場合

振込手数料を自社で負担する場合の仕訳を考えてみましょう。

まずは、未収入金を振り込んでもらうケースです。

振込手数料が自社負担のため、請求している未収入金から振込手数料が引かれた金額が入金されることになります。

未収入金が1万円で振込手数料が220円のとき、仕訳は下記の通りです。

借方貸方
普通預金 9,780円
支払手数料 220円
未収入金 10,000円

次に、未払費用を支払うときに振込手数料が自己負担のケースを考えてみましょう。

振込手数料が自社負担のため、支払うべき未払費用の金額に加えて、振込手数料分も支払うことになります。

未払費用1万円を支払い、振込手数料220円を自己負担する場合は下記の仕訳となります。

借方貸方
未払費用 10,000円
支払手数料 220円
普通預金 10,220円

②振込手数料を相手に負担してもらう場合

次は、振込手数料を相手に負担してもらう場合です。

まず入金のケースから考えてみましょう。

振込手数料を相手に負担してもらい、未収入金2万円の入金があった場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
普通預金 20,000円未収入金 20,000円

相手が振込手数料を負担してくれるため、自社が支払手数料を計上する必要はありません。

一方、振込手数料が相手の負担で、未払費用2万円を支払うときの仕訳は下記の通りです。

借方貸方
未払費用 20,000円普通預金 20,000円

振込手数料が相手の負担のため、支払いの際も自社で支払手数料を計上する必要はありません。

③不動産の売買契約が成立した場合

不動産の売買契約が成立した場合、支払うことになる仲介手数料は支払手数料の勘定科目で計上します。

仲介手数料を現金10万円で支払った場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
支払手数料 100,000円現金 100,000円

ただし、不動産を購入した場合は、固定資産の勘定科目の建物や土地を使うことになるため、注意が必要です。

④クレジットカードで商品が購入された場合

クレジットカードで商品を購入する場合は、手数料がかかりません。

したがって、たとえば業務で使用する書籍を購入した場合、下記の仕訳になります。

借方貸方
新聞図書費 3,000円普通預金 3,000円

一方、商品の販売側はクレジットカードの売上手数料の支払いが必要になります。

手数料が100円かかる場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
売掛金 2,900円
支払手数料 100円
売上 3,000円

⑤税理士に報酬を支払う場合

税理士に報酬を支払う場合も考えてみましょう。

税理士に報酬を支払う際は、源泉徴収が必要です。

税理士への報酬が30万円の場合、源泉徴収率は10.21%のため、源泉徴収の金額は3万630円(30万円×10.21%)になります。

また、源泉徴収した金額分は預り金で計上するため、仕訳は下記の通りです。

借方貸方
支払手数料 300,000円預り金 30,630円
現金 269,370円

支払手数料と間違えやすい経費

勘定科目の中には支払手数料と似た名前があるため、間違って使用しないように注意が必要です。

ここでは、支払手数料と間違えやすい経費を4つ解説していきます。

  • 支払報酬
  • 販売手数料
  • 受付手数料
  • 利息や利子に関する手数料

上記4つの経費は、いずれも「支払」や「手数料」といった文言が含まれているため、実務を行ううえで間違いやすい経費です。

一つずつ解説していきますので、支払手数料との違いを確認しながら見ていきましょう。

支払報酬

1つ目は支払報酬です。

支払報酬は、税理士や弁護士、社労士などの専門の資格を持つ士業のほか、ライターやイラストレーター、エンジニアなどの専門家へ報酬を支払う際に使う勘定科目です。

専門家への報酬は、支払報酬でなく支払手数料の勘定科目を使用しても問題ありませんが、支払手数料には専門家への報酬以外のさまざまな手数料が計上されています。

もし専門家への報酬を支払手数料に計上してしまうと、専門家への報酬の管理がしづらいだけでなく、振込手数料などの手数料の管理もしづらくなってしまいます。

したがって、専門家への報酬は支払報酬へ、振込手数料などの手数料は支払手数料へ計上するほうがよいといえるでしょう。

販売手数料

2つ目は販売手数料です。

手数料という言葉が入っているため間違えやすいですが、販売手数料は、商品やサービスを販売した代理店などに支払う手数料のことです。

販売手数料は商品やサービスの販売量に応じて支払われるため、売り上げに直接関係する経費と覚えておきましょう。

また支払手数料と販売手数料は、両方とも販売費及び一般管理費に分類されますが、支払手数料は一般管理費、販売手数料は販売費に分類される違いがあります。

受付手数料

3つ目は受付手数料です。

受付手数料は、人材紹介会社や求人誌に依頼をして、求人募集を出す際の手数料のことです。

求人募集を出す際の手数料は、支払手数料や雑費などで計上する企業もあることでしょう。

しかし、支払手数料や雑費にはさまざまな取引内容が含まれているため、求人募集の手数料も含めてしまうと、経費管理を適切に行えない恐れがあります。

したがって、経費管理を適切に行うためにも、求人募集を出す際の手数料は受付手数料で計上したほうがよいといえます。

利息や利子に関する手数料

4つ目は利息や利子に関する手数料です。

金融機関からの借入金などで発生する利息や利子は、支払利息で計上します。

支払利息は営業外費用に区分される勘定科目で、支払手数料は販売費及び一般管理費に区分される勘定科目です。

したがって、間違えて計上すると経費の区分も異なってしまうため、名称は似ていますが支払手数料と支払利息の区別を間違えないように注意しましょう。

支払手数料を使う際のポイント3つ

前の章までに支払手数料の仕訳の例や、間違えやすい経費などを解説しましたが、支払手数料を使う際に気を付けるべきポイントがあるため解説していきます。

気を付けるべきポイントは、下記の3つです。

  1. 雑費との使い分けに注意する
  2. 支払報酬と混同しないようにする
  3. 行政機関への支払手数料は租税公課

一つずつポイントを確認していきましょう。

①雑費との使い分けに注意する

雑費は、ほかの勘定科目に該当せず、少額で重要性が低い経費や一時的な経費などを計上する際に使用する勘定科目です。

そのため、少額の振込手数料を雑費で処理する企業もあるでしょう。

しかし、雑費はさまざまな内容のものが計上されるため、支払手数料も含めてしまうと雑費の経費管理が難しくなってしまいます。

さらに支払手数料を雑費に含めた結果、雑費の金額が大きくなってしまい、監査や税務調査などで雑費の内容を細かく求められることがあるかもしれません。

したがって、振込手数料などの支払手数料として計上可能なものは、雑費を使うのではなく、支払手数料を使うことをおすすめします。

なお振込手数料を支払手数料で計上すると決めたら、次回以降も雑費で計上せずに、支払手数料で処理する必要があることを覚えておいてください。

なぜなら、一度決めた勘定科目は継続的に利用すべきとする「継続性の原則」という会計の考え方があるからです。さらに、勘定科目を何度も変えてしまうと、正しい経費管理ができなくなります。

手数料の計上の際は、雑費との使い分けに注意をし、一度使用する勘定科目を決めたら、基本的には同じ勘定科目を使うようにするとよいでしょう。

②支払報酬と混同しないようにする

支払報酬は、税理士や弁護士、イラストレーターなどの専門家へ報酬を支払う際に使用する勘定科目ですが、専門家への報酬は支払手数料で計上しても問題はありません。

しかし、もし専門家への報酬をどの勘定科目で計上するかを決めておかなければ、、どのようになるでしょうか?

専門家への報酬を支払報酬と支払手数料の両方の勘定科目に計上してしまい、経費管理を正しく行えなくなってしまうかもしれません。

したがって、専門家への報酬は、支払報酬と支払手数料のどちらで計上するかをあらかじめ決めておき、混同しないようにすることが大切です。

③行政機関への支払手数料は租税公課

行政機関への支払手数料は、住民票や印鑑証明書などの代金や発行手数料、また地方公共団体へ納める会費などがあり「租税公課」で計上します。

手数料の名称であっても、行政機関へ支払っているものを租税公課で計上することで、民間の金融機関への支払手数料と分けて管理できます。

租税公課は、固定資産税や自動車税、また不動産取得税などを計上する際に使用する勘定科目ですが、行政機関への支払手数料を計上する際にも使用することを覚えておくとよいでしょう。

支払手数料の税区分は?

支払手数料を計上する際の消費税の区分は、基本的には課税になります。

ただし、消費税が課税となるのは下記のすべての条件を満たす取引の場合です。

  • 日本国内の取引である
  • 事業者が事業として行っている
  • 対価を得て行っている
  • 資産の譲渡、サービスの提供などを行っている

また、支払手数料は基本的には課税取引となるため、仕入税額控除の対象となります。

ただし、国外の取引の場合は、消費税は課税されないことに注意をしてください。

下記に支払手数料の消費税の仕訳例を記載します。

税抜経理方式のケースを想定していますので、参考にしてください。

1.未払費用の振込手数料が自社負担のケース

借方貸方
未払費用 10,000円
支払手数料 200円
仮払消費税 20円
現金 10,220円

支払手数料200円にかかる消費税20円(200円×10%)が、借方の仮払消費税に計上されます。

2.税理士に報酬を支払ったケース

借方貸方
支払手数料 300,000円現金 299,370円
仮払消費税 30,000円預り金 30,630円

税理士への報酬が30万円のため、仮払消費税3万円(30万円×10%)が借方に計上されます。

また源泉徴収の金額は、税理士への報酬30万円に源泉徴収の税率10.21%をかけて3万630円(30万円×10.21%)となり、貸方の預り金に計上します。

経費の内容や支払先には注意する

これまで見てきたように、支払手数料の勘定科目を使用するかどうかは、経費の内容や支払先に注意して判断する必要があります。

支払う経費が手数料だとしても、何の手数料なのかを確認しなければなりません。

たとえば、販売のための手数料であれば販売手数料で計上し、求人募集を出す際の手数料は受付手数料で計上します。

また、支払先が行政機関の場合は、租税公課が適切な勘定科目となります。

まとめ

この記事では、銀行や郵便局の振込手数料などを計上する勘定科目の「支払手数料」について詳しく解説しました。

実際に支払手数料を用いた仕訳を、下記のケース別で解説したので、支払手数料の仕訳がわからずにお悩みの人は、ぜひ参考にしてください。

  1. 振込手数料を自社で負担する場合
  2. 振込手数料を相手に負担してもらう場合
  3. 不動産の売買契約が成立した場合
  4. クレジットカードで商品が購入された場合
  5. 税理士に報酬を支払う場合

また、支払手数料と間違いやすい経費として、支払報酬・販売手数料・受付手数料・利息や利子に関する手数料についても解説しました。

支払手数料の区別がつかない人は、確認しておいてください。

さらに、支払手数料を使う際のポイントとして下記の3つを挙げましたので、確認のうえ、注意をしてください。

  1. 雑費との使い分けに注意する
  2. 支払報酬と混同しないようにする
  3. 行政機関への支払手数料は租税公課

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